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愛を知らぬギリシア富豪

愛を知らぬギリシア富豪


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェニー・ルーカス(JENNIE LUCAS)
 本屋を経営する両親のもとたくさんの本に囲まれ、アメリカ、アイダホ州の小さい町で遠い国々を夢見て育つ。十六歳でヨーロッパへ一人旅を経験して以来、アルバイトをしながらアメリカじゅうを旅する。二十二歳で夫となる男性に出会い、大学で英文学の学位を取得した一年後、小説を書き始めた。現在、幼い子供ふたりの育児に追われながらも執筆活動を通して大好きな旅をしているという。

解説

愛も結婚もぬくもりも信じない。そんな冷血漢の子を宿すことになるとは!

重い病気の母と妹との生活を支えるため、3つの仕事を掛け持ちするルビーが働く店にある晩、ハンサムで名高いギリシア大富豪アレスが現れた。そして容易になびかない彼女が珍しいのか、熱心に自宅に誘う。お金持ちの甘い言葉にだまされてはだめよ。でもアレスの低い声を聞いただけで体に電流が走り、ルビーは一夜だけと言い聞かせ、彼にバージンを捧げた……。やがて身ごもった彼女に、アレスはしかし言い放つ。「金なら出すが愛は与えられない」

■家族のために自分の楽しみをすべて犠牲にしてきたルビー。セクシーな大富豪の魅力に屈して、情熱に身をゆだねますが、喜びの後には、愛も家庭も拒む男性の子を宿すという冷たい現実が……。新女王ジェニー・ルーカスが綴る、激愛ジェットコースター・ロマンス!

抄録

 アレスが思案するように首をかしげ、ビールを飲んだ。「君の楽しいことって?」
「私は……」ルビーは思い出そうとした。楽しいことが予定にあったのは昔のことだ。母が病気になる前、家族を養うために三つの仕事を掛け持ちする前だった。仕事を掛け持ちするのが母親だったころは、学校から戻ったあとも妹の世話と家事で忙しかった。ルビーは目をしばたたいた。楽しいことって?
 アレスが彼女の手に手を重ねた。
「どうしたいか言ってくれ」低く、説得力のある声だった。「もしも今夜どんなことでも実現するとしたら、君は何がしたい?」
 ルビーの体を震えが走った。胸の谷間に汗が一筋流れ落ちていく。手を重ねただけなのに、どうして彼はこんな反応を引き起こすの? ルビーは手を引き抜くと、気が進まないながらも答えた。「山に行くわ」
「山?」
「スキーのインストラクターが集まって“反乱の夜”を企画しているの」
「それはなんだ?」
「このリゾートではナイトスキーができないでしょう。それでシーズンが終わる前、ちょうど雪が解けはじめるころに、昔ながらのやり方で楽しむの。今夜は最後の満月なのよ」
「そんなに月が明るいのか?」
「松明も使うわ」
 彼の目が鋭くなった。「初めて聞くな」
「それはそうでしょう。地元民だけだもの」
「なるほど」アレスがビールを飲み干し、グラスをカウンターに置いた。「教えてくれてありがとう。ごちそうさま」
 カウンターに二十ドル札を置くと、彼はそれ以上一言も言わずに立ち去った。
 ルビーは口をぽかんと開けたまま、アレスの後ろ姿を見つめていた。
「驚いたな」モンティがルビーの隣で鼻を鳴らした。「あんなふうにいきなり逃げ出すなんて、いったい何を言ったんだ?」
 急に頬が熱くなった。ルビーはすばやく背を向け、きれいなグラスを並べていった。「彼はただビールが欲しかっただけなのよ」
 ルビーは上の空で注文に従ってテキーラを三杯つぎ、トレイに置いた。そのとき、店内の照明が突然明るくなった。音楽も中断し、驚いた客たちが不満の声をあげた。
 ここ〈アトラス・クラブ〉のオーナー、ポール・ヴェンスがダンスフロアに現れた。しわだらけの元ミュージシャンは紫色のレザーに身を包んでいる。
「今夜はこれでお開きだ」彼の声が響き渡った。あれほど小柄な者にしては驚くほどの大声だ。「みんな店を出て!」
 客も店員も当惑し、互いに顔を見合わせた。
「出ろ! 今すぐ!」ヴェンスがバーテンダーと接客係を見た。「心配するな。今夜の分は払うから。チップも込みだ」
「掃除しますか?」レキシーが尋ねる。
「それは解決ずみだ。全員帰っていい」ヴェンスの小さな目がルビーに向けられる。「とくに君」
 ルビーは理解し、はっと息をのんだ。
“どうしたいか言ってくれ。もしも今夜どんなことでも実現するとしたら”
 うなじがぞくぞくする。客たちが不平をつぶやきながら出口へ向かい、一方、更衣室ではウェイトレスたちが楽しげに、これからどう過ごすかを話していた。コートを取りに行ったルビーは、最後の一人になるまでそこでぐずぐずしていた。私はどうかしていると自分に言い聞かせる。考えすぎよ。こうなった理由はほかにもたくさんあるわ。
 だが、〈アトラス・クラブ〉を出ると、思ったとおりアレス・クーラキスが待っていた。
 雪の降る通りはすでに静まり返っている。クラブの客も従業員も近くのクラブかバーに行ってしまったようだ。
 雪の中、全身黒ずくめのアレスが街灯にもたれていた。その姿を見て、ルビーの下腹部がざわめいた。
「あなたのせいなんでしょう?」
 アレスが屈託ない笑みを向ける。「だとしたら?」
「今夜は大盛況だったのよ。ミスター・ヴェンスにいくら払って店を閉めさせたの?」
「それはどうでもいい」
「従業員全員に休みをあげて、チップも含めて日給を支払ったのね」
「そうしなければ、君が心から楽しめないとわかっていたからね」
 ルビーの声がかすれた。「でも、なぜ?」
「言っただろう」アレスが進み出て、ほんの十センチというところまでルビーに近づいた。上背のある彼はそびえ立つようだ。ルビーは古着のコートの下で必死に肩をいからせた。一センチでも後退したくなかった。アレスが手を伸ばし、彼女の長い髪を一房取った。「今夜は君と一緒に過ごしたい」
 私と一緒に? ルビーは目を上げた。「欲しいものは必ず手に入れるの?」
 アレスのまなざしがルビーの魂まで貫いた。「そうだ」
「でも……でも、どうして?」ルビーはささやいた。「どうして私なの?」
「言っただろう。君はこの上なく美しい」
「クラブの女の子のほとんどが私よりずっときれいだったわ」
 アレスの表情が変化した。「君は違う」
「どう違うの?」
「君は僕の注意を引こうとしなかった」
 ああ、そういうこと。ルビーはなぜか急に落胆した。「つまり、あなたはおもちゃをいっぱい持っているわがままな子供ということね。どうしても手に入らないものがあって、癇癪を起こした」
 アレスがルビーを見下ろしたまま、さらに距離を詰めた。「君に拒絶されたことはきっかけにすぎない。それだけが理由じゃないんだ。君の何かが……」彼の視線がルビーの唇に落ちる。キスをされるかと思い、ルビーが身を震わせたとき、アレスが言った。「僕を山へ連れていってくれ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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