マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

花の巴里で待ち合わせ

花の巴里で待ち合わせ


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

ヴィクトリア・アレクサンダー

解説

灰色のロンドンから、愛と自由がきらめく、魅惑のパリへ――放蕩貴族の手練手管と街の魔法が、堅物秘書を美しく花開かせて……。

秘書として慎み深く生きてきたインディアの最愛のおばが、たった一人で海外旅行に出かけ、消息を絶った。いても立ってもおれず、彼女はおばの旅を斡旋したと思しきデレク・ソーンダーズを訪ねる。放蕩者として悪名高いこの次期伯爵は、責任をもっておばを連れ帰ると宣言したが、彼を信用できないインディアは自らも捜索の旅に同行する決心をする。かくて二人は万博開催中の華やかなりしパリへ赴くが、花の都のめくるめく魔法と放蕩貴族の巧みなエスコートに、堅い蕾のようだったインディアの心は、甘く優しくほどかれていき……。

抄録

 インディアは立ちあがり、腕組みをした。「パリって?」
「たしか、きみがそれを言うのは三回目だ」
「何度でも言うわよ。わたしの記憶が正しければ、当初の計画では、おばさまが通ったルートをたどるはずだったでしょう。それには、わたしも賛成したわ」インディアは眉根をきつく寄せた。「おばさまはパリから旅を始めてなどいないのに」
「そうだな」デレクは穏やかに言うと、キャビネットに近づいて扉を開けた。「ブランデーかウィスキーはどうだ? それとも、シェリー酒のほうが好みかな?」
「お茶をいただいているから結構よ」インディアは憤然とカップをさし示した。
「ああ、お茶があったか」
「もともと、お酒はあまり飲まないの」
「意外だな」
「それに、お酒を飲むには時間が早すぎるでしょう」
「そう言うと思った」デレクは強い酒らしき琥珀色の液体をグラスに注いだ。
 インディアは彼の軽口を聞き流した。「今回の旅のあいだ、あなたが一日じゅう飲んでばかりいるつもりでなければいいんだけれど」
「旅の目的に支障をきたさないかぎり、僕がどんなつもりでいようと、きみに口出しされる筋合いもない」
 インディアは口をつぐみ、落ち着くよう自分に言い聞かせた。この獣じみた男性に協力してもらわなければ、おばさまを見つけられないのよ。虫の好かない男性とはいえ、折り合いをつける努力を放棄するというのもいただけない。とはいうものの……。
「ミスター・ソーンダーズ」インディアは冷静さを取り戻そうと息をついた。「わたしの了承も得ず、計画を勝手に変えられたら困るわ」
 彼はこちらに視線をよこしてきたあと、酒をあおり、ふたたびグラスを満たした。酒でも飲まなくては、この女の相手などやっていられないと言わんばかりだった。
「ひとつ言っておく。そもそも、きみの了承を得る必要などない」デレクは椅子のところまで戻り、きみも座れというしぐさをしてから腰を下ろした。「計画を立てたのは僕で、きみは一緒に来ると言い張っているだけだ。しかも、大叔母がそれを黙認したから、僕はきみの同行を許可するはめになった」
 インディアは息をのんだ。「許可ですって?」
「ああ」彼は硬い口調で言った。「そのとおりだ」
「許可してもらえるかどうかなんて関係ないわ。あなたがヘロイーズおばさまを捜しに行くなら、わたしも絶対ついていって監視しますからね」
「監視?」冗談でも言われたかのごとく、デレクが両方の眉を上げた。
「だって、誰かがあなたを見張らなきゃいけないもの」
「そんなに僕が信用できないのか」
「ええ」
「なぜだ?」本気で知りたがっているように、彼は身を乗りだした。「僕のことを知りもしないのに」
「あなたみたいに評判の悪い人を、信用できるはずがないでしょう」
「なるほど」デレクがじっと見すえてきた。「きみは噂だけで人を判断せず、自分の目で本質を見抜くような女性だと思っていたのだが。とんだ買いかぶりをするところだった」
 インディアの顔がかっと熱くなった。「わたしはちゃんと自分の目で見て判断するわ。それに、ばかじゃないのよ。ひと切れの果物を見たとき、ひとりがプラムだと言っても、それは間違いかもしれない。でも、数十人がプラムだと言えば、本当にそうだという可能性はずっと高くなるわ」
「そうか」デレクはガラスケースのなかの虫でも見るような目つきで、こちらを凝視し続けていた。「きみは自分に自信があるらしい」
「自分の判断力を疑う理由もないもの」
「ふん、なかなか楽しい旅になりそうだな」彼は小声で言った。
「これは遊びじゃないんですからね」インディアは声をとがらせた。
「わかっている」
「だったら、ちゃんと答えて。どうしてパリから捜すの?」
「きみに届いた最後の手紙は、レディ・ヘロイーズがパリで書いたものだからだ」
「どうしてあなたがそのことを?」
「やれやれ、ミス・プレンダーガスト、そんな目で僕を見なくてもいいだろう。僕は下劣な悪党じゃないし、きみとレディ・ヘロイーズに悪さをする気もない」
「あなたが悪い人ではないとわかるまでは、疑うのも当然でしょう」インディアは肩をすくめた。
 しばらくこちらを凝視していたデレクが、ふいに笑いだした。
「笑いごとじゃないのよ」
「いや、まったく……きみは……」彼はグラスをかかげた。「きみは本当におもしろい」
「そんなふうに言われて喜ぶとでも思う?」インディアは鋭く言った。「もう一度きくわ。おばさまの最後の手紙がパリから届いたものだと、なぜわかったの?」
「きみは一昨日、最後の手紙がフランスから届いたと話していた。きみが協会によこしてきた問い合わせ状のすべてにも、パリからの手紙を最後に連絡が途絶えたと書いてあった」
 インディアはデレクを凝視した。「あの問い合わせ状を全部読んだの?」
「もちろん」彼はグラスを口に運んだ。「きみが実に‘礼儀正しく’乱入してくる前から、僕はレディ・ヘロイーズを捜し始めていた。覚えているか?」
「ええ……そうだったわね」インディアは、しかたなくうなずいた。この件では少しばかり分が悪い。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。