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愛に裏切られても【MIRA文庫版】

愛に裏切られても【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・パーマー(Diana Palmer)
 シリーズロマンスの世界で今もっとも売れている作家の一人。総発行部数は4200万部を超え、ニューヨークタイムズを含む各紙のベストセラーリストにもたびたび登場。かつて新聞記者として締め切りに追われる多忙な毎日を経験したことから、今も精力的に執筆を続けている。ジョージア州在住。大の親日家で、日本の言葉と文化を学んでいる。家族は夫と息子の三人。

解説

この渇きはどんな水を飲んでも決して癒やされそうにない。傷を舐め合うように、愛し合うふたりだったが……。

絡みつく母の情夫の魔の手から逃れるために、家を飛びだしたのは12歳のとき。路頭に迷った末、幼い弟を抱えて、あえぐように生きるしかなかったティピーだったが、苦痛と恐怖に満ちた少女時代のために極度の男性恐怖症にも陥っていた。だが、孤高の男キャッシュとの出逢いが運命を変える。何かに飢えたような暗い目をした彼に、同じ不幸の匂いを感じて、初めて人を愛する意味を知るティピー。しかし辛すぎる過去のせいで彼は誰も愛せない。ティピーが妊娠に気づいたのは残酷にも、キャッシュに愛と結婚を拒絶されたあとで――
*本書は、ハーレクイン・プレゼンツスペシャルから既に配信されている作品のMIRA文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「ご感想は?」目をあわせることなく、キャッシュが言った。
「当時の彼女はすごく若かったんじゃない?」ティピーは小さな声で問いかけた。
「ぼくと同じ年だった」
 ティピーの目が手すりにかけられた彼の手に向いた。キャッシュはまったく感情を出さないが、手すりを握りしめる指の関節が白くなっていた。
「わたしは避けられるものなら虫を踏みつぶすのも避けるタイプよ」ティピーは静かに言った。「愛する人が相手でなかったら、避妊もせずにベッドをともにすることはできないわ。子供ってそういうものだと思うの」
 キャッシュはゆっくりと首をめぐらし、興味深そうにティピーを見た。「彼女が言ったとおり、ぼくは冷酷な人殺しだったんだ」
 ティピーは彼の無表情な顔を見つめ、優しいまなざしで言った。「そんなこと信じないわ」
 キャッシュは額に皺を寄せた。「え?」
「ローリーの学校の校長先生が、あなたは軍の精鋭部隊の一員として特殊任務についていたと言ったそうだわ。交渉が失敗し、人命がかかっているというケースでは、決まってあなたが送りこまれたって。だから、自分をお金のために殺人を請け負う殺し屋みたいに思わせようとしても無駄なことよ。あなたはそんな人ではないわ」
 キャッシュは呼吸をとめてしまったように見えた。「きみはぼくのことなど何もわかってないんだ」つっけんどんに言う。
「わたしの祖母はアイルランド人だったわ。彼女には透視能力があったの。わたしの一族の女が代々受けついできた能力よ。母だけは例外だけどね」ティピーは優しく彼を見つめながら続けた。「わたしもわかるはずのないことがわかったりするの。ことが起きる前に感知したり。最近ローリーのことが心配でたまらないのは、あの子に危険が迫っているような気がするからなのよ」
「ぼくは超能力なんて信じない」キャッシュはかたい声で言った。「予知やら透視やらはすべておとぎ話だ」
「あなたにとってはそうかもしれないけど、わたしにとっては現実だわ」ティピーはあたりを見まわし、人ごみの中から弟を見つけだした。ローリーは天井から吊られているシーラカンスの剥製を見あげていた。
 キャッシュは心の内側に土足で踏みこまれたような気がした。ティピーに何もかも見透かされているみたいで気に入らなかった。彼は秘密を守りたいのだ。ティピーに頭の中身をのぞかれたくはない。
「あなたを怒らせちゃったわね。ごめんなさい」ティピーが彼の顔を見ずに穏やかに言った。「わたし、アインシュタイン展のショップに行ってくるわ。ローリーがTシャツをほしがっているの。一時間後にロビーで落ちあいましょう」
 キャッシュはすかさず手をつかんで引きよせた。「だめだ。ぼくもいっしょに行く」ティピーの顎をつまんで、自分のほうを向かせる。「以前ローリーにも言ったとおり、ぼくは正直さに大きな価値を置いているんだ」
「嘘だわ。私生活を他人に推察されることに関しては、あなたは正直さなんか全然評価していない」
「ぼくの私生活についてはきみに話しただろう?」キャッシュはゆっくりと息をついた。「ぼくが自分の子のことを他人に話したのは初めてなんだ」
「わたしってそういう顔をしているのね」ティピーはほほえんだ。
「ああ、そのとおりだ」キャッシュは彼女の頬にそっと指先を触れた。「ぼくはきみ以上に傷だらけの人間だ。だが、きみも心に傷を負っている。傷を負った者同士が互いに深入りするのは正気の沙汰ではない。だから深入りはやめておこう」
「あなた……わたしと深入りすることを考えたことがあるの?」ティピーは耳を疑ってそう問いかけた。
 彼女がそれを喜んでいるのは明らかだった。キャッシュは内心びっくりした。ティピーが自分に惹かれているとは思っていなかったのだ。彼女はあんな暗い過去を背負っているのだから。
「きみみたいな過去のある女が……」彼は声に出してつぶやいた。
 ティピーは一歩距離をつめた。「あなた、ひとつ忘れているわ。あなたは警察官だってこと」
「警察官だから怖くないってことかい?」彼女との距離が縮まり、キャッシュは少々息苦しくなった。ティピーは花のような匂いがする。
 片方の肩をわずかにあげ、彼女は言った。「ジャド・ダンはテキサス・レンジャーだった。彼といると安心していられたわ」
「どういうことだい?」
 ティピーはかすかに頬を染め、唇をかんだ。「あなたに感じるのは……安心感とは違うの。あなたはわたしの胸を騒がせる。なんだか……自分自身を心もとなく感じてしまうの。いつもあなたにさわることばかり考えてしまうから」ほかの来館者たちから隔絶された世界で、ささやくように続ける。「あなたにキスされるのはどんな感じか、知りたくてたまらない」
 彼女がそんなことを言うなんて、キャッシュにはとても信じられなかった。だが、彼女の目も同じせりふを言っている。まるで熱にうかされたような目だ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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