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夜が明けるまで【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

夜が明けるまで【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 作家になる前は高校で英語と世界史を教えていた。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともに米アラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』はヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

伯爵は自ら傷を抱えたまま、翼の折れた天使を拾った。

ロンドン社交界に名の通った賭博場の貴賓専用サロン――そこで働くエリザベスを一目見て、デア伯爵の視線は釘付けになった。どことなく気品の漂う美しい彼女は、その場に似つかわしくなく、経営者のフランス人に利用され、明らかに虐待も受けているようだ。良い育ちであろう彼女が、いったいなぜ身を落としたのか?不遇の女性についてそんなことを考えるうちに、デア伯爵はそのフランス人経営者と一対一の勝負に挑んでいた。その日、運の女神を味方につけた伯爵は、相手の持ち金が底をつくや、貴族にあるまじき言葉を口にした。「その女を賭けろ」

■みなさまの熱いリクエストにお応えして、リージェンシーの名作がよみがえります。仲間を失ったばかりで失意のデア伯爵と、薄幸なエリザベスが主人公。彼女の苦難続きの人生は、伯爵との出会いで夜明けを迎えるのでしょうか?波瀾万丈のシンデレラストーリー。
*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「こんなことは間違っています」ネッド・ハーパーの口調は硬かった。
 エリザベスにはハーパーがどちらに向かって言ったのかわからなかったが、どうやら伯爵のようだった。
「わたしの特権だ」伯爵は答えた。
 デア伯爵の声に怒りは感じられなかった。それどころか、やはり面白がっているように聞こえた。エリザベスは伯爵とネッド・ハーパーの関係がどのようなものなのか考えた。彼女のこれまでの経験からは、想像がつかなかった。彼女の父親の側仕えは間の抜けたにやけた愚か者で、だれからも尊敬されなかった。彼より地位の低い使用人からさえも。
 だが、ネッド・ハーパーは伯爵の前でも遠慮せずに自分の意見を言う。伯爵と女性の関係といった個人的な話題についても。しかも彼は、自分の意見を伯爵がきちんと聞いてくれると信じているようだ。
 ハーパーは口を固く閉じて、冷ややかな目でエリザベスの顔を見つめている。エリザベスが彼に嫌われていることに気づいていると知ったら、彼は満足だろう。だから、エリザベスは悟られないように表情を変えなかった。
「もう話は終わったよ、ネッド」伯爵は前よりも穏やかに言った。
 ネッド・ハーパーはその後しばらくエリザベスの顔を見つめていたが、やがて向きを変えると、図書室を出ていった。
「ネッドの無礼な態度を許してくれ」デア伯爵は少し間を置いてから冷静な声で言った。「彼はきみにではなく、わたしに腹を立てているのだ」
 伯爵は暖炉のところに移動し、両手を炉棚に置いて炎に見入った。ワイン色の短い上着の生地が広い背中と肩にぴったり張りついている。
 紳士たちはよく糊や‘にかわ’などで固くしたリンネルの詰め物を使って、じょうずに肩のところの筋肉が盛りあがったように見せる。今朝伯爵が階段を上っていったときも同じことに気づいたが、伯爵はそんなつまらないものには頼らない。
 エリザベスはもうこれ以上伯爵を見たくならないように、横を向いて視線をそらした。すると、ネッド・ハーパーが図書室の戸口に立ってこちらを見ているのが目に入った。彼はエリザベスの目をしばらく見つめてから、音をたてないようにしてドアを閉めた。エリザベスは急いで伯爵のほうを見たが、伯爵は前と同じ姿勢を保っている。ハーパーがこちらの様子をうかがっていたことは知らないようだ。
「どうしてお連れにならないのですか?」
「ネッドをか?」伯爵は振り向いて、エリザベスと正面から向かい合った。暖炉の火に照らされた彼の髪は青みがかった黒に見えた。「短い旅だから、彼の手は借りなくてもなんとかなる」
「あなたが留守のときにも、わたしはここにいるのですか?」
「もちろんだとも。ボネのところには戻りたくないだろう?」
 わたしが戻りたいと言えば、帰してくれるのだろうか。エリザベスは無言で考えた。いや、あしたボネの賭博場に帰れば、ボネにどんなことをされるかわかったものではない。
 もちろんわたしは偶然伯爵の屋敷にいるのではないし、運命が変わって、すべてが解決したわけでもない。アンリ・ボネはなにか理由があって、わたしをここによこしたのだ。
「それとも、戻りたいのか、ミセス・カーステアズ?」
「いいえ」
「それでは、仕事が終わって帰ってきたら、またきみに会えるのだな?」
 デア伯爵にききたいことがエリザベスの喉元まで出かかった。彼はエリザベスに近づいて、手を差しだした。
「よく眠るんだ、ミセス・カーステアズ。今夜も、わたしが帰るまで毎晩。わたしが留守のあいだ、ネッドが世話をしてくれる」
 エリザベスはしぶしぶ伯爵の手に指を置いた。すると、伯爵はその指をゆっくり口元に近づけ、これ以上はできないというほどに軽く唇を触れた。エリザベスは彼の温かい息が手にかかるのを感じた。
 伯爵はエリザベスの手を放さず、顔を上げて彼女の目を見つめた。そこになにを見たのか知らないが、やがてほほえんだ。
 エリザベスの胸のなかでなにかが動いた。予期せぬ激しい反応だった。あまりの激しさに、苦しくなった。心臓が狂ったように打ちはじめた。その動きは服の上からでもわかりそうなほどだった。伯爵は自分がわたしになにか影響を与えたと気づくのではないだろうか。そう思うと、エリザベスは恐ろしかった。
 男性に手に口づけされることなど、長いあいだなかった。ロマンチックで、まるで騎士のような行為。エリザベスも男性の胸をときめかせたことはあったが、それも遠い昔のことだ。
 色目を使われることもしょっちゅうだった。男たちの卑猥な言葉や、喉元から大きく開いた胸にねばりつく視線にも慣れてしまった。
 彼女は長いあいだ、淑女のようにではなく、淫らな女のように扱われてきた。胸の激しい鼓動は、伯爵とその慇懃な態度への感謝の気持ちのせいだ。エリザベスはそう自分に言い聞かせた。
 今夜の伯爵は完璧な紳士を演じているようだが、彼はわたしを賭で勝ちとったのだ。わたしを自由の身にしてくれたわけではない。わたしを本当の淑女と見なしてくれる本物の紳士なら、きっとそうしていただろう。だから、彼がわたしにこんなふうに接したといっても……。
 エリザベスはデア伯爵の手から指を引き抜き、ほんの少し前にネッド・ハーパーが閉めた戸口へ、逃げるように駆け寄った。指先に伯爵の唇が触れたときには、胸のなかに嵐のような感情がわきあがったが、エリザベスは振り返らなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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