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雨に濡れた天使【ハーレクイン文庫版】

雨に濡れた天使【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリア・ジェイムズ(Julia James)
 十代のころに初めてミルズ・アンド・ブーンのロマンスを読み、それ以来の大ファン。ロマンスの舞台として理想的な地中海地方、そしてイギリスの田園が大好きで、とくに歴史ある城やコテージに惹かれるという。趣味はウォーキング、ガーデニング、刺繍、お菓子作りなど。現在は家族とイギリスに在住。

解説

またもや弟が金目当ての女に引っかかったらしい――
雨の中、グザヴィエは場末で働くリサを待ち伏せするが、濡れそぼる彼女の清らかな美しさに、思わず見惚れてしまう。ほどなくして、彼女をものにしたグザヴィエが、もしかしてリサは思っていたような女性ではなかったのかとほだされかけた矢先に、弟から電話が入ったのだ。リサが求婚されているのをもれ聞いたグザヴィエは、思わず、恫喝していた。一族の金を狙うこの売女め。僕は君の本性を暴くために近づいたと。

*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「マドモアゼル?」
 はっとして振り返ると、いましがたリサに水しぶきをかけ、行く手をふさいだ高級車の後部座席のドアが開き、男性が身を乗りだしていた。
 驚いたことに、カジノに来ていたあのフランス人だった。
 条件反射のように胃のあたりがざわつく一方で、体のほかの部分は硬直してしまい、リサは立ちすくんだ。
 車のドアがさらに大きく開き、男性が降り立った。道路を横切り、中央分離帯にいるリサのほうへやってくる。彼の羽織っている黒いコートはカシミア製で、ひと目で仕立てのよさがわかった。
「君は……リサだね? ずいぶん印象が違うから、すぐにはわからなかったよ」
 様変わりした彼女の外見を見て、彼はひどく驚いているようだった。濃い褐色の目を大きく見開いている。そして、カジノでは見られなかった、何か別の感情も浮かんでいた。
「許してほしい。いま行ったバスに乗りたかったんだろう?」
「ええ」リサはぶっきらぼうに答えた。
 彼女がいちばん強く感じているのはいらだちと怒りだった。だが、別の感情も芽生えつつあった。リサ自身は望まず、取り除いてしまいたい感情が。おそらくフランス人男性の顔に浮かんでいる表情のせいに違いない。
「申し訳ない。水しぶきをかけたうえ、バスに乗り遅れさせてしまった。罪滅ぼしに、僕の車で送らせてもらえないだろうか?」
「せっかくだけど、けっこうよ。すぐに次のバスが来るから。失礼するわ」
 リサは身をひるがえし、道路のもう半分を渡って停留所へ急いだ。雨脚が強まったというのに、あいにくこの停留所には屋根が設けられていない。リサは背中を丸めて立ち、フランス人男性のほうを見ようともしなかった。
 中央分離帯に一人取り残されたグザヴィエは、呆然としてリサの後ろ姿を見送った。彼女の反応は予想外のものだった。
 いや、予想外というのは当たらないと、彼はすぐに思い直した。腹にパンチを見舞われたような気分だ。ようやく、アルマンがリサ・スティーヴンズに魅了された理由がわかったのだ。
 いまのリサはホステスの衣装を脱ぎ、濃い化粧を落として、髪をきちんとまとめている。グザヴィエはすぐさま、厚塗りの化粧が巧妙に隠していたものを見て取った。彼女にはどんな男性の目をも引きつける美しさがあった。
 グザヴィエの胸の中である感情が渦巻いた。それは激しく矛盾する、受け入れがたい感情だった。
 彼はそれをわきに押しのけた。不必要な感情は邪魔になるばかりで、そんなものにかかずらっていられない。計画の次の段階に意識を集中する必要があった。
 さきほどの出来事は出合い頭の偶然ではなく、周到に準備して実行に移したものだった。監視スタッフから、リサがカジノを出たという連絡を受けるなり、運転手に命じて車を出したのだ。
 雨が降りしきる中、グザヴィエは道路を渡って車に戻った。すぐさま運転手に指示を与える。「バス停の前につけろ」
 セダンは急ターンをして、道路の反対側にある停留所の前で止まった。グザヴィエは、今度は歩道側のドアを開けた。都合のいいことに雨はますます激しくなっている。車に乗らなければ、リサは全身ずぶ濡れになるだろう。
 グザヴィエは車のドアを押さえたまま、身を乗りだした。「どうか送らせてほしい、マドモアゼル。ひどい雨じゃないか」断るのは子供じみているとでもいうような口調で話しかける。しかし、返ってきたのは冷たい視線だった。
「よく知らない人の車に乗る気はないわ」リサはけんもほろろに応じた。
 グザヴィエは無言で上着のポケットに手を入れ、名刺を出した。
 一種の賭だった。アルマンは、リサに会社のことは何も話していないと言っていた。それが真実かどうかはすぐにわかる。そして、野心家のマドモアゼル・スティーヴンズが、釣りあげた魚の正体や価値を独自に調査していたかどうかも。
 部署名や肩書はいっさいなく、ただ単に“グザヴィエ・ローラン〈グゼル〉”とだけ書かれている名刺を見て、彼女はどんな反応を示すだろう?
 リサが肩をすくめて名刺を受け取り、街灯のオレンジ色の光のもとでそれを眺める様子を、グザヴィエはひそかに観察した。しかし、彼女はかすかに眉をひそめただけだった。
「〈グゼル〉って、あの高級バッグの?」リサは名刺から目を上げてきいた。
 そっけない反応に、グザヴィエはいらだちを覚えた。「バッグ以外にもいろいろ扱っている。ところでマドモアゼル、せかす気はさらさらないが、僕に送らせてもらえるのかな?」彼もそっけなく尋ねた。
「じゃあ、お願いするわ」
 あまりありがたそうではない口ぶりに、グザヴィエのいらだちが高じた。
 リサが車に歩み寄るのを見て、グザヴィエは後部座席の反対側へ移動した。空いた場所にリサが腰を下ろし、シートベルトを締める。車が走りだしたとき、彼女はグザヴィエを見て言った。
「トラファルガー広場で降ろしてもらえるかしら? あそこなら夜行バスの本数も多いから」
 リサは堅苦しい口調をくずすまいとした。それはバスに乗り遅れ、車の誘惑に負けてしまった自分への怒りによるものだったが、別の理由もあった。絶対に認める気にはなれないものの、実のところ、彼のそばに座っているだけで息苦しかった。無愛想な態度は、感情を表に出さないための必死の演技だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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