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恋をオークション

恋をオークション


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・アフロディーテ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・マーシュ(Nicola Marsh)
 少女時代、大事件を追って世界を駆けめぐるジャーナリストになりたいと思っていた。その後、運よく世界を旅する機会はあったが、ものを書くという夢はずっと胸に秘めたままだった。あるとき、長身で黒髪のハンサムな彼女自身のヒーローに出会い、ロマンスのすばらしさに目覚めたことがきっかけとなり、小説を書きはじめた。現在は夫とメルボルンの郊外に在住。執筆以外の時間は理学療法士として働き、体の不自由な人々の社会復帰を支援している。友人や家族と食事やワインを楽しむのが好きで、映画にもよく行くが、暖炉の前にまるくなってお気に入りの本を読むのがなによりも好きだという。

解説

 女性が恋人代理を競り落とすオークション会場で雑誌編集者のケイトは元恋人のタイを見たとたん、世界の上下が引っくり返ったような気持ちになった。悔しいけれどすてき。セクシーだわ。候補者リストにタイの名前を見つけてから再会のために心の準備をしていたのに。別れてからの六年間について知りたくなったケイトは衝動的にタイを競り落とし、一週間いっしょに過ごすことに……。昔を思い出して笑い合う、それだけのはずなのになぜ、運命にあざ笑われているような妙な予感がするのだろうか。

抄録

「あなたを競り落とすなんてどうかしていると思ったでしょうけど、あなたが今どうしているか知りたかっただけよ。恋人代理《オッド・ボッズ》をやってもらうつもりなんか最初からないわ。お金は喜んで寄付するけど、一週間一緒にいてもらう必要はないの。いい?」
 タイは黙ったまま、青い瞳に謎《なぞ》めいた輝きをたたえ、口元にかすかな笑みを浮かべてケイトを見ている。
 彼の沈黙と、瞳に宿った不可思議な表情にせき立てられるようにケイトはまた言った。「あれからずいぶんたったわ。あなたはどうしているのかと思っていたの。もう六年ですもの」
 言っていることが我ながら情けなく聞こえた。
 青い瞳が至近距離から自分だけに注がれていると思うと、思考がショートしそうだった。全身の神経がぴりぴりと敏感になっているのがわかる。
「そう、あれからずいぶん長い時間がたったね」
 熱く燃える瞳とは裏腹なクールな口調だった。部屋は暖かかったがケイトは思わず身震いする。「そうよ。だからあなたを解放してあげる前にちょっとだけ近況を交換し合うのも悪くないでしょ」
 ケイトは無理に笑いを作り、彼が笑って同意するのを待った。
「いや、悪いね」
 典型的なタイらしい返事だ。言葉が短く、鋭く、ずばりと要点をついていて、ケイトが期待しているのと正反対のことを言ってくる。
「何ですって?」
「よくないって言ったんだ」
「近況を話すのが、それとも私から自由になるのが? どっち?」
 なぜ私はこんなにハスキーで優しい声を出しているのだろうか。まるで彼を誘惑しているみたいに。
 タイが悪いんだわ。たった数分一緒にいただけなのに、彼といると六年前の自分に戻ってしまう。
 彼が眉根をかすかに寄せて首を振ると、六年前にはなかった目尻の細かなしわが目についた。ハンサムなのは少しも変わらないが、タイは疲れ、年取って見える。数えきれないほどたくさんの戦いをしてきたみたいに。
「あわてて近況を交換する気はないよ」
「まあ」
 耐えられないわ。自分の感情はきっちりコントロールしておきながら、“さあ、おいで”と言いたげに目で誘って私をじらし、混乱させるのね。昔とちっとも変わらない。
「ゆっくり話がしたいんだ。君がしてきたことすべてをじっくり聞きたい」
 彼の瞳の色が、ケイトのいちばん好きな宝石、濃いブルーのサファイアの色に変化するのを見て、ケイトは動揺した。ブルーのサファイアの指輪はケイトが祖母からもらった大事な形見だ。タイの瞳をそれと比べることはしたくない。
「あまりにも長すぎたよ、ケイティ」
 よどみのない口調で昔と同じ呼び方で名前を呼ばれたケイトは、動揺する気持ちを押し隠した。
「そうね……」見つめられてなすすべもなく立ちつくすかわりに、何か気の利いたことを言いたかった。私がいまだにタイに心を乱されるのを、彼は気づいているだろうか。
「で、君はどうしたいの?」
 どうって、あなたに身を投げ出す? あなたの服をはぎとる? あなたを私の思いどおりにする?
 何かまともなことを、緊張した雰囲気をほぐすようなことを言わなければ、とケイトは必死になった。
「あなたこそ、どうしたいの?」
 卑怯《ひきょう》かもしれないがケイトは同じ質問をタイに返して返事を避けた。彼が決めればいい。私はまともに考えられる状態じゃない。彼に飛びつきたくなる衝動を抑えるのが精いっぱいだわ。
「こうしたい」
 かすれた声を聞くと期待に背筋がぞくぞくした。どうなっているのかわからないまま、ケイトはつながれた手首を強く引かれていた。
 バランスを崩した彼女はタイに受けとめられ、彼の体にすがった。と思う間もなく、彼の顔が間近に迫り、二人を囲んでいた鏡張りの壁やライトが見えなくなった。
 唇が荒々しく重ねられる。むさぼるようなキスだけれど、なんて甘いキスだろうか。唇が燃えるように熱くなり、理性も思考もかなぐり捨ててケイトは彼のキスに応《こた》えていた。
 タイを求める思いが体を走り抜け、彼女はなかば本能的に彼に応じていた。
 嘘《うそ》よ、こんなことになるなんて。舌が唇を割り、性急に口の中を探ってきた。
 激しさを増すキスに、みぞおちのあたりがきゅっとしぼり上げられるような奇妙な感覚が襲ってくる。舌が唇を這《は》うにつれ、理性はますます遠のき、狂ったように彼を求める思いがつのっていった。
 私はこれを求めていた、という思いがケイトの心を占めていた。舌に変わって今度は歯が下唇をそっと噛《か》み、愛撫《あいぶ》する。耳に聞こえている甘い声が自分の喉からもれていることにケイトは初めて気づいた。
「タイ」つぼを心得たタイの動きに、電流が走るように体が痙攣《けいれん》し、欲望が全身を貫く。
 こんな気持ちにさせてくれる男性は彼しかいない。  彼がいない六年間は長かった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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