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伯爵夫人の出自【MIRA文庫版】

伯爵夫人の出自【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

こんなにも彩りに溢れた世界があるなんて、知らなかった――19世紀英国に舞い降りたシンデレラ・ストーリー!

煙突掃除人の娘ジェマイマはある日、余興のため貴族の結婚式に呼ばれた。上流階級の人に囲まれ居心地悪く佇んでいたところ優しく声をかけてきたのが、見目麗しいセルボーン伯爵――思わず胸ときめかせるジェマイマだが、もちろん彼は住む世界の違う人。もう二度と会うこともないだろうと思っていた数日後、その伯爵がジェマイマの家を訪ね、あろうことか便宜結婚を申し込んでくる。聞けば亡父の遺言で花嫁を迎えないと遺産が手に入らないらしい。「結婚してもきみはきみ、ぼくはぼくで暮らそう」思わぬ申し出にジェマイマは……。

*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のMIRA文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「ミス・セルボーンは安心しておいででしょうね」
「なぜ?」
「レディたちが話すのを聞いたからです。あなたはお嫁さん探しの最中で、いとこのミス・セルボーンが有力候補だと」
 ロブが振り向いた。ふたりの距離は五歩ぐらいしかない。淡い月明かりの中でジェマイマの目に入ったのは、彼の真っ白なシャツと|幅広のネクタイ《クラヴアツト》だった。
「それは事実だ、少なくとも一部はね。どうして人に知れたのかはわからない。父の遺言なのだ、ミス・ジュエル。ぼくは、今夜集まったレディの中から妻を選ばなければならない。わが屋敷の修復に必要な財産を相続したければね」
 ジェマイマは眉をつり上げた。「なんてきびしい条件でしょう。それで、気に入ったお相手がミス・セルボーンなのですか?」
「いや、違う。ぼくの理想が高すぎるのかもしれないが、どのレディにも魅力を感じない。こういう場合、きみならどうする?」
 ジェマイマはまた眉を上げた。「わたしなら? たぶん、いちばん退屈しない、なんとかやっていけそうな人を選ぶと思います」
「いちばん退屈しない?」
「ええ。結婚生活は五十年続くかもしれません。興味を持てない女性とずっといっしょにいるのは退屈でたまらないでしょう」
 ロブはうなずいた。「もっともなご意見だ。しかし、きみは愛には触れなかったね」
 ジェマイマは軽く微笑んだ。「あまり関心がないんです」
「なるほど。多くの文学とは対照的だ。詩や小説はしばしば愛の喜びを絶賛するものだが」
「苦しみもです」
 ロブが近づいてきて隣に座った。どこも触れなくてもジェマイマには彼の体温が感じられた。あらぬことを考えてはだめよ、と自分をいましめた。
「それはきみの経験かな?」
「違います。単なる観察に基づいた意見です」
 ロブは彼女の手を取った。「それにしては、天使のようなキスをしたね」
 握られていた指先がぴくっと震え、ジェマイマはあわてて手を引いた。震えは彼にも伝わっただろう。キスという言葉を聞き、まるで蝶に触れられたように首筋がぞくぞくした。
 彼女は動揺を隠してきっぱり言った。「あれは愛とは関係ありません」
「そうか。では何と関係があるんだ?」
 ロブの声は低く、ささやくような響きだ。ジェマイマは妙な気持ちになった。彼女はうらめしそうにワインの瓶を見た。思った以上に飲んでしまったらしい。
「キスは……ああ、わたしの言いたいことはおわかりでしょう。キスは欲望とか肉体的な魅力にかかわる問題で、そういった危険な……」
「危険?」ロブが身を乗り出した。彼の袖がジェマイマの腕をかすめた。彼女はのどがからからになった。彼がすぐそばにいるのに、もっと近づいてほしい。彼女はわずかに残っている理性にすがろうとした。
「そうです、誤解を招くおそれがあるからです」彼女は立ち上がろうとした。「失礼します。わたしは披露宴で踊るためにお金をいただいているので、仕事はきちんとしなければ」
 ロブはジェマイマの手首をつかんだ。きつくではないものの、どうしても去ろうとするなら引き止める、という意思が感じられた。
「待ってくれ。ここにいてもらうために、ぼくがそれ以上払うこともできるだろう?」
 沈黙が流れ、足元の落ち葉を揺らす風の音しか聞こえなくなった。
「それはできません」ジェマイマは言った。「でも、特別にサービスしてあげてもいいわ、気は進まないけれど」
 ロブは微笑んだ。薄暗がりの中で白い歯が光った。「それにはキスも含まれるのかな? 危険かどうかはともかく」
「いいえ」
「あのときは承諾したじゃないか」
 ジェマイマは心臓がどきどきした。脈の速さが彼の指にも伝わっているはずだ。「あなたは代金以上のものを受け取りました」
「そうだね」ロブは言った。「きみはいやだったのか?」
 沈黙があった。彼はまだジェマイマの手首を持っていたが、今は力が抜けている。
「いいえ」ジェマイマはしかたなく正直に言った。「いやではなかったわ。でも、もう応じる気はありません」
「なぜ?」
 ジェマイマはとがめるような目を向けた。「きくまでもないでしょう。もし職人の娘が気軽にキスをしていたら、ほかのものも気軽に与えるという噂が……」彼女は肩をすくめた。
 彼は笑っただけで、それ以上追及しなかった。「わかった。それが誤解を招いて危険ということか」
「そうです」
 ロブは手を放し、彼女から少し離れてベンチの背にもたれた。ジェマイマはほっとした。
「では、代わりに話をしてくれ」
「何の話をですか?」ジェマイマは冷ややかに言った。油断してはいけない。
「どこでサミュエル・ジョンソンを習ったのか。そして話し方も、あの」彼は言葉を切った。
「レディのような口調はどこで学んだのかでしょう?」
「すまない」ロブはいかにもすまなそうで、ジェマイマは好感を抱いた。「失礼なことを言うつもりはなかった。おそらく、レディに負けないほどの気品と教養は、生来のものではないだろう」
 ジェマイマは微笑んだ。「確かに生まれつきではありません。わたしは煙突掃除人の娘で、ねずみ捕獲人の孫だもの。ただ、厳格な道徳者として有名なミセス・エリザベス・モンタギューの指導を受けました。だからその気になれば公爵夫人のふりもできます」
 ロブは低く口笛を鳴らした。「ミセス・モンタギューの生徒か。すばらしい」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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