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伯爵と泣けない天使

伯爵と泣けない天使


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

見知らぬ伯爵の匂い立つ魅力に、乙女の胸はざわめいて……。

「君たちに関することはすべて把握するのが僕の役目だ」ロンドンに出てきたばかりのテッサとその妹たちは、傲慢な伯爵ペイトン・ラムスデンを前に戸惑いを隠せなかった。生前の父が、私たちが全く知らない男性に後見役を頼んでいたなんて。比類なく美しい伯爵は姉妹の日常にたやすく溶け込み、寄る辺なきテッサの疲れた心を巧みに解きほぐしていく。舞踏会で彼とワルツを踊ったあとに物陰で唇を奪われ、生まれて初めての喜びに漂うテッサは夢想だにしなかった。彼の唇からこぼれる言葉はすべて偽りだということを――甘い愛の囁きも、彼が後見人であるという話も。

■特殊な事情により極秘の任務を帯びて姉妹を守護するペイトンと、そんな彼への恋心を密かに募らせるテッサ。制約に縛られながらもどうしようもなく惹かれあう二人に、やがて命の危機が訪れて……。2018年RITA賞ファイナリストが描く激動の愛をご堪能ください!

抄録

 テッサはまたしてもしつこくつきまとう胸騒ぎを感じ始めた。こういう不安から解放されることを願っていたのに。常に警戒する必要がなくなることなど永遠にないのだろうか? ロンドンに着いてから、ようやくその恐怖を克服できたと思っていたのに、ここ数日、誰かに監視されている感覚が戻ってきていた。そしてこれだ。テッサはレティキュールに手を伸ばした。中には小さい拳銃が入っている。出かけるときは必ず携帯しているのだ。
「リリー、客間で待っていてくださるかしら。ちょっと見まわってくるわ」
 リリーは怪訝そうな顔をしたが、テッサは気にしなかった。少なくとも今感じている不安は気のせいではない。サンクトペテルブルクでもその予感は的中したのだ。
 テッサはゆっくりと階段を上り始めた。曲線を描く階段の壁に背を向けてそろそろ進む。誰かが上階から見下ろしていてもなるべく気づかれないように。もし侵入者がいるとしたら上階だろう。わたしたちが家に入ってきたのが聞こえたはずだ。
 テッサはレティキュールから小型拳銃をそっと取り出した。引き金に指をかける。自分の直感を疑ったことは一度もない。家に侵入するには絶好のチャンスだ。妹たちはミセス・ホリスターと近くの公園に出かけているし、メグとアーサーは午後は休みで、ダーズリー伯爵の屋敷に戻っている。この家に不審者が出入りしても気づく者は誰もいないのだ。
 上りきるまであと五段のところで、堅木の床にブーツの靴音が聞こえた。テッサは階段の自然な湾曲を描く部分に巧みに隠れたが、同時に上階の様子がまったく見えなくなった。自分の姿を見られない代わりに、こちらも向こうの姿を見ることができない。
 侵入者が近づいてくる前に、テッサは数秒で必死に頭を働かせた。どうすればいいの? 通り過ぎるときに必ず気づかれる。先手を打つしかない。
 テッサは大胆にも階段の中央に進み出て、銃を構えた。「動かないで」
 次に何が起こるのか心の準備ができていなかった。侵入者はテッサの命令に従わず、飛びかかってきた。階段を転がり落ちることもなく、階段の壁にテッサをどんと押しつける。テッサは壁と屈強な体にひどくみだらな格好で押し潰されているのがわかった。胸のふくらみが相手の胸板に当たり、スカートは硬い腿の筋肉に押し当たっている。呼吸もままならず、まして叫ぶこともできない。銃を握った手は男の手につかまれて壁に押しつけられ、びくともしない。
 テッサは必死でもがいたが、ぴたりと体を押しつけられているため、蹴り技を食らわせるのも無理だった。動かせない銃に向けていた視線を侵入者の顔に移したとたん、思わず叫んだ。「ダーズリー!」
「ミス・ブランスコム!」彼もテッサと同じくらい驚いた様子で、銃を握るテッサの手をぱっと離した。
 不意に手が自由になったので、弱った指から銃が滑り落ち、音をたてて階段を落ちていった。そして暴発音が鳴り響いた。すぐさまダーズリーはテッサに覆いかぶさった。今度は守るために。彼の両腕が礼儀など無視してしっかりとテッサを抱き締め、彼の体がぴったりと体に密着する。
 テッサはこの体勢の意味を理解した。彼女の楯となろうとしているのだ。これほど力強く守ってくれる人などいないだろう。ダーズリーの腕の中は暗くて安全で、テッサはしばらくの間、とびきり贅沢な気分に酔いしれた。やがてダーズリーは、危険は銃の暴発だけだったとわかったようだ。
 彼は信じられないという顔でテッサを見た。「ぼくに向けた銃に弾を込めていたのか?」
 テッサが顔を上げると、彼の顔が間近にあった。「もちろんよ。あなただと知らなかったんだもの。弾を入れない武器なんてなんの役にも立たないじゃない」彼の青い目に暗い影があることに今まで気づかなかった。これほど近くで彼の目をしみじみと見る機会などなかった。
 ほかにも、この距離で初めてしみじみと味わっているものがある。彼の肩幅の広さや腿の硬さ。言うまでもなく、階段の上での親密な体勢も。
 不安に思ったリリーおばがすぐにでも客間から出てくるかもしれない。こんな体勢でいる二人を見たら、いったいどんなふうに思うことか。テッサは少しでも彼から離れようとわずかに身をよじらせ、すぐに後悔した。体をねじったせいで、ヒップがとんでもなく不作法に彼をかすってしまったのだ。口にするのが最もはばかられるその部分がかすかに動くのを感じ、テッサは顔から火が出そうになった。
 ダーズリーは一歩下がった。「大変失礼した、ミス・ブランスコム」まるで舞踏会の階段でかすかに触れ合っただけのような冷静で丁重な口調だ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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