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貴方が触れた夢

貴方が触れた夢


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャンディス・キャンプ(Candace Camp)
 新聞社に勤める両親のもとに生まれ、10歳で始めたというお話作りはキャンディスにとってリラックスの手段だった。シャイで話し下手だった彼女は文章にすると自分の考えや思いを素直に表すことができた。

解説

公爵家の末っ子が恋したのは、男装した記憶喪失のレディ!?あの〈モアランド公爵家〉が15年の歳月を経て、新章開幕!

モアランド公爵家のアレックスはその日、双子の兄弟が営む調査所にたまたま一人でいた。そこへ、帽子を深々とかぶって顔を隠した、小柄な紳士が依頼に現れる――と思いきや、なんとその紳士は男装した、黒髪の美しきレディ。どうやら気がついたときにはいっさいの記憶をなくしていたらしく、「自分を探してほしい」という。しかし手がかりは身につけていた指輪やロケットのわずかな所持品と、そこに記されていた“サブリナ”という名前だけ。行くあてのない彼女をひとまず公爵家に連れて帰ることにしたアレックスだが……。

抄録

 アレックスは弾かれたようにベッドから起き上がり、あえぎながら必死に息を吸った。一瞬にしてぱちりと目が覚める。肌は汗でぬめり、胸は走ったあとのように上下していた。アレックスが逃げ出し、しゃにむに屋根の上を走って隣の屋根に飛び移るという夢で、同じときの出来事ではあるものの、昔よく見た部屋に閉じ込められる悪夢とは違っていた。最近見ていた夢とも少し違う。だが、よく思い出せないままに午前中つきまとっていた昨夜の夢と同じ内容だったことに、とつぜんはっきりと思い至った。
 アレックスは上掛けをはねのけ、ベッドから飛び下りて、寝る前に椅子に放っていたズボンを急いではいた。シャツをつかみながらドアを出て、それを着ながら早足で廊下を歩く。角を曲がったところで、サブリナの部屋のドアが開いて、彼女が飛び出してきた。
「アレックス!」サブリナは数メートル先から飛びついてきて、アレックスは彼女に腕を回し、下を向いて頭を重ねた。
「しいっ。大丈夫」そうささやき、なだめるように片手でサブリナの背中をさする。「安心して」
 サブリナは震えながら、アレックスに強く腕を巻きつけ、ぴたりと体を押しつけてきた。アレックスの手に、サブリナは柔らかくしなやかに感じられ、黒い巻き毛が、アレックスの左右に開いたシャツの隙間の肌をくすぐった。サブリナの頭に唇を押し当てると、髪の甘い香りが鼻孔を満たした。
 アレックスはサブリナを慰め、守りたかったが、同時にまったく別のうずきが体内でふくれ上がっていた。サブリナは綿のねまきしか身につけておらず、アレックスのシャツは開いていて、ズボンのいちばん上のボタンは外れたままだ。二人の体は極限まで密着しているのに、服はまだ着ている。サブリナが自分に触れる感触を、その体のぬくもりを、肌に押しつけられる胸を、脚に重なる脚の長さを、アレックスは強く意識した。
 サブリナを放さなければ。身を引くんだ。少なくとも、彼女をなでるのはやめろ。
 サブリナは顔を上げ、アレックスを見た。柔らかな黒っぽい巻き毛が誘うように落ち、薄明かりの中でその目は見開かれ、陰を帯びていて、唇は柔らかそうだった。次の瞬間、アレックスはサブリナにキスをしていた。サブリナの唇はアレックスの唇の下で開き、彼女の腕は上がってアレックスの首に巻きついた。アレックスの腕の中でサブリナはしなやかに形を変え、アレックスの体に沿うようにその体はとろけ、アレックスはいっそうかき立てられた。悪夢も、善意も、礼節もすべて、体内にこみ上げる熱と渇きの前に消え去った。
 アレックスは唇の角度を変え、再びサブリナにキスして、柔らかな尻のふくらみを両手でなで下ろし、持ち上げて自分に押しつけた。サブリナは喉の奥で小さく驚きの声をあげ、その声にアレックスははっとした。
 その瞬間、自分たちがいまどこに立っているのかを思い出した。廊下にはドアがいくつも並んでいる。恐ろしく好奇心の強い家族が、いつ顔を突き出す気になるかわからない。公爵は死んだように眠るが、母は違うし、母に何と言われるかと想像するだけで、加熱していた血液は凍りついた。これはあらゆる面で間違ったことだ。サブリナがここにいるのは、アレックスに守られるためであり、誘惑されるためではない。サブリナは怯えていて孤独だ。そこにつけ込むなど、悪党のすることだ。それに、いくらアレックスが認めたくなくても、サブリナは結婚しているかもしれないのだ。
 アレックスは顔を上げ、サブリナに回していた腕をゆるめた。少し間を置き、息を整えてから、ようやく後ろに下がる。「す……」飛び出した声はしゃがれていて、改めて言い直す。「すまなかった。許してくれ。こんなことをしてしまって……」
 両手を自分の髪に差し入れ、脳を目覚めさせるかのように、指先で頭皮を揉んだ。あたりを見回し、廊下がどちらの方向も静かで無人であることを確かめると、ほっとした。
 サブリナの手を取り、彼女の寝室に引き込んで、背後でそっとドアを閉める。もちろん、ここは最も危険な場所だが、サブリナと話をしなければならなかったし、真夜中にこんな格好の彼女と一緒にいるところを見られる危険は冒せなかった。寛大なアレックスの家族にも、限度というものがある。
「さあ、座って」アレックスはサブリナをふかふかの肘掛け椅子に連れていき、自分は椅子の前のクッションに座った。サブリナの両手を取って、真剣に言う。「本当に、心から、君に謝りたい。そんなつもりはなかった……これからもない……ただ、君があまりにきれいで。いや、もちろん、君は少しも悪くない」慌ててつけ足す。「悪いのは全部僕だ」
「全部ではないわ」サブリナの声は穏やかだったが、おどけた調子も感じられた。
 アレックスがまじまじと見ると、サブリナの目はきらめいていた。サブリナはくすくす笑い、アレックスは肩の力を抜いてクッションにもたれた。「とにかく、僕が悪かったし、心から謝る。さてと、まずはこの質問をしなくちゃいけなかったね。何に怯えていたんだい? 悪夢でも見たのか?」
「ええ」サブリナの顔から、笑いの色がすっかり消えた。「恐ろしい夢だったわ。自分が落ちていくの」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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