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男爵の花嫁【MIRA文庫版】

男爵の花嫁【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリア・ジャスティス(Julia Justiss)
 小学三年生のときから物語を書きはじめ、大学では詩集を出版し、卒業後は保険会社やチュニジアのアメリカ大使館で編集者として働いていた。海軍士官の夫について十二年のあいだに七回の引っ越しを経験したあと、現在は米テキサス州東部のパイニー・ウッズに落ち着き、高校でフランス語を教えている。1997年にアメリカロマンス作家協会ゴールデン・ハート賞を受賞。夫と三人の子供、二匹の犬とジョージアン・スタイルの屋敷に住む。

解説

薄幸な家庭教師は、男爵と知らずに彼を好きになってしまう。日に日に気持ちは深まり、切なさは増すばかりで…。

住み込み家庭教師ジョアナは、好色な貴族の主人に手込めにされかけたところを夫人に見とがめられ、屋敷を追い出される。無一文で馬にも乗れず、兄が管理人として働いている地所まで歩いて訪ねるが、既に兄は解雇されたあと――代わりに現れたのが、端麗な容貌をした紳士ネッドだった。行き場のないジョアナに、住み込みの仕事を与えてくれるという。上流階級の男性とは二度と関わりたくないと思っていたのに、ジョアナは彼の誠実さに胸の高鳴りを覚えてしまう。だから気持ちを封じようとした。ネッドの優しさに搦めとられる前に。

*本書は、ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャルから既に配信されている作品のMIRA文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 驚きのあまりいらだちも忘れ、ネッドはその女性が木の床に頭を打ちつける前にあわてて抱き留めた。そしてかかえあげ、どこに下ろしたものかとあたりを見まわし、第一印象は違っていたと思った。
 大きな目は黒っぽく、あごは細くて意志が強そうだ。小柄でやせてはいるが少女ではない、大人の女だ。彼の手に豊かな胸のふくらみがはっきり感じられ、異国風の香りが雨とぬれた毛織物のにおいに混じってほのかに漂ってくる。
 ネッドの眠っていた体が突然目覚めた。
 動揺して悪態をつき、振り向くと、マイルズは意識のない娘――いや、女性を長椅子に寝かせるよう身振りで示した。「いったい何者だ?」
「ミスター・アンダーズの妹だそうです」マイルズは言い、ネッドが彼女の横に座って手をさすっているあいだにブランデーをグラスに注いだ。「最初は愛人かと思いましたが、だとしたらこんなに遅く、ずぶぬれでは来ないでしょう」
 いくら手をさすってあたためようとしても意識は回復しない。ネッドは次に平手で頬をたたいた。すると彼女がぴくっとし、うめきながら目を開けた。
 じっとネッドを見ている。まだぼうっとして、自分がどこに、だれといるのかわからないようだ。その手と体の冷たさにネッドが気づくと同時に彼女が震えだし、がちがちと歯を鳴らした。
「冷えきっているな」彼はつぶやいた。「マイルズ、そのグラスをこっちへ」あごでブランデーをさしたあと、腕にもたれかかっている女性に目を戻した。「ミス……ミセス――」ふたたび執事を見た。
「ミセス・メリルです」マイルズが答えた。
「心配はいらない、ミセス・メリル」ネッドは言った。「ここはブレネム・ヒルだ。ぼくはミスター・グリーブズ、エングルメア卿の領地の管理人をしている。さあ、飲みなさい。体があたたまる」
 彼が女性の唇――ふっくらした実に美しい弓形の唇を上手に開かせ、ブランデーを少し注ぐと、彼女はちょっとむせたあとグラスを安定させるためにネッドの手に自分の手をそえ、少し飲んだ。震えが和らぎ、やがて止まった。
 ネッドは目をこらした。女性の手は驚くほど小さくて華奢だ。顔はハート形で、鼻は小さめ、目は黒っぽく見えるが、ほの暗い火明かりでは本当の色がわからない。髪はボンネットに隠れているものの、旅行用マントは長椅子に寝かせたときに脱げたので、美しい首と肩の線やふくよかな胸の形があらわになっている。凍えるほど寒いにちがいない。張りついたドレスを透かして胸の先端がとがっているのが見える。
 それを味わいたくて口がむずむずしてきた。
 ネッドの下半身が緊張した。雨にぬれた体から、湿った土のにおいとともに、刈りたての牧草のようなさわやかな香りがする。
 彼はブランデーよりも効果的に、ずっと楽しく女性をあたためる方法をいくつも思いついた。解き放たれた猟犬が獲物を追うように想像がどんどん広がっていく。からみつく白い腿、もてあそぶように動く小さな手、その手に導かれるまま彼女の中に……。
 体がかっと熱くなり、額に汗が噴きだす。まずいぞ、もう少しロンドンに滞在してミセス・マッカレンの娼館にでも行っておけばよかった。もうずいぶん長いあいだ女性とベッドをともにしていない。
 ネッドは懸命にみだらな想像を止めようとした。目の前にいる女性は娼婦の可能性もあるが、アンダーズの妹かもしれない。だとすれば、遠縁であってもニッキーの親類だ。兄が何をしたにせよ、ニッキーは自分の親類をレディとして扱ってほしいだろう。
 そのとき、彼女がグラスを押し返した。
「マイルズによれば、ミスター・アンダーズに――お兄さんに会いに来たとか?」ネッドはきいた。
 彼女はうなずき、目に警戒の表情を浮かべた。
「なぜ、こんな夜中に来たのだ? びしょぬれになったところを見ると、幌なしの軽馬車を走らせてきたんだな。御者を待たせているのか? マイルズに荷物を取りに行かせようか?」
 彼女は答えをためらっている。「馬車は……待っていません。御者もいません。あの……歩いて来ました」
「ヘーゼルウィックから?」ネッドは信じられなかった。「ひとりで、夜道を?」
 ジョアナはその質問を無視して彼の腕に手をおいた。「わたしの聞き間違いではないんですね? グレヴィルは……ここにいないの?」
 この女性が何者であれ、雨の夜に必死で歩いてきたことは確かだ。アンダーズの行為は気に入らないが、彼女に対してネッドはある種の哀れみを覚えた。「いない。気の毒だが」
 ジョアナはつばをのみこんだ。「どこへ行ったか、ご存じですか?」
 ネッドが振り向くと、マイルズが首を振っている。「いや、知らない」
 彼女は大粒の涙をこぼし、あわてて両手に顔をうずめた。「ああ。わたしはどうすればいいの?」
 自制心を取り戻そうと闘っていたけれど、やがて感情を抑え、ジョアナは泣くのをぴたっとやめた。ネッドは感嘆した。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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