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人気俳優は愛犬家

人気俳優は愛犬家

著: 桑原伶依 画: 祐也
発行: コスミック出版
レーベル: セシル文庫



著者プロフィール

 桑原 伶依(くわはら れい)
 3月7日生まれ。魚座。A型。

解説

 桐原由宇は『ワンニャー倶楽部』に勤める新米ペットシッター。新規の依頼を受けて住居を訪ねると、そこは超高級マンションで、依頼主はなんと人気沸騰中の美形俳優、天音響だった! 響は大中小の犬を飼っていて、わんこ専用サロンに、宝石付き首輪、犬もはいれる大風呂と、半端がないほど徹底した犬ばかぶりだった。呆れながらも由宇は、日々をすごすうちにときめいてしまい……!?
※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「響さん……?」
 頼りなく呼びかけると、響は切ない瞳でじっと由宇を見つめて問いかける。
「……由宇くんは、俺のこと嫌い……?」
 嫌いじゃない。むしろ好きだ。
 頭を振って答えると、響はなおも由宇を掻き口説く。
「好きだよ、由宇くん。一目見たとき感じたインスピレーションは正しかった。逢うたびに君を好きになる。君がいてくれるだけで、俺はすごく幸せな気持ちになれるんだ……」
 そんなこと、響は本気で言ってるんだろうか?
 だとしたら、こんなに誰かに思われたこと、由宇は今まで一度もない。
「由宇くんは? 由宇くんは俺のこと好き?」
 引き込まれそうな瞳にじっと見つめられ、真剣に尋ねられたら、はぐらかすのも悪い気がする。
 由宇はもう、二度と嘘をつきたくなかった。
 嘘をついていたわけじゃないけど、一度は響を傷つけているから。
 これからは素直な気持ちで接すると誓ったから――。
「好きです」
 はっきりとそう答えた。
 それがどういう結果を生むか、正しく理解していたわけじゃない。酔った頭で思ったことを口にしただけ。
「由宇くん……!」
 感極まった声で由宇の名を呼んだ響が、『もう離さない』と言わんばかりに由宇の体を強く抱きしめ、そっと頬に口づける。
「こうしても、嫌じゃない?」
 別に嫌だとは思わなかった。それを頷きで伝えると、今度は唇にキスされた。
 由宇にとって初めてのキスだ。と言っても、別に大事に取っていたわけじゃない。キスしたいと思う相手が現れなかっただけ。
 唇を離した響が再び問いかけてくる。
「こうしても、嫌じゃない?」
 嫌ではなかった。響はとても綺麗な顔をしているし。カッコイイと憧れてもいる。だからだろうか。嫌というより気持ちよくて、もっとしたいと思ってしまった。
 頷いて響の顔をうっとり見上げると、また優しくキスされて。緩めた衣服の隙間から、響の手が滑るように潜り込んでくる。
「ん……っ」
 少し冷たい感触に驚いて身を捩《よじ》ったが、すぐに心地いい温もりに変わっていく。
 なんだかシェリー酒を飲んだときみたいな、ふわふわと雲の上を歩いているような、甘い痺れを伴った不思議な感じがする。こんなの生まれて初めてだ。
「由宇くん……! 由宇くん……!」
 譫言《うわごと》のように、響が由宇の名前を呼んでいる。
「……響さ…ん……」
 由宇も名前を呼んで縋りつくと、響が由宇の肩口に顔を埋めてきた。
 首筋や肩を、柔らかく湿ったものが這っていく。なんだかゾクゾクして、体が震えてしまう。
「あ……っ」
 いつしか由宇の上半身は裸にされ、響の手と唇と、乱れた髪に優しく愛撫されていた。
「好きだよ、由宇くん……」
 響の声を聞きながら、由宇は微かに微笑んだ。
 だって響が幸せそうに微笑んでいたから。
 そんな響を見ているだけで、とても幸せな気持ちになれたから――。

*この続きは製品版でお楽しみください。