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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

白衣の天使の忍ぶ恋

白衣の天使の忍ぶ恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

王子の興味はただの気まぐれ。聖夜の奇跡でも、私の恋はかなわない。

昨年失恋してから、助産師のフローは男性とつき合わないと決めていた。しかし放蕩者として噂の王子、ハジーンの魅力には逆らえなかった。きらびやかな流行の店で、彼がフローだけに目をとめたからだ。豪勢なベッドで朝まで過ごしたときは、彼こそ運命の人だと実感した。
正直でいようと、彼女は告白した。「あなたが王子だと知っている」と。するとハジーンは、金めあてと罵り、彼女を置き去りにして出ていった。とりつく島もない彼の態度に、フローは涙がかれるまで泣いた。そんな惨めな彼女を待っていたのは、親友の結婚式への招待だった――相手はハジーンの兄。弟であるハジーンも必ずや出席するはずだ。想いを踏みにじられたばかりなのに、淡い望みを抑えきれず……。

■HQロマンスとイマージュにまたがってお届けする稀少な2部作!本作は、第1話『無垢を摘んだ皇太子』(R−3362)にも登場した、男性不信のフローと悪名高き王子ハジーンの物語です。決して本気にならない相手をけなげに想う白衣の天使が胸を打ちます。

抄録

「昔つき合っていた人が、この店によく来ていて……」フローはほんの少しだけ、事情を打ち明けた。
「また会いたいと思っているのか?」
「いいえ、ちっとも」考えただけでぞっとする。「最近はずっと家で過ごしているわ」
「どれくらい?」
「今年に入ってからはずっと」
「なぜだ?」
「男性とはつき合わないと決めているの」
 それほど男がいやになるとは、いったい彼女になにがあったのだろう? めずらしく、ハジーンは気になった。「なぜだ?」
「詳しいことは話したくないわ」フローはその理由を、誰にも話していなかった。家族にも、親友にも打ち明けてはいない。
「それじゃあ、君はどんな男ともつき合わないと決めているのか?」
 先ほどまでなら、フローはきっぱりイエスと言った。
 でも……。ハジーンは本当にすてきだ。
 それに、おもしろい。
 王子の目はグレーだが、ずっと同じグレーではなかった。近くで見ると、グリーンと琥珀色の小さな斑点が見える。
「そのつもりよ」フローは答えた。
「少しばかり極端じゃないか? そんなふうに閉じこもるのは……」
「ええ、そうかもしれないわね」
「飲み物のお代わりはどうだ?」
「ありがとう。でも、いらないわ」フローは空になったハジーンのグラスに視線を向けた。「あなたは? お代わりをもらってきましょうか?」フローはなんとかして自分を落ち着かせたかった。立ってバーカウンターまで歩けば、呼吸の仕方を思い出せるかもしれない。けれど、ハジーンはそう簡単に解放してくれそうになかった。
「僕もいらない。君の友人は現れそうもないな」
「そうね」
 フローはあたりを見まわした。いったいマギーはどうしたのかしら? 気が変わって、イリアスに赤ん坊ができたと伝えるのはやめたとか?
 携帯電話が手元にないので、連絡の取りようがない。どうしよう……。
 そのとき、見覚えのある男性の姿が視界に入ってきた。
 以前つき合っていた男性――フローがあまりにも長いこと家にこもる原因を作った張本人だ。
 彼女は目をそらし、ふたたびハジーンを見つめた。
「どうかしたのか?」フローのようすがおかしいのに気づいて、ハジーンがきいた。
「昔つき合っていた人が、すぐそこにいるの」その男性はこちらに向かってくる。
 フローの顔からみるみる血の気が引いていくのを見て、ひどく傷つけられた相手なのだろうと、ハジーンには容易に想像がついた。
 そして、理由もわかる気がした。相手は〈ディオンズ〉でよく見かける顔で、一夜の遊び相手を物色している日もあれば、妻を連れて食事に来ている日もあるという、ろくでもない男だった。
 ハジーンは今でこそ好き勝手をしているが、かつては妻がいて、結婚の誓いを忠実に守っていた。フローのあわてふためきようから、彼女一人では太刀打ちできないと察すると、ハジーンは喜んで力になることに決めた。
「フローは僕と話をしているんだ」近づいてきた男に向かって、ハジーンはぶっきらぼうに言った。「じゃまをしないでくれないか」
「いや、あの――」男がなにか言おうとすると、ハジーンは立ちあがった。
「僕は丁寧に頼んでいるんだぞ」
 一触即発の空気に、フローはあぜんとした。
 ハジーンは相手を圧倒しつつ、ドアマンのマーカスに合図を送った。
「僕はただフローと話をしようと……」男は簡単には引きさがらなかった。
「ああ、それはできないな」ハジーンは言った。「君は今後、この建物には出入り禁止になるから」
 フローの前の恋人が大きな声で抗議しながらも店の外に連れ出されると、ハジーンはふたたび席についた。
「彼が君をわずらわせることは二度とないはずだ。少なくとも、ここにいるときは」
 フローは、目の前が急に明るくなったように感じた。ようやくいくらか仕返しできたと思うと、心がうきうきした。
 フローはハジーンをじっと見つめた。
 ハジーンもフローを見つめ返す。
 彼女に視線を向ける男性はいつも、全身をじろじろと眺めまわすのに、王子の目は顔に向けられたままだ。
 それでも、そのまなざしはセクシーだった。
 唇の曲線をじっくりと視線でなぞられたフローは、舌で唇を湿らせたい衝動をけんめいに抑えこんだ。
 やがて、二人の目がふたたびぶつかり合うと、火と火が対峙したような衝撃を覚えた。
 テーブルの下で合わせていたフローの両膝には、まるではさまれているようにハジーンの脚のぬくもりが伝わってきた。いっそのこと、力をこめてはさんでくれればいいのに、とフローは思った。
「そろそろ行くわ」どうやらマギーは現れそうもないとわかって、フローは言った。
「なんだって? 聞こえない」
 嘘よ。彼には聞こえている。彼女はハジーンの目をのぞきこんで思った。ボックス席は騒がしい店全体から引っこんだところにあるのだから。
 もう少し大きな声で先ほどの言葉を繰り返し、財布に手を伸ばして〈ディオンズ〉から立ち去ろうかしら? それとも少しばかり身を寄せて、王子の魅力的な口元に先ほどの言葉を繰り返す?
 あるいは、ややこしい状況をもっと単純にしてしまう?
 フローは最後の選択肢を選んだ。「それなら、ここへ来て、隣に座ってちょうだい」
 飲み物はいらない。会話も必要ない。フローが欲しかったのは……。
 ハジーンのキスだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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