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ベネチアの夜に燃えて【ハーレクイン・セレクト版】

ベネチアの夜に燃えて【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リン・レイ・ハリス(Lynn Raye Harris)
 祖母がガレージセールで買ってきたハーレクインのロマンス小説を初めて読み、将来はシークかプリンスと絶対に結婚すると心に誓う。その後軍人と結婚。クレムリンを訪問したり、地球の反対側にある火山を探索するといった世界中を飛び回る生活を送ることになる。有望なロマンス小説に贈られるアメリカ・ゴールデン・ハート賞で2008年度、最終選考まで残った。

解説

一夜だけでもいい、自信に満ちた魅惑的な女性になれたら。その一心でティナはベネチアの仮面舞踏会へ出かけ、身を捧げたいと思えるすてきな男性とめぐりあった。
「仮面はつけたまま、名前も明かさないことにしよう」耳元でささやかれた言葉に、彼女はうなずいた。ところが、夢のような時間を過ごしたあと、どうしても素顔を見たくなり、眠る彼の仮面をそっとずらした。まさか初めての男性が、兄の仇敵の侯爵ニコだったとは!皮肉な運命に愕然とし、ティナは無言でその場を逃げだした。だが2カ月後、ティナはその身に小さな命を宿していて……。

■父親の愛を知らずに育った自分と同じ思いをさせるにしのびなく、侯爵ニコに妊娠を告げたティナ。ですが、強引に城へ連れ去られて……。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を彷彿させるドラマチックな恋を、リン・レイ・ハリスが繊細な筆致で綴ります。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ニコは胃のなかが空っぽになったような妙な感覚を覚えた。目の前に座っている女性がかつての友人の妹とはとても信じられない。彼女ははっきりとは言わなかったが、言わんとしていることはわかる。
 おなかの子の父親はあなたよ、と。
 そんなはずはない。ベネチアや仮面舞踏会の話を聞かされたところで、あの女性がヴァレンティナでないのは明らかだ。レンツォが何か企んでいるに違いない。あの内気な少女が兄と同じ非情さを持ちあわせていると思うと、ニコはなぜか落胆した。
 兄と妹がどうやって情報を得たのかは知らないが、罠になどかかるものか。
 ニコは再びヴァレンティナの全身に目を走らせた。あの晩の女性を彷彿とさせるものがあるだろうか。彼女は舞踏会場の外の波止場で震えていた。呼吸が乱れ、ひどい目に遭わされたのかと最初は心配したが、そうではなかった。
 なんとも純真な女性だった。いつもならベッドの相手には経験豊かな女性を選ぶのに、あの晩だけは違った。バージンではないと踏んでいただけに、いっそう驚かされた。
 目の前に座っているのが、あの女性だって?
 まさか。ダンジェリ兄妹はぼくと一緒にいた女性を知っていて、彼女を利用しようとしているとしか考えられない。自分たちの利益のために。
「嘘をつくな」
 ティナは傷つき、目を見開いた。「どうしてそんなふうに思うの? 嘘をついてわたしにどんな得があるのかしら?」
 怒りが大波となってニコの胸に押し寄せた。しらを切るのがなんとうまいことか。「ぼくは裕福で称号もある。しかも、〈ダンジェリ・モータース〉にとってぼくの会社は目の上のこぶだ」
 彼女は眉をひそめて立ち上がった。
 なんと美しい。ニコはみぞおちを殴られたように感じた。くっきりとした顔だち、なめらかな肌、思わずキスをしたくなる口。肩にかかる栗色の巻き毛は光を浴びて、金色の粉を吹いたようにきらめいている。こんな髪を忘れるわけがない。あの晩の女性の髪は長くつややかな黒で……直毛だった。
 ティナは菫色の目を光らせ、両手を腰にあてがい、ニコと向き合った。「六週間前のあなたには称号がなかったし、兄は少なくともあなたと同じくらいには裕福よ。会社の問題はわたしにとってなんの関係もないわ、どちらの会社であってもね」
 ウエストからヒップにかけての曲線に、ニコは気を取られまいと必死だった。しかも手を腰にやっているため、シルクのシャツに包まれた胸がいやおうなく目に入る。体はヴァレンティナを強く意識していたが、彼は誘惑に屈するような男ではなかった。
「彼女の髪はまっすぐだった」ニコは冷ややかに指摘し、ヴァレンティナがまばたきをするのを見て勝利感に浸った。嘘を見破るなど造作もない。
 そのとき、彼女が笑いながら髪を引っ張ってみせた。「ばかね、ブローという技術を知らないの? ドライヤーがあれば二十分でまっすぐにしてみせるわよ」
 ニコの顔がこわばった。「だからといって、きみだという証拠にはならない」
 彼女が足を一歩前に踏み出した。ぼくを追いつめようとしている。そう思った瞬間、ニコの体に火がついた。距離をさらに縮め、唇を重ねて、彼女との間に飛び交っている火花の正体を体で確かめてみたい。だが、彼には強固な自制心があった。
 ヴァレンティナは顎をつんと上げた。ぼくを見上げる瞳には炎が宿っている。気性の激しい女性だ。かつてはそんな印象はなかった。あのころ、彼女はまだティーンエイジャーで、ぼくが話しかけるたびにうつむいていた。
「あの晩の一部始終を話しましょうか? 大丈夫かって波止場であなたが声をかけてきたときから? それとも、ホテル・ダニエルの部屋の特徴を言ってほしい? あなたが明かりを全部消し、名前も明かさない、顔も見せないと言ったのも、ドレスを脱がしながらキスをしたことも?」
 ヴァレンティナが顔を赤らめ、言葉を切った。ニコは不意に腰のあたりで欲求が渦巻くのを感じた。長年多くの女性とベッドをともにしてきたが、あの晩の女性ほど胸がときめいた相手はいない。あれはまさに一夜限りの関係で、翌朝目覚めたとき、女性の姿はなかった。利用されて捨てられたような感じを持つ一方で、あきらめきれない気持ちもあった。
 お互い名を明かさないと自分から言い渡したにもかかわらず、彼女とはまた会いたいと思った。もっと探ってみたい何かが彼女との間にあった。ただのセックスだとわかっていても、ベッドで楽しめた相手とは何度かつき合うこともある。だからこそ、彼女がホテルを出てからどちらの方角に向かったかとベルボーイに尋ねたのだ。
 立ち去ったのは夜中の二時ごろだったとベルボーイは言った。シルクと羽の仮面をつけ、淡い緑色のドレスを着てロビーを駆け抜けたという。従業員は彼女がゴンドラに乗るところまでは見届けたが、どちらの方角に向かったかまでは知らず、どのゴンドラかも覚えていなかった。
 ゴンドラの船頭たちにきいても、確たる情報は得られなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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