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富豪と灰かぶりの花嫁

富豪と灰かぶりの花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

離婚の条件は、夫を愛する妻を演じること。それは何より難しい演技のはずだった。

捨て子だったニコルは、世界有数の製薬会社バルベリ社で清掃の仕事をしていたとき、社長ロッコに見初められ結婚した。しかし不運にも流産したあと、ロッコの態度は急変する。悲嘆に暮れるニコルを顧みもせず、仕事に没頭したのだ。情熱が冷めれば、身分違いの妻など必要ないのね……。打ちのめされた彼女は家を出た。だが夫は居場所を突き止め、離婚の条件を切り出した。大きな買収案件を成功させるため、愛妻としてモナコへ同行しろ、と。ニコルは条件をのんだ。その芝居が望まぬ情熱に再び火をつけることになるとも知らず。

■これぞ王道シンデレラ・ストーリーの決定版!貧しくともひたむきに生きてきたヒロインは、億万長者の夫との夢の日々から一転、絶望の底へ。別居後、幸せな夫婦を演じるはめになり出席したパーティで、夫と恋仲らしき女優の敵意あふれる視線に耐えかね……。

抄録

 ロッコ・バルベリは怒りが血管を駆けめぐるのを感じて思わず立ち止まった。ふだんは怒りに駆られるようなたちではなく、冷静で計算ずくの男として知られているのに。
 冷徹非情なシチリア男として、感情のかけらさえ顔に出すことはなく、ビジネスのライバルたちからは世界クラスのポーカープレイヤーと恐れられている。それなのに今、コーンウォールの辺鄙な町の小さな工芸品店の前に立ち、煮えたぎる怒りに圧倒されそうになっていた。
 その理由ははっきりしている。彼女のせい、妻のせいだ。ロッコは唇をゆがめた。長らく疎遠だった妻。この店の中に立って花瓶のようなものを入念に吟味している。豊かな黒い巻き毛が背中に流れ落ち、そのせいでほっそりしたウエストと魅惑的な腰のカーブに視線が引きつけられてしまう。彼女は夫の名声にも、夫の献身にもまったく頓着せず、なんのためらいもなく出ていった。
 ドアを押し開けて店内へ入ろうとすると、ドアベルがじゃらじゃらと大きな音をたてた。目を上げた彼女の顔が衝撃で凍りつく。驚きに目が見開かれ、ロッコは一瞬、苦い喜びを味わった。かつてとりこになった美しいグリーンの瞳。彼女は不安げに息を吸いこんで花瓶を下ろそうとしたが、その指は見るからに震えている。よし。ロッコは内心、満足感を覚えた。これでいい。
「ロッコ」ニコルがあえぎながら言うと、喉が引きつるのが見て取れた。かつてあの長く白い首に性急なキスを浴びせたあと、限りなく柔らかな胸へと唇をすべらせたものだ。「いったい……ここで何をしているの?」
 ロッコはしばらく間を置き、小さな店内に雷雲のように立ちこめた緊張感がさらに高まるのを待った。「ニコル、君は離婚申請書を送りつけてきた。そんなことをしたらどうなると思ったんだ? 僕が財産の半分をゆずり渡して、君がその美しい巻き毛を揺らしながら悠然と立ち去るのを黙って見ているとでも思ったのか? それが君の望みだったのか?」
 ニコルが頬をピンクに染め、漆黒の巻き毛を後ろにかきあげた。自分がどう見えるか気にしているのだろうか。その思わせぶりなしぐさを見て、ロッコはふいにこみあげてきた欲望に押し流されそうになった。僕が来るとわかっていたら、彼女はもう少しおしゃれをしていただろうか? 豊かな胸をすっぽり包む白いシャツと色あせたジーンズではなく、もう少し見栄えのする服を着ていたのか?
「もちろん、そんなことは思っていなかったわ」まだ息がはずんでいる。「私はただ……」
「ただ?」強い口調で問い返すと、ニコルがたじろいだ。
「前もって連絡してくれればよかったのに」
「つまり、君が結婚生活を放棄して去ったときのように?」
「ロッコ――」
「それとも、君の弁護士が先週、離婚申請書を送りつけてきたときのようにか?」ロッコは容赦なく続けた。「君は離婚を申し立てようとしているのを電話で知らせてくることもなかった。そうだろう、ニコル? そこで当然ながら僕は、君がサプライズを好む女性だと考えた。だからいきなりここへやってきたんだ。君を驚かせようと思ってね」ロッコは穏やかに締めくくった。
 ニコルはめまいを感じていた。気が遠くなりそうだ。冷酷な非難の言葉が自分に向けられているせいだけではない。怒りに燃える瞳を見つめ、とまどいを覚えていた。ほんの数秒間のうちに頭が混乱し、劣勢に立たされてしまったのはなぜなのか。ロッコ・バルベリとはまる二年間会っていなかったけれど、彼といるだけでこれほど動揺してしまうとは。以前よりもさらにひどい。彼が周囲を圧倒し、足を踏み入れたとたんに室内を支配してしまうタイプの男性だということを忘れていた。忘れていた理由は、忘れることを自分に強いたからだ。かつては愛した男性だけれど、結婚指輪をこの指にすべりこませたとき、彼の頭にあったのは義務感だけだった。
 ニコルは唇を舌で湿した。私たちの関係は最初から破綻する運命にあったのに、より深いものを期待した私が愚かだったのだろう。こんな関係がうまくいくはずがなかった。富豪と貧しい女性のカップルはすばらしい話題になりうるけれど、実際には……。
 二人の不釣り合いな結婚をめぐる大騒ぎと、センセーショナルな新聞の見出しを思い出す。“シチリアの大富豪が清掃員と結婚”そしてお決まりのように“おとぎ話の結婚が破局”というなりゆきをたどった。物語は始まったときと同様、唐突に終わりを迎えた。ニコルはロッコからも、結婚生活からも逃げ出した。そうせざるをえなかったからだ。二人の間の溝があまりにも大きくなり、もうあと戻りはできないとわかっていた。身ごもっていた赤ん坊を失ったとき、二人が一緒にいる理由はもうなくなった。生き延びるためには自由になる必要があった。
 シチリアを出た当初、ニコルは何度も何度も自分にそう言い聞かせた。最初は一分一分が苦痛に感じられ、永遠のように長く思えたものだが、徐々に時がたち、日々が週へ、月へと変わっていった。ロッコの電話には応答せず、手紙にも返事を出さなかった。きっぱりと別れなければ気持ちを断ち切れないとわかっていたからだ。しかし、それはときとして拷問のような苦しみだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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