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異国の花園と籠の鳥

異国の花園と籠の鳥


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・ヘリス(Anne Herries)
 イギリスはケンブリッジに住んでいるが、冬のあいだは夫とともにスペインのジブラルタル海峡に面したマラガのリゾート地で過ごすことが多い。青い海の白い波頭を眺めながら、涙あり笑いありの、ロマンチックな恋物語の構想を練るという。イギリスではすでに三十作以上の著作があり、うち十数冊はハーレクインのミルズ&ブーン社から刊行されている。

解説

あなたがいるこの国が、わたしの居場所……。

いとこのつき添いでスペインへ向かう途中、海賊に襲われたハリエット。連れていかれた奴隷市場で彼女たちを競り落としたのは、主君の命を受け、王子のために花嫁を探していた宮殿長官カシムだった。花嫁の条件は、美貌をそなえた英国人女性。当然、いとこが選ばれた。しかし婚礼の当日、ハリエットは嫌がるいとこを助けるため、花嫁とすり替わり、主君の逆鱗にふれて牢に投げ込まれた。絶体絶命の窮地に陥ったハリエットを救ったのは、カシムだった!市場でわたしを買った憎むべき冷酷な彼が、いったいなぜ?牢から出されて、カシムのハーレムで監視下に置かれることになり、ハリエットは彼のたくましい体と青い瞳に酔わされるがごとく……。

■大人気アン・ヘリスが創り出した、美しき世界観のエキゾチック・リージェンシー!賊にさらわれたのが運の尽き、期せずして異国に売られてしまったハリエット。謎の美男カシムの導きでハーレムに行き着いた彼女に、どんな運命が待ち受けているのでしょうか?

抄録

 マーガレットの上にかがみこんで冷たい水に浸した布でひたいをぬぐっていると、背後で船室のドアがあいた。振り向いたハリエットは自分たちを買った男を見て体をこわばらせた。
「なんの用?」心臓が早鐘のように打ちだす。この人はカリフの代理人として私たちを買ったのだと言っていた。それがこうして姿をあらわしたということは――嫌な予感がする。マーガレットの美貌を目の当たりにして、主君に渡すのが惜しくなったのではないかしら?
「君のいとこの具合を見に来ただけだ」彼はハリエットの不安を見抜いたように眉をひそめた。「私に怯える理由はないはずだ、レディ」
「マーガレットはまだ具合が悪いの。体が熱いし、ひどく汗をかいているわ」
「薬はのませたか?」
「ええ。のんだあとはしばらく落ち着いていたけど、また悪くなって」
 カシムは寝台に近づくとマーガレットのひたいに手をのせた。「熱いな。冷たい水で体をふいてやるといい。熱を下げると聞いたことがある。不調の原因は慣れない食事ではなく熱だったのかもしれないな。もしかしてアルジェに着くまで君たちは船倉に閉じこめられていたのか?」
「ええ。悪臭ふんぷんの息苦しい場所に。あなたのお仲間のせいでね!」
「海賊どもは私の仲間ではない」カシムはなにかを思いだすような暗い目をした。「私も連中に苦しめられたことがある。船倉に比べれば、これから行くところは天国だぞ。君たちは何不自由なく暮らすことができる」
「でも本当の自由は失うことになるんだわ」
「まるで本当の自由を手にしていたかのような口ぶりだな、レディ・ハリエット? 自由が許されていたとすれば、君は例外中の例外だ。私が知っている英国のレディはみな、社会と家族の決めたルールに縛られていた」
「英国に行ったことがあるの?」ハリエットはじっと男を見つめた。肌は日に焼けているが、この顔だちは……。「あなた、英国人ね? どうして中東にいるの?」
「君は質問が多すぎる」カシムの答えと同時に、マーガレットがうめき声をあげた。「別の薬を調合してみよう――終わったら私は出ていくから、体をふいてやるといい」
「ありがとう」ハリエットは湿らせた布でいとこのひたいを冷やした。そしてカシムが新たな薬を入れたカップを持って寝台に近づいてくると、マーガレットの首の下に腕を差し入れて上半身を起こしてやった。「のんでちょうだい、かわいいマーガレット。楽になるから」
 マーガレットは薬をのみほすとぐったりと枕に頭を沈め、目を閉じた。
「あと一日か二日で港に着く」カシムが言った。「航海中は好きなときに甲板に出てもらってかまわない。海に飛びこんだところで私の部下が連れ戻すだけだ。だがなるべくなら、彼らに無駄な時間を遣わせないでほしい」
「マーガレットは泳げないのよ。海賊に避難用の手漕ぎボートを襲われたとき、いっそ岸まで泳ごうかと思ったけどやめたわ。大事ないとこを見捨てるわけにはいかないもの」
 視線がぶつかり、ハリエットは相手の瞳の奥に見慣れない感情が動いたのに気づいた。「いつでも君が守ってやれるとはかぎらないぞ。彼女も大人なんだから、いずれは自分で選択しなければならないときがくるだろう」
「マーガレットは、結婚を申しこんできた男性に会うためにスペインへ行くところだったの。結婚を無理強いされるのが怖いから一緒に来てほしいと泣きつかれたのよ。おじは目の中に入れても痛くないほど娘をかわいがっていたから、マーガレットが嫌と言えば無理強いはしなかったはずだけど。それでもマーガレットは心細いと言って泣くし、私も旅行に出て広い世界を見てみたいと思っていたから、一緒についてきたというわけ」
「おかげで見たくなかった世界まで見てしまったというわけか。だが、これが世界のありのままの姿だ。文句をつけたところでどうにもならないぞ」カシムはそう言うと立ち去った。
 ハリエットは上掛けをはいでマーガレットの脚を冷たい布でぬぐった。次にうつ伏せにさせてローブをめくり、背中をふいてやった。仕上げに袖をまくり上げて腕、顔、首をふく。全身が清潔になるとマーガレットは気持ちよさそうな顔をした。
 ハリエットはしばらくいとこの様子を見守ったあと、寝床を離れて舷窓から外を眺めた。空は真っ暗で、星明かりは数えるほどしかない。ため息と一緒にこみ上げてきた涙を苛立たしげにぬぐってから、いとこの隣にもぐりこんだ。マーガレットは静かな寝息をたてている。疲れたと思う間もなく、ハリエットは眠りに落ちていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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