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公爵のためらい【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

公爵のためらい【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マーガレット・ムーア(Margaret Moore)
 俳優エロール・フリンに憧れ、『スター・トレック』のミスター・スポックに恋をした少女は、やがて謎めいた魅力的な悪漢をヒーローに仕立てたロマンス小説を書くことに夢中になった。カナダのオンタリオ州スカボローに夫と二人の子供、二匹の猫と暮らしている。読書と裁縫が趣味。

解説

たった一夜の絆だったけれど、隠しおおせるはずもなく……。

「こちらはデイトン公爵よ」紹介された相手を見て、ヴェリティは激しく動揺した。10年前、デイトン公爵は社交界で放蕩者の浮き名を流していた。かねがね噂を聞いていたヴェリティの憧れの存在でもあった。そう、あれは公爵とちょうど同じ屋敷に滞在していた日、彼女が家の借金のために無理やり嫁がせられる直前のことだ。最後の思い出にと切なる願いを胸に、公爵の寝室を訪れたのだった。月日は流れたのに、彼は当時と変わらずハンサムで魅力的だ。でも、あの秘密は絶対に知られてはいけない……。彼女は髪色も顔立ちも彼に似た娘の手を引き、その場から逃げ出した。

■ヴェリティはかつて意に染まぬ結婚を余儀なくされ、せめて一夜、憧れの人の腕に抱かれたいと思い余った行動に出たのでした。それから時が過ぎ、初めて会うにしては妙にヴェリティの娘と気が合うデイトン公爵。彼は逃げ出した母娘を追って、自宅に押しかけ……。

*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ヴェリティは床に下りて、上靴を履きながら、娘の無邪気な寝顔をもう一度眺めた。この子は、よく知りもしない男性と過ごした情熱的な一夜の生きた証だ。欲望のままに突き進んだ自分の身勝手さを思い、いつものように恥ずかしさと深い後悔の念にかられる。もしわたしたち母娘に災難が降りかかったら、それはまったくの自業自得だわ。
 しかし、自分の身勝手さを呪うたびにヴェリティはジョスリンのことも思った。公爵がいなければ生まれなかったわが子。ジョスリンがいるから、わたしは自分のとった行動を心底悔やむ気にはなれない。
 彼女はそっと娘を抱き上げ、目を覚まさせないようとなりの部屋へ運ぼうとした。ジョスリンぐらい大きくなった寝ている子どもを運ぶのは楽ではなかったが、なんとかベッドに横たえ、ナンシーも起こさずにすんだ。
 無事に終えたことを喜びながらヴェリティが自分の寝室に戻り、境のドアを閉めて振り向いたとたん、ゲイリン・ブロムニーとぶつかった。
 後ろによろめいた彼女の肩を、ゲイリンがつかんだ。
 ヴェリティはまざまざと思い出した。彼の指の強さを、体に触れる手の感触を。その力強い両腕に抱かれたいという願望を――消し去らなければならない記憶の数々を。
 彼女はあえぎながら身をよじってゲイリンから離れ、必死で落ち着きを取り戻そうとした。
「出ていって!」ほんの数メートルのところにナンシーとジョスリンがいるのを意識して、静かに命じた。
 月明かりが彫りの深い彼の顔を照らし、まるで凶暴な悪霊が目の前に現れたかのように見えた。「それはあまり礼儀正しい挨拶じゃないね。ぼくたちの関係を考えれば」
 ヴェリティはじりじりとドアから離れ、ゲイリンからも離れた。「わたしたちのあいだに関係なんてないも同然だわ」
「ああ、きみは痛ましいほど自分を過小評価しているよ、ヴェリティ」彼は低い魅惑的な声でささやきながら、熱い視線を注いだ。「ぼくはあの夜のことをほとんどすべて覚えている、特にひとり置き去りにされたことはね。そしてきみは、ぼくが朝食に下りていく前にラングリー邸を発っていた」
 ヴェリティはなぜあんなふうに去ったのか説明したい誘惑にかられた。でも、それをして何になるというの?
「出ていってください、公爵。ここにいるのを見られてはいけません」彼女は言ったあと、ナイトガウンしか着ていないことに突然気づいた。
「ぼくがジョスリンの父親だと人に知られたくないからだろう」
 ヴェリティは青ざめて彼を見つめた。
「そうなんだね?」ゲイリンは彼女に近寄りながら容赦なく続けた。「年齢が合うし、あの子はぼくに似ている」
 ヴェリティは彼の横をすり抜け、部屋の奥に向かった。「お願い、出ていって」
「ぼくには自分の子かどうか知る権利があるんだ、ヴェリティ」
「出ていって」彼女は声をひそめて懇願した。「明日の朝、すべて話しますから」
「今、話してくれ」
「もう遅いわ……」
「確かに遅いよ。自分があの子の父親なのかどうか知るにはね」
 彼はヴェリティに迫った。
「ぼくの娘なんだろう?」手をのばし、彼女の肩をつかんでささやいた。「話したくなければそれでもいい。ぼくにはわかる」
 彼はヴェリティを抱き寄せた。こんなことをしてはいけない。その理由はわかっているはずよ。彼女は自分に言い聞かせた。ゲイリンの腕のなかで。
「もっと意志が強くて立派な男だったら、あの夜、寝室に来たきみを追い返していただろう。残念ながら、ぼくは弱かった」ゲイリンのささやき声が熱をおびた。「きみがぼくを弱くするんだ。今でもそうだ」
 ゲイリンはヴェリティにキスした。
 言葉とは裏腹に、彼のキスに弱さはなかった。以前と同じように、あの遠い昔の夜と同じように、有無を言わせず激しく唇を奪い、ヴェリティが力に負けて欲望に身をゆだねるよう仕向けた。
 ゲイリンはなんて魅力的なのかしら! とても危険で、罪深い魅力……。
 でも、そういう危険な誘惑に屈したらどうなるかをわたしは身をもって学んでいる。
 ヴェリティは唇を離し、ゲイリンを押しのけた。「お願い、出ていってください。明日、説明しますから」
 また、嘘をついた。彼とふたりだけで会うくらいなら、飢えた猛獣の洞穴に入っていくほうがましだった。
 ゲイリンの表情がこわばる。「その昔ぼくがどれほどきみに魅力を感じたにせよ、すべて終わったというわけだな」
「あのころのわたしはまだ若くて愚かでした」
「なるほど、マダム、ぼくも同じだ」彼は堅苦しくお辞儀した。「おっしゃるとおりにしよう。話はまた明日の朝、図書室で。九時ではどうかな? あそこならほとんど人は来ないだろう。エロイーズの客のなかに読書好きはおそらくいないからね」
 九時。わたしたちの発ったあと。
 ゲイリンから離れたくて、ヴェリティは強くうなずいた。それからドアに駆け寄り、廊下をうかがった。「今なら出ても大丈夫です」
 背後にゲイリンの気配を察し、ヴェリティはあわてて脇によけて彼を通した。そのとき、わずかに手と手が触れた。
 頑固に出ていけと言っておきながら、ヴェリティは息がつまった。引きこまれそうな彼の目はあえて見なかった。
 もうキスはしないでと言うつもりだった。
 しかし次の瞬間、彼は行ってしまった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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