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運命の指輪

運命の指輪


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェシカ・スティール(Jessica Steele)
 イングランド中部に、七人兄妹の六番目に生まれた。現在はウースターシャーの風光明媚で文化財に富んだ村に夫とともに住んでいる。公務員として働きながら夜の時間を執筆にあてていたが、夫の励ましを得てフルタイムの作家となった。一番の趣味は旅行で、メキシコ、中国、香港……と、取材をかねてさまざまな国を訪れている。

解説

 サビーナが同居している親友のナタリーは、いつも人に裏切られてきた。そのナタリーが、今度こそは本物の愛を見つけたと宣言し、ロッドという青年と二人で、自由な旅へと出発していった。ナタリーがロッドから贈られた指輪は、紛失を恐れて家に置いてある。ある日、息をのむほどハンサムなヨークと名乗る男性が現れ、あの指輪は瀕死の重病で入院している祖母のものだと言い出した。ヨークはロッドの従兄で、ロッドが祖母の指輪を盗み取ったようだ。祖母は、ヨークが結婚したい女性にその指輪をつけてもらい、二人で病院に見舞いに来てくれるのだけを待っているという。ナタリーを裏切ることはできないが、病重い老婦人のことも心配だ。サビーナは問題の指輪をはめ、ヨークの婚約者役を務めるしかなかった。だが事態が複雑に展開し、つらい恋の悩みまで抱えることになるとは……。

抄録

 外で食事をするのは気がまぎれていいかもしれない。ヨーク・マッキノンと、あの忌まわしい指輪以外のことを考えられるだけでもよさそうだ。そう思いながらも、サビーナはヨークの祖母をだまさなければならないはめになったのを気に病んでいた。そのうち午後になってから、はっと気がついた。かんじんの指輪を持ってくるのを忘れていたのだ。
 フロイト流にいえば、意に反することをしなければならないのがいやなあまり、無意識に指輪を忘れてきてしまったのかもしれない。
 仕事に集中しようと努めるかたわら、いらいらして考えた。病院訪問の目的は指輪をはめたところを見せに行くことなのだから、回り道してでもフラットにとりに戻らなければならない。サビーナはヨーク・マッキノンの名刺をとり出し、直通番号に電話をかけた。
「ルイーズ・ページです」昨日も電話に出た秘書だ。
「あのう……ヨークいますかしら?」
「あいにく午後いっぱい外出しております。何か……?」
「あ、いえ、けっこうです」サビーナは電話を切った。やむをえない。遅刻しても仕方がないわ。あのひと、ひとに待たされたことなんかないんじゃないかしら? いっそ病院に行くのをやめてしまおうか。でも、ヨーク・マッキノンはふだんひとに逆らわれたこともないにちがいないから、約束を破りなどしようものなら、かんかんに怒ってフラットにどなりこんでくるに決まっている。目に見えるようだった。それよりは、いやでも病院に行くほうがまだましだ。
 日ごろのサビーナは約束の時間を厳守する代わりに、ひとにもそれを求めるほうだ。だが、またフロイトを持ち出すまでもなく、その日のサビーナの行動は無理もないと言えば言えるだろう。要するに、行きたくないのだ。
 サビーナは五時ちょっと過ぎに会社を出て、ナタリーの指輪をとりにフラットに戻った。そのときすでに、ヨークと約束した時間に間に合わないことはわかっていた。クリス・ドーソンとレストランに行くには服を着替えなくてはならない。どうせ遅れるなら、時間ぎりぎりで病院から帰ってくる場合を考えて、今のうちに着替えてしまおう。暑い一日で汗もかいた。遅れついでに、大急ぎでシャワーを浴びても大した差はないだろう。
 三十分後、淡いレモン色の麻のスーツを着てフラットを出ようとしたところに、電話がかかってきた。サビーナはどうしようかと迷った。ひょっとしてヨークが約束をとり消すためにかけてきたのでは?
 電話は母からで、出かけるのがさらに十分遅れた。急いでいると母に言えば、理由も告げなくてはならない。けれど、こんな話を打ち明けるわけにはいかなかった。隠しごとをしたやましさから、彼女は週末にサリー州の家に帰ると母に約束した。土曜の夜にはオリバー・ロビンズに夕食をごちそうしてあげると約束めいたことを言ってあったが、日曜日に延ばしてもらおう。
 病院の駐車場にはヨーク・マッキノンの姿はなかった。富裕なひとびとのための病院らしく、待合室はゆったりと快適な造りだった。ここにもヨークはいなかった。受付で尋ねれば、ヨークの祖母の名前がわかるだろう。ロッドのことを話したとき、母親同士が姉妹だとヨークは言っていた。マッキノンではないのはわかっているが、母親の実家の名前は見当もつかなかった。
 サビーナが近づくと、パソコンにむかっていた受付嬢が顔を上げた。「ええと、私は……ここでミスター・ヨーク・マッキノンという方と待ちあわせをしている者ですが、もしかしたら……?」
 満面のほほえみが返ってきた。ミスター・ヨーク・マッキノンとは何者か、受付嬢はよく承知しているのだ。「ミセス・フェアファックスの病室においでになりますよ。二〇三号室です」
 病室のドアをノックしようと手を上げた瞬間、サビーナはもう少しでくるりとむきを変え、その場を立ち去りそうになった。ためらっていると、フラットにやってきて詰問するヨーク・マッキノンの姿が目に浮かんだ。サビーナは観念してノックし、中へ入った。
 ベッドのかたわらに座っていたヨークは、さっと立って近づいてきた。ヨークに任せておけば心配はいらないと安心すればいいものを、サビーナの胸中は複雑だった。ヨークはサビーナの腕に手をかけ、唇にしっかりキスをした。
 婚約者を演じなければならないのは初めからわかっていた。それなのにサビーナは突然どきどきしだし、ヨークを押しのけたくなるのをやっと我慢しなければならなかった。このキスはヨークのお祖母さまに見せるためのものよ、と自分に言い聞かせた。実際には軽い挨拶《あいさつ》のキスにすぎないはずなのに、やたらに長く感じられた。ヨークはようやく唇を離した。肌が燃えるようにほてっているので顔が真っ赤なのではないかと思い、サビーナは恥ずかしかった。
 サビーナの目は、たった今触れあったばかりのヨークの唇に吸い寄せられていた。ほほえんでいる唇の形のよいこと。けれど、ヨークの表情は凍りついていた。サビーナは視線をそらした。
「いったいどこに行ってたんだ?」低い声でヨークはなじった。少し離れたところにいるひとには、愛のささやきと映ったかもしれない。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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