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銀の慟哭

銀の慟哭


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: アイス・シリーズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 テロ対策組織のリーダー、イザベル・ランバートは“氷の女王”と噂されるスパイ。今回の使命は、独裁者たちの右腕として悪名高い傭兵セラフィンの身柄を確保し、情報提供と引き換えに安全を保障すること。だが、世界でもっとも危険な男といわれる彼の顔写真を見た瞬間、イザベルに遠い過去の痛みがよみがえった。まだ若く純粋だったころにすべてを捧げ、裏切られた相手、キリアンの顔がそこにあったのだ。不安な思いを抱きながらも、任務を果たすためモロッコへと向かったイザベルに、過酷な運命が襲いかかろうとしていた……。

抄録

「わかったわ」メアリー・イザベルは後部座席に横になった。腕を枕《まくら》がわりにして体を丸め、寒さのことはなるべく考えないようにして目を閉じた。
 座席越しになにかが投げられて再度目を開けると、先ほど後部座席から取った毛布が体の上にのっていた。「これをかけろよ」キリアンは相変わらず不機嫌な声で言った。「寒いんだろ」
「いいわよ、あなたが使って。うしろのほうが広いんだし、あなただって寒いでしょ」
「そんな薄っぺらな服を着ているわけじゃないし、きみほど寒くはないよ」
「薄っぺらな服?」メアリー・イザベルは思わずむっとした。「だって昼のあいだは暑かったんだもの」
「でもいまは寒い。それに、フランスを旅して回るつもりなら、ブラジャーくらいつけたほうが身のためだぞ。いつもそばにいて助けてやれるわけじゃないんだ」
 メアリー・イザベルはさっと体を起こした。恥ずかしさと怒りが、いっぺんにこみあげた。「そんなものつける必要ないわ。洗濯物が増えるだけだもの。だいいち、とくに目を引くような豊かな胸でもないし」
「してくれなければ、こっちが目のやり場に困る」キリアンはつぶやいた。
「え?」
「いや、なんでもない」
 彼女は座席の背に両手を置いて身を乗りだした。「ねえ、急にどうしたのよ。わたしたちは友だちでしょ。あなたにしてみれば、わたしの胸なんてないも同然じゃない」
「プリンセス、僕は男なんだ。女の人の胸にはいやでも目がいく」
「わかったわ。明日どこかの町に着いたら、まっ先にブラジャーを買う。それで満足?」
「いいや」
「キリアン……」
「いいから眠るんだ。僕は外に出てちょっと歩いてくる」呼びとめようとする声は、突然車内に入りこんできた風雨にかき消された。ばたんとドアが閉じられ、メアリー・イザベルは車のなかにひとり取り残された。
 気づくと自分も外に飛びだして、雨の幕を通してかろうじて見えるキリアンのあとを追っていた。雨粒が、まるで石のつぶてのように体に打ちつけている。「キリアン、どこに行くのよ!」メアリー・イザベルは声を張りあげた。
「きみは車に戻れ」夜の闇の向こうから声が返ってきた。
「あなたが戻るなら、わたしも戻るわ」
「メアリー・イザベル、いいから車に戻るんだ」キリアンのうしろ姿は離れていくばかりだった。降り注ぐ冷たい雨に、ろくに目も開けていられない。
 それでも頑固に言いはった。「いやよ。あなたが戻ってくるまで、このまま外にいる」と叫んで声がするほうに歩きだすと、本降りの宵闇のなか、急にキリアンが目の前に現れ、両腕でぐいと体を引きよせられた。
「危ないじゃないか。もう少しで崖《がけ》から落ちるところだったぞ」
 メアリー・イザベルは雨粒に打たれるのもかまわず相手の顔を見上げた。「崖のそばに停めるほうが悪いわ。もっと安全なところに停めるのが普通でしょう?」
 キリアンはその体勢のまま、こちらの背中を車に押しつけるようにして、助手席のドアの取っ手を手探りした。「頼む。車に戻っておとなしくしていてくれ。でなければ、この行為に自分でも対処できなくなる」
「この行為って? なんのこと?」
「これだよ」とキリアンは言い、おもむろにキスをした。
 そのキスは夢に描いた甘い口づけでも、そっと唇に触れるような、やさしいものでもなかった。欲望をむき出しにした、気圧《けお》されるような荒々しく激しい口づけに、メアリー・イザベルは思わず怖《お》じ気《け》づいた。
 両腕はお互いの体のあいだにはさまった状態にある。とにかく体を押しかえそうと、身もだえするようにして腕を抜きとった。もしかしたらそのまま腕を首に回し、体を引きよせて、熱い口づけに応じようとしていたのかもしれない。
 キリアンは助手席のドアを開け、車のなかに押しこもうとした。車のなかにひとりで取り残されるなんてごめんだった。メアリー・イザベルは相手の体にしがみついたまま、狭苦しい車内に倒れこんだ。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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