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冷酷なフィアンセ

冷酷なフィアンセ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供がある。現在、子供たちは独立し、夫と二人暮らし。たくさんの猫と犬に囲まれている。

解説

 リリーは年老いた大叔母に代わって慈善団体を運営しているが、財政状況は厳しく、団体は存続の危機に直面していた。そんなとき偶然知り合った資産家のパオロの途方もない申し出にリリーは当惑しながらも応じざるをえなくなった。慈善団体に資金提供してもらう代わりにパオロの病気の母親を安心させるため、彼の婚約者のふりをすると。嘘をつくのはいや。でも私を頼りにしている人たちのためを思えば……。ただ、リリーはうまく婚約者の役を演じる自信がなかった。ハンサムなパオロがあまりにも魅力的で、その笑顔を見るだけでうっとりしてしまうようでは……。
 ★愛を信じない彼の心を、ヒロインの愛が解きほぐすことができるのでしょうか。彼女の優しくも毅然とした態度や純粋さがとてもキュートです。人気作家ダイアナ・ハミルトン、久々の新作です。★

抄録

「おい! 一時間もシャワーを浴びるやつがどこにいる? ゆでだこになるつもりか?」
 湯気の向こうに激怒したイタリア人男性が見え、リリーは驚きと恥ずかしさでいっぱいになった。すてきなスーツを濡《ぬ》らしてパオロがガラスドアを開け、手を伸ばしてシャワーをとめる。彼はいらだちもあらわな激しい口調で命令した。
「服を着るんだ! 母がすぐに会いたがっている」パオロは大きなタオルをつかんで、リリーに投げつけた。頬をほのかに紅潮させ、唇をきつく結んでいる。
 タオルをつかんだリリーは、突然あることに気づいてぞっとした。生まれたままの姿を、パオロの美しいゴールドの瞳に上から下まで見られてしまった。なのに、彼は平静そのものだ。彼女があわててタオルで体をくるむと、パオロが濡れたジャケットを脱ぎながら出ていくのが見えた。彼は洗面台から指輪を取りあげ、リリーが脱ぎ捨てた服をまたいで寝室に戻った。
「これを着るんだ。急いで」パオロがきつい調子で言うのが聞こえて、リリーはさらに赤くなった。
 パオロはバスルームのドアのそばにある椅子に淡い紫色の細身のドレスを置いて、ふたたび出ていった。レースのショーツとおそろいのブラもある。それもロンドンで買ってもらったものだった。彼の母親が期待するとおりの未来の花嫁という、与えられた役にふさわしい外見を作るために。
 気乗りしないまま、リリーはパオロが選んだ服を身につけた。見事な仕立てのやわらかなシルクの布地はまるで恋人に愛撫《あいぶ》されているようで、彼女は身震いした。
 なにもかもがおかしい。まるで自分とは思えない。こんな服を着るなんて私らしくない。たった二週間を過ごすために私の服に費やされたお金があれば、四人家族が一年は暮らせるに違いない。そう思うと、リリーは愕然《がくぜん》とした。なんという無駄だろう。
 もう限界だ。口をきっと結んだリリーは寝室へと毅然《きぜん》とした足取りで入っていき、いらだちをあらわにしているパオロに向かって宣言した。
「これからはなにを着るかは私が決めるわ。あなたのお金で服を買ってもらったし、あなたの資金と引き換えに私は演技するのかもしれない。でも、私はあなたの持ち物じゃないわ!」
 パオロはぎろりとリリーをにらみつけた。このしゃくに障る理屈っぽい女性に、彼の鼓動は速まっていた。だが、本人はわかっていないようだ。ほうっておいたら、リリーはよだれが出そうな曲線美の上に見苦しいだぶだぶの服を着てだいなしにしてしまうことだろう。彼女はがなりたてるのではなく、むしろ感謝すべきなのだ。これまで隠されていた美しいスタイルをあらわにしてくれるすてきな服を与えたのは、この僕なのだから。
 さっきリリーの裸身をちらりと見たとき、パオロは必死に平静を装った。今またその姿を思い出し、思わず肌に熱いものが走る。小さくかすれた声で彼は言った。「こっちへ来るんだ」
 パオロは背が銀色のヘアブラシをドレッシングテーブルから出し、かたくなに動こうとしないリリーの方へつかつかと歩み寄って、まだ濡れてもつれている髪をとかしはじめた。彼女が動かないように、長い指で顎をしっかり支えていた。
「これからは自分で選んだものを着ればいい」指に感じる顎は壊れそうなほど華奢《きゃしゃ》で、肌はとてもやわらかかった。「だが、今日は急がなくてはならないんだ」そう言って、パオロは言葉を切った。理屈っぽい従業員をなだめるなんて、まるで僕らしくないふるまいではないか。奇妙なことに、声までベルベットのようにやわらかくなっている。咳《せき》払いをして、彼は続けた。「母は将来の義理の娘に一刻も早く会いたがっている。待たせることはできない。着飾ることや外見にこだわることに長い時間をかけたがる女性の気持ちはわかるが」
 パオロのすばらしい体を近くに感じながら、リリーはされるがままになっていた。うっとりと夢見心地でいたが、“将来の義理の娘”という嘘《うそ》を聞いてふいに我に返った。パオロから離れ、小さい体を精いっぱい伸ばして向き直る。彼の前にいると、すぐに私はぼうっとしてしまう。でも、そんなことではいけない。
「私は虚栄心のかたまりみたいなあなたの女友達とは違うわ! だから一緒にしないで!」
「理屈はもういい」いらだちをこらえて、パオロは見事な指輪をリリーの指に戻した。そうはいかないとばかりに、彼女の大きなグレーの瞳が光る。私が喧嘩《けんか》腰でいるうちに母親に紹介すればいい、とリリーは思った。そうしたら、なにもかもが始まる前におしまいになるだろう。感情を偽れない女性を選んだ彼が悪いのだ。
 パオロにとって必要なのは人懐っこい子猫であって、誰彼かまわず噛《か》みつくどら猫ではなかった。こうなったら奥の手を出すしかない、と彼は思った。そして両手をリリーの細い肩に置くと、顔を下げて彼女にキスをした。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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