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和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

著者プロフィール
ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。
イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。
解説
エリザベスはある晩、きまぐれに訪れた仮面舞踏会で、思いがけない人物と出会った。彼女の実家、モスティン家と長年敵対してきたトレヴィシック家の現伯爵、マーカスだ。彼には積年の恨みがある。だがマーカスも、エリザベスとは別の理由で彼女に興味を持った。謎めいた仮面の美女を誘惑したいと思ったのだ。ふたりはそれぞれの思惑を胸に、ゲームで賭をすることにした。チャンスはたった一度だけ。勝てば、望むものはなんでも与えるという条件で……。
抄録
マーカスはベスを見つめたままゆっくりほほえんだ。「本気だよ。どんなゲームがお好みかな?」
彼女もほほえんだ。美しく弧を描いた口もとにまた、えくぼができた。突然マーカスは、さっさと本題に入ってキスしたい、と思った。きわどい作戦だし逆効果かもしれないが、だからこそそそられる。彼はさらに一歩近づいた。ベスは一歩下がった。
「ハザードがいいわ」彼女は冷めた口調で言い、さいころをもう一方の手に放った。「振るのは一度だけ。勝ったほうはなんでももらえるの」
マーカスはためらった。もし彼が勝った場合、彼女が自分自身を賞品として差し出すつもりなのは今の言葉から明らかだ。無償で楽しませてくれるとはなんという潔さだろう。もちろん、あとでつけがまわってくるかもしれないが。別荘、馬車、宝石……。
だが、もし彼女が賭《かけ》に勝ったら……。
「条件はそれでいいが、ぼくが負けたときにきみが何を望むのかを先に聞いておきたい。ぼくには大金は払えない。何を差し出せばいいのかな?」
高価な注文をつけてくるに違いないと彼は確信して待った。今彼女の首を飾っている上等で、しかも趣味のいいグレーの真珠のネックレスよりもはるかに豪華なダイヤのネックレスだろうか。
ベスは香水が香るほど近づいた。彼女の体温であたためられたジャスミンとばらの香りに、マーカスはますます心を乱された。ああ、どんなに代価を払っても手に入れる価値がある。
「お金はいりません」彼女はにこやかに言った。「あなたの世襲財産をほんの少しだけいただきたいの。フェアヘブン島を」
マーカスは目を見張った。ベスがこちらの素性を知っていることが、これではっきりした。まったく途方もないことを言うものだ。フェアヘブン島は祖父から相続した地所のひとつで、時間がなくてまだ訪ねていないが、彼の知るかぎり、ブリストル海峡の中で強風にさらされている小さな島だ。わずかな住民と羊の群れがいるほかは何もない。いったいなぜ、そんな島に高級娼婦が興味を持つのか、わけがわからなかった。実際、まったく価値のない土地なのだ。
彼女に二、三質問して謎を解きたい気がする。その一方では、文句を言う必要はないじゃないか、と香水の香りにじらされながらマーカスは思った。とにかく賭に勝てばいいのだ。たとえ負けても彼女を言いくるめる自信はあった。今は土地や財産について議論するときではない。この腕に彼女を抱きたい。あとのことは弁護士に任せればいい。
「わかった」彼は言い、ゆっくりつけ加えた。「きみはいつも賭けに負けたとき、ちゃんと約束したものを払うのか?」
彼女は初めて顔をそむけた。「わたしはふだん賭はしません。あなたこそどうなの?」
マーカスは笑った。だれも彼に向かってそんな思いきった質問をしたことはなかった。しかし、なんといっても先に誠意を問いただしたのは彼のほうだ。そしてベスはまだきちんと答えていない。
「約束を破ったことはない」彼は言った。彼女の手を取ると、少し震えているのがわかった。すべすべした肌だ。その手を裏返し、てのひらにキスした。「きみはまだぼくの問いに答えてないぞ」
ベスの目に怯《おび》えたような表情がちらっと浮かんだが、それは現れたときと同じようにすぐに消えた。彼女はつんと顎を上げた。
「賭けたものはさしあげるわ――もしも負けたら」
マーカスはうなずき、さらにベスを引き寄せて、胸に彼女のてのひらを当てた。
「前払いでもらいたいと言ったら?」彼は少し乱暴にきいた。
「あなたの負債が増えるだけでしょうね、勝つという保証はないのだから」彼女はにらみつけた。「その危険を冒してもかまわないのなら――」
かまわない、と彼は即座に決心した。頭を傾け、彼女の唇に唇を重ねた。
経験豊かなマーカスは、すぐにすべてを奪おうとはしなかった。たとえ娼婦が誘惑されたがっていても、なりふりかまわず飛びかかるほどうぶではない。彼女が緊張を解いて応じてくれるまで、壊れ物を扱うようにそっと抱き、やさしい試すようなキスをした。ベスはやわらかく、いい香りがして、初々しかった。腕の中で震えさえした。それは錯覚に違いなかったが、あまりにもかわいらしくて、マーカスは自制心を失いそうになった。情熱を込めてキスすると、彼女は一瞬ためらったあとおずおずと応じ、少しだけ体を押しつけてきた。彼の全身にいっきに欲求がこみ上げ、そのすさまじさに何も考えられなくなった。やさしくしようという気持ちも忘れ、彼女を激しく引き寄せる。しかし遅すぎた――彼女はまたしてもうまくかわした。マーカスは文句を言うのをぐっとこらえた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
彼女もほほえんだ。美しく弧を描いた口もとにまた、えくぼができた。突然マーカスは、さっさと本題に入ってキスしたい、と思った。きわどい作戦だし逆効果かもしれないが、だからこそそそられる。彼はさらに一歩近づいた。ベスは一歩下がった。
「ハザードがいいわ」彼女は冷めた口調で言い、さいころをもう一方の手に放った。「振るのは一度だけ。勝ったほうはなんでももらえるの」
マーカスはためらった。もし彼が勝った場合、彼女が自分自身を賞品として差し出すつもりなのは今の言葉から明らかだ。無償で楽しませてくれるとはなんという潔さだろう。もちろん、あとでつけがまわってくるかもしれないが。別荘、馬車、宝石……。
だが、もし彼女が賭《かけ》に勝ったら……。
「条件はそれでいいが、ぼくが負けたときにきみが何を望むのかを先に聞いておきたい。ぼくには大金は払えない。何を差し出せばいいのかな?」
高価な注文をつけてくるに違いないと彼は確信して待った。今彼女の首を飾っている上等で、しかも趣味のいいグレーの真珠のネックレスよりもはるかに豪華なダイヤのネックレスだろうか。
ベスは香水が香るほど近づいた。彼女の体温であたためられたジャスミンとばらの香りに、マーカスはますます心を乱された。ああ、どんなに代価を払っても手に入れる価値がある。
「お金はいりません」彼女はにこやかに言った。「あなたの世襲財産をほんの少しだけいただきたいの。フェアヘブン島を」
マーカスは目を見張った。ベスがこちらの素性を知っていることが、これではっきりした。まったく途方もないことを言うものだ。フェアヘブン島は祖父から相続した地所のひとつで、時間がなくてまだ訪ねていないが、彼の知るかぎり、ブリストル海峡の中で強風にさらされている小さな島だ。わずかな住民と羊の群れがいるほかは何もない。いったいなぜ、そんな島に高級娼婦が興味を持つのか、わけがわからなかった。実際、まったく価値のない土地なのだ。
彼女に二、三質問して謎を解きたい気がする。その一方では、文句を言う必要はないじゃないか、と香水の香りにじらされながらマーカスは思った。とにかく賭に勝てばいいのだ。たとえ負けても彼女を言いくるめる自信はあった。今は土地や財産について議論するときではない。この腕に彼女を抱きたい。あとのことは弁護士に任せればいい。
「わかった」彼は言い、ゆっくりつけ加えた。「きみはいつも賭けに負けたとき、ちゃんと約束したものを払うのか?」
彼女は初めて顔をそむけた。「わたしはふだん賭はしません。あなたこそどうなの?」
マーカスは笑った。だれも彼に向かってそんな思いきった質問をしたことはなかった。しかし、なんといっても先に誠意を問いただしたのは彼のほうだ。そしてベスはまだきちんと答えていない。
「約束を破ったことはない」彼は言った。彼女の手を取ると、少し震えているのがわかった。すべすべした肌だ。その手を裏返し、てのひらにキスした。「きみはまだぼくの問いに答えてないぞ」
ベスの目に怯《おび》えたような表情がちらっと浮かんだが、それは現れたときと同じようにすぐに消えた。彼女はつんと顎を上げた。
「賭けたものはさしあげるわ――もしも負けたら」
マーカスはうなずき、さらにベスを引き寄せて、胸に彼女のてのひらを当てた。
「前払いでもらいたいと言ったら?」彼は少し乱暴にきいた。
「あなたの負債が増えるだけでしょうね、勝つという保証はないのだから」彼女はにらみつけた。「その危険を冒してもかまわないのなら――」
かまわない、と彼は即座に決心した。頭を傾け、彼女の唇に唇を重ねた。
経験豊かなマーカスは、すぐにすべてを奪おうとはしなかった。たとえ娼婦が誘惑されたがっていても、なりふりかまわず飛びかかるほどうぶではない。彼女が緊張を解いて応じてくれるまで、壊れ物を扱うようにそっと抱き、やさしい試すようなキスをした。ベスはやわらかく、いい香りがして、初々しかった。腕の中で震えさえした。それは錯覚に違いなかったが、あまりにもかわいらしくて、マーカスは自制心を失いそうになった。情熱を込めてキスすると、彼女は一瞬ためらったあとおずおずと応じ、少しだけ体を押しつけてきた。彼の全身にいっきに欲求がこみ上げ、そのすさまじさに何も考えられなくなった。やさしくしようという気持ちも忘れ、彼女を激しく引き寄せる。しかし遅すぎた――彼女はまたしてもうまくかわした。マーカスは文句を言うのをぐっとこらえた。
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