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あの夏、湖面にまばゆく レイクショア・クロニクル

あの夏、湖面にまばゆく レイクショア・クロニクル


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: レイクショア・クロニクル
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

 少女時代、太めで分厚い眼鏡をかけていたオリビアは冴えない思春期を送った。祖父母が経営するキャンプ場に毎夏やってくるコナーと会うのが唯一の楽しみだった。容姿端麗でなんでも器用にこなす彼に恋をしていたのだ――コナーが彼女の心を奪い、傷つけ、捨て去ったあの夏までは。時が過ぎオリビアは今、見違えるほど美しく変貌を遂げ、室内装飾家として活躍していた。老朽化したキャンプ場を改修したいという祖母の願いを叶えるため、彼女は苦い思い出の残る地へ向かう。そこに予期せぬ再会が最悪の形で待っているとも知らず……。

抄録

「ありがとう」オリビアは男とはしごにはさまれた位置から体を引いて言った。「あなたが来なかったらどうなっていたかわからないわ」彼のミラーグラスに自分の顔が映っている。紅潮した頬や風に乱れた髪が。オリビアは汗ばんだ手をショートパンツにこすりつけた。「ええと、あの……」言いかけて口ごもる。もしかしたら“彼”ではないのかもしれない。新鮮な空気と日ざしがわたしの頭を混乱させているだけかもしれない。努めて淡々とした口調で平静に言葉をつぐ。「わたしに何かご用かしら?」
「用があるのはそっちだと思うけど。うちの留守番電話にメッセージを入れたよね? 建設工事のことで」そう言いながら彼はサングラスをはずし、ヘルメットを脱いだ。
 ああ、どうしよう、とオリビアは心につぶやいた。彼であってほしくはなかったのに。
 彼はオリビアに視線をすえたまま手袋の指を一本一本引っぱってとった。そしてじっと目をこらした。「前に……会ったことがあるかな?」
 冗談でしょう? ほんとうにわたしがわからないの?
 オリビアが答えずにいると、彼は向きを変え、慣れた手つきでするすると旗を揚げた。旗は帆のようにたちまち風をはらんで翻った。
 オリビアは動くことも忘れて彼を見つめていた。呼吸も思考も停止していた。胸を締めつけるあの目を見ただけで、カレンダーのページが次々と引きはがされるように過去に引きもどされていた。いま彼女が見ているのは気楽なバイク乗りではない。彼のアイスブルーの目の中に、遠い日の少年を見ている。
 それもただの少年ではない。“あの”少年だ。オリビアの悩み多き思春期において、何につけても初めての経験をさせてくれた少年、要所要所で重要な役割を果たした少年――オリビアが初めて恋した相手だった。初めて恋し――初めて失恋した相手。
 火がついたように体が熱くほてりだした。昔の恋人を“古い火炎《オールド・フレーム》”と呼ぶわけがいま初めてわかった。いつも誰かがやけどするのだ。
「コナー・デイビス」オリビアは九年ぶりに彼の名をはっきりと口にした。「ここであなたに会うとはね」頭の中では死んでしまいたいと思っている。この場でいますぐ死んでしまいたい。それができたらもう生きているかぎり何も望みはしない。
「それはぼくの名前だ」コナーは言わずもがなのことを言った。
 わたしが忘れるわけはないのに。少年時代の彼から予想されていた男の姿がいま目の前にあった。コナーはもう二十八になっているはずだ。わたしが二十七歳だから。ひょろっと背が高いばかりだったのに、いまではたくましい筋肉がついている。小生意気な笑いかたときらめく目は昔と変わらないが、GIジョーみたいな顎のラインは一日分の髭《ひげ》が伸びて柔らかなイメージになっている。それに彼はいまも――オリビアは幻ではないことを確かめようとしてまばたきした――そう、いまも耳にシルバーの小さな輪っかのピアスをしている。十三年前にオリビアがその手であけた穴に。
「で、きみは……」コナーは左手の甲に目をやった。そこに紫のインクで何やら殴り書きしてあるようだ。「きみはオリーブ・ベラミーだね?」
「オリビアよ」自分が過去を共有した人物としてコナーを思い出したように、彼にも自分を思い出してほしかった。大きな意味を持った存在として、自分の未来を変えるほど影響力の大きかった相手として。それに、キャンプ場から家に帰される危険をおかしてまで彼の耳にピアスの穴をあけてあげた友だちとして。
「ああ、失礼。オリビアだったね」コナーはあからさまに鑑賞するような目でオリビアを見つめた。彼女のむっとした表情を誤解したらしい。「メッセージを聞いたとき、手近に紙がなかったんでね」手の甲の紫の文字を示して説明する。それからふと顔をしかめた。「前に会ったことがないかな?」
 オリビアは短くかすれた笑い声をあげた。「冗談でしょう? ええ、冗談に決まってるわ」わたしったらほんとうにそんなに変わってしまったのかしら。まあ、そうね、変わりはしたわ。十年近い歳月がたったんだし。何キロも体重を落としたし。ブラウンの髪はハニーブロンドになったし。眼鏡はコンタクトにかえたし。でも、それにしたって……。
 コナーは無言でオリビアを見つめるばかりだ。やはり全然わかっていないのだ。「ぼくたちって知りあいだったっけ?」
 オリビアは腕組みしてコナーをにらみ、彼が覚えていそうな言葉を思い起こした。彼らが互いに口にした初めての嘘《うそ》を。「わたしはあなたの新しい親友よ」そしてコナーの日焼けしたハンサムな顔から血の気が引くのを見守った。
 美しいブルーの目が細められたかと思うと、はっとしたように見開かれた。喉仏を上下させて唾《つば》をのみこみ、ついで咳払《せきばら》いする。
「信じられない」コナーは低くつぶやいた。無意識のように片手をあげ、耳の小さな輪っかに触れて。「ロリーなのかい?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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