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時を旅した花嫁

時を旅した花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー時を旅した花嫁
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 スーザン・アボットは結婚式を5日後に控えていた。相手は州内でも評判の、裕福で家柄もいいエリート弁護士。だが、スーザンは執拗な疑念を振り払うことができなかった。愛情の感じられない相手と、このまま結婚していいのかしら。思い悩む彼女の前に、ジェイクと名乗る男性が現れた。スーザンの名づけ親から、祝いの品を預かってきたという。渡されたのは古いウェディングドレス。なぜこんなものを? いぶかりながらもドレスに強く惹かれ、そっと袖を通してみる。すると眼前で急に七色の光がはじけ、スーザンは気を失った……。

抄録

 ジェイクが歩み寄ると、スーザンは頭を少し後ろに傾け、澄んだグリーンの目でにらみつけてきた。彼は昔から背の高い女性に弱かった。スーザン・アボットはまさに条件にぴったりだ。おそらくそれだけのことなのだろう――ぼくは単に彼女の容姿に惹《ひ》かれ、欲望をかきたてられているのだ。
 彼はスーザンがあとずさりするかどうか試したくなり、数センチの距離まで近づいた。彼女は大きく震える息をついた。だが一歩も引かず、肩をそびやかした。「離れて、ジェイク」無理やりとりつくろったのがはっきりわかるかたい口調だ。「お願い」
 ここでスーザンにふれるのは人生最大の間違いだろう。ジェイクはまだ、ゆうべ彼女の腕をつかんだときの肌の感触を覚えていた。ウエディングドレスを破いたときに見えたクリームのように白い肌が忘れられなかった。だが彼は、自分はなにかをしなかったことを悔やむより、してしまったあとで悔やむ男だと知っていた。
 ジェイクはスーザンの髪に手を差し入れ、ほっそりした首の後ろにあてがった。彼女は息をのんだ。しかし、逃げだすそぶりは見せない。ただ、大きな目で用心深く彼を見つめ、やわらかそうな淡いピンクの唇を開いただけだった。スーザンの首筋で脈が激しく打っているのがてのひらに伝わってくる。彼はもう少し近づき、体と体がかすかにふれあうくらい身をかがめた。
「怖いものすべてから逃げだすことはできないんだよ」ジェイクはささやいた。
「怖くなんかないわ」熱のこもった声だ。「とにかくあなたには消えてほしいだけよ」
「ぼくがどうして消えなきゃいけないか、教えてくれるかい?」
「わたしがそう望んでいるからよ。あなたにはわたしの願いを聞く義理はないけれど、友好のしるしとして、それくらいしてくれてもいいでしょう?」
「なぜぼくに消えてほしいんだ? ぼくのなにがきみの心を乱すんだい?」
 スーザンは答えなかった。
「じゃあ、ぼくが教えてあげよう」ジェイクは言った。そして、彼女の口に唇を押しつけた。
 その気にさえなれば、スーザンは簡単に逃げだせる――それはふたりともわかっていた。ジェイクは彼女のうなじに片手を添え、もう一方の手は手首を軽く握っていただけだからだ。だが、スーザンはその場に立ちつくし、されるがままにキスを受けた。
 やがて、スーザンのひんやりしたてのひらが肩に置かれた。その手に力がこもったとき、ジェイクは激しい欲望に貫かれて体を震わせた。裸の胸にスーザンをぎゅっと抱きしめる。この情熱の高まりを、どれだけ彼女を欲しいと感じているかを、伝えたかった。スーザンの唇はいちごとコーヒーの味がした。もっと味わいたい。彼女のすべてを味わいつくしたい。この場で服を脱がせ、たわんだ狭いベッドに押し倒したい。
「口を開いて」彼は唇を重ねたままささやいた。
 スーザンが目を見開き、飛びすさるようにジェイクから離れた。引きとめる暇はなかった。彼がどれほどそうしたかったとしても。気づいたときには、彼女は戸口へと向かっていた。岩のようにかたく凍りついているジェイクを残して。
 スーザンは振りかえらなかった。野生の動物に追われてでもいるように外へと駆けだしていく。ジェイクは彼女が崩れた階段で足を踏み外すのではないかと心配になった。ようやく足が動いて窓辺へ近づいたときには、スーザンはすでに彼の知らない道をたどって森へ向かっていた。やがて、初夏の緑が彼女をのみこんだ。
 ジェイクは悪態をつきはじめた。ののしりの言葉を吐くのも、彼が持つ多くの才能のうちのひとつだ。二十以上の言語で、しかも創意に富むののしりの言葉をまくしたててみせると、世界じゅうのどこでも男たちには感心される。スーザン・アボットに逃げだされた今、その才能にいっそう磨きがかかった。誰かがそばで聞いていて感嘆してくれないのが残念なほどに。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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