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幸せという名の契約

幸せという名の契約


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 夫を亡くし、働きながら一人で息子を育てているコリンは、亡き親友の夫ラファエロから突然呼び出しの手紙を受け取った。用件がわからないまま指定されたホテルに出向くと、親友が彼女宛に遺した手紙を渡される。驚いたことにそこには片親になった両家の子供たちに温かい家庭を与えるためラファエロと結婚してほしいと書かれていた。たった今、初めて会った男性と結婚する? いくら彼がくらくらするほど魅力的でも、愛のない結婚はできない。ところが、ラファエロは平然と便宜結婚を提案した。感情は抜きで、この結婚を一種の契約と考えればいいと。

抄録

「あいにく違うんだ」ラファエロはにやりとした。夜の闇《やみ》をぱっと明るくするような笑みだった。
「私も彼と同じのにするわ」コリンは言い添えた。「それから、息子にアップルジュースを」
 料理がくるまで、ラファエロはマシューの相手をしてランチョンマットの塗り絵を手伝い、コリンと話をした。といっても、コリンはあまり話にのらなかった。まだ混乱していたからだ。
 今夜がこんな展開になるとは予想もしていなかった。でも、思ったよりうまくいっている。マシューは上機嫌でランチョンマットに赤いクレヨンを塗りたくったあと、ちゃんとチキンを食べた。ラファエロはコリンの不安をよそに、まるで年じゅうビニール張りのボックス席に座って安っぽいハンバーガーを食べているようにくつろいでいる。だが、コリンにすれば、こんな光景は現実にはありえなかった。
 高級スーツに身を包んだイタリアの大実業家がフライドポテトをケチャップにつけて食べ、それを楽しんでいるように見えるなんて。その彼と結婚することを考えて私がうれしくなっているなんて。それに、マシューだって、いつまでお行儀よくしていられるかしら? もうボックス席でもぞもぞし、テーブルを離れてもいいかきこうとしている。
 ラファエロが気づいて言った。「マシューは飽きてきたようだね」
「そうみたい」
「それなら、食べおえたことだし、もう出よう」
 ラファエロは手早く勘定をすませると、雨の中を、待っているリムジンまで二人を導いた。
「こういう天気は困りものだな」コリンが暖かく快適な車の中に乗りこむのに手を貸しながら、ラファエロはぶつぶつ言った。
 私たちのこともそう思っているんじゃない? コリンはもう少しでそう言いそうになった。マシューが車に乗るなり座席と運転席を隔てるガラスの仕切りの方へ這っていき、べとべとの指を押しつけようとしたからだ。コリンがとめると、マシューは大声でわめいた。
「本当にごめんなさい、ラファエロ」コリンは小さな反逆者をようやくチャイルドシートに座らせ、あやまった。
 だが、ラファエロは気にするようすもなく手を振った。「気にしないでくれ、コリン。なんの害もないんだから」
「気にしないわけにはいかないわ。私、あなたにマシューを気に入ってほしいの」
「気に入らない理由がなにかあるかい? マシューは自分を取り巻く世界に男の子らしい興味を感じているんだ。そうでなかったら、かえって僕は気になるよ」
 しかし、タウンハウスに帰り着いたとき、ラファエロのとった行動は言葉とは裏腹だった。彼はマシューを抱きあげて玄関まで運んでくれたものの、コリンが中に入ってケーキでもどうかと勧めると、あっさり断った。
「ありがとう《グラツィエ》。だが、もう失礼するよ。シチリアに戻る前にすることがたくさんあるのでね」ラファエロはコリンの両の頬に軽くキスをすると、大急ぎで帰っていった。
 私たちはどうなるのだろう? コリンはとまどいながらラファエロのうしろ姿を見つめた。このまま結婚話を進めるの? それとも取りやめるの? 私は暗黙のテストに落ちたのかしら? やはり彼の妻と彼の娘の母親の代役には失格なの?
 翌日も、その翌日も、ラファエロから連絡はなかった。残念なのか、ほっとしているのか、コリンはよくわからなかった。ラファエロと同じように、自分も彼のことを忘れようと努めた。冷静に考えれば、こんな話がうまくいくはずがない。次の段階に進む前に彼がそれに気づいてくれてよかった。このなりゆきに少しでも落胆しているとすれば、たぶん彼に一瞬惹《ひ》かれたからだろう。男性に興味を抱いたのは久しぶりのことだ。だから、彼を頭の中から追い出すのがこんなに大変なのに違いない。
 ラファエロとはもう二度と会うことはないとあきらめかけたとき、彼は一月末の突風とともにコリンの生活に舞い戻ってきた。今回は前もって電話をよこしたので、夕方遅くに彼が戸口に姿を現したときにはコリンも心の準備ができていた。最初の訪問から三日後のことだった。
「こんばんは《チャオ》」ラファエロは風に乱れた姿で狭い玄関ホールに立ちはだかり、またコリンの両頬にさっと冷たいキスをした。「これを持ってきたから、あとで」
“これ”とは冷やしたクリュクのボトルだった。
「どうして?」
「僕たちの契約の成立と来る結婚を祝って」
 コリンは急にこみあげてきた喜びをなんとか抑えつけて言った。「あなたは契約を白紙に戻したんだと思っていたわ。考え直してシチリアに帰ったんだと」
「君たちを連れずに?」ラファエロはとまどった顔になった。「僕たちは合意に達したんじゃなかったのかい?」
「合意に達したわ。でも……」
「どうして僕の気が変わったと思ったんだい?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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