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永き夜の終わりに

永き夜の終わりに


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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解説

20年の暗闇に光をくれた奇跡――その陰には、恐るべき秘密が!ケンドラの過去が明かされる、絶賛シリーズ第4弾。

生まれつき盲目だったケンドラは、最先端の手術によって視覚を得た。奇跡を起こしてくれた医師と10年ぶりの再会を果たした直後、彼は何者かに連れ去られてしまう。ケンドラは、一流犯罪コンサルタントのアダムとともに行方を追うが、捜査中、ある男の他殺体を発見する。そして被害者もまた、ケンドラに視力を与えたプロジェクトに参加していた。すべての真実を明らかにするためケンドラは自身を餌に黒幕をおびき出そうとするが、その行動がアダムの怒りと激情に火をつける。ついに二人は、固く守ってきた一線を越えてしまい……。

抄録

「ぼくが恋しくなった?」いきなり映画スターのような笑顔で尋ねる。白いコットンパンツ、青いシャツが、アイスブルーの瞳を引き立てている。強烈な存在感には会うたびに圧倒される。
「そう思う?」
「単なる希望だよ。ぼくがきみのことを恋しがっていたのは確かだから」
 ケンドラは眉を上げた。
「疑っているようだね。ぼくはずいぶん気を遣って、きみに干渉しないようにしたつもりだった。だが、半年前の仕事を最後に、きみはFBIや警察やあの事件を思い出させるすべてから手を引くと宣言した」リンチは自分の胸を叩いた。「当然ながら、その‘すべて’にはぼくも含まれていた」
 含まれていたわけではない。手を引きたかったのはリンチとの関係そのものだった。いっしょにいると、彼の世界に引きずり込まれて、思考も行動も操られそうだったから。
「そうだ、あのビキニモデルのことを忘れてたわ」ケンドラは家を見上げた。「今もいっしょ?」
「ここにはいない」
 ケンドラが見つめると、リンチは反射的に身構えた。彼らしくない。「何かあったのね」
「まあ、そういうことかな。アシュリーはアメリカを離れた」
 ケンドラは目を丸くした。「あなたの魅力はたいしたものね。数カ月いっしょに暮らしただけで、相手が悲鳴を上げて逃げ出してしまうなんて」
「きみも辛辣だな。彼女はヨーロッパの仕事が増える一方で、やっと帰国できたと思ったら、今度はぼくがアメリカにいない。すれ違いが続いてね。今、ローマで暮らしているよ」
「残念ね」
 リンチは肩をすくめた。「スペインにいる間にマルベーリャで週末をいっしょに過ごした。離れていても、楽しむ方法はあるさ」
「そうでしょうとも。もうちょっとで同情するところだった」
 リンチはにやりとした。「同情してもらうほどのことじゃない」
「あなたじゃないわ。アシュリーがかわいそうだと思って」
「きみに一度会わせたかったよ。会えばきっと好きになっていた」
「カタログの水着姿の見開き広告はとても魅力的だったけど」
「性格もいい。気立てがよくて」
「性格もいい」ケンドラは繰り返した。「そこに惹かれたわけね」
「ぼくの別れた恋人のことを根掘り葉掘り聞きに来たわけじゃないだろう?」
「それも楽しいけど、FBI支局にいっしょに行ってもらいたいと思って」
 長い間リンチは無言で見つめていた。「きみの口からそんな言葉を聞くとは思っていなかった」
「わたしもよ」ケンドラは苦い顔をした。「こんなことになるなんて……」
 リンチが玄関を指した。「とにかく、入って。話を聞かせてもらおう」
 ケンドラは彼のあとから、弧を描く小道を通って家に入った。リンチがドアを閉めると、ケンドラは黒っぽい家具やタイルの床を見回した。趣味が合うわけではないのに、ここに来るとなぜか落ち着く。肩の荷をおろしたような気がする。
「きみはこの家が好きだったね」リンチが微笑んだ。「ここではリラックスできるようだ」
「リラックスできる場所はたくさんあるわ」
「だが、ここほどじゃないだろう」
 たしかに、認めたくはないがそのとおりだ。「格納式防弾シャッターやモーションセンサーや防犯カメラがないとリラックスできないなんて、ちょっと悲しいけど」
「そうかな。こういう設計にしたから落ち着けるんだ」
「雇われ諜報員の悲劇ね。長年のうちに数えきれないほどの敵をつくってしまった」
「きみはそうじゃないと?」
「わたしの敵は死んでいるか、そうでなかったら刑務所にいるもの」
「うらやましいかぎりだ。それでも、外界との間に貫通不能のバリアを張る必要は認めるだろう?」
「そんなふうに考えたことはないわ」
「いや、考えたはずだ。きみがしてきたことを考えたら、それぐらいの用心はしたほうがいい。きみにも心の平穏が必要だよ」
 心の平穏。
 ケンドラは目をそらした。それを望んでいないわけじゃないけれど、今は無理だ。ウォルドリッジの無事を確かめるまでは。
「今はその余裕がなさそうだね」リンチは探るように顔を見ると、一歩近づいた。「話してごらん」
 ケンドラはためらった。そのために訪ねてきたのに、土壇場で決心がつかない。リンチに協力を頼んだら、もう後戻りはできない。ずっと避けてきた道に足を踏み入れることになる。どこにつながっているか見当もつかない道に。
 リンチが目をのぞき込んできた。「さあ、話して」
 気が変わらないうちに話してしまおう。ケンドラはウォルドリッジとの再会、謎めいた言葉、そして、彼の失踪を早口で説明した。
 聞き終えると、リンチはケンドラの腕に手を置いた。「そんなことになっているとは知らなかった。できるかぎり協力する」
「ありがとう」ケンドラは腕を引くと、上着を脱いだ。
 リンチが目を輝かせた。「そうだ、それでいい。とにかく、くつろいで」
 ケンドラは冷ややかな視線を向けると、彼に上着の袖を見せた。「早合点しないで。ウォルドリッジが泊まっていた部屋の床に、得体の知れない液体が落ちていたの。上着の袖にしみ込ませてきた」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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