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誘惑のワルツを伯爵と

誘惑のワルツを伯爵と


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイシー・マイケルズ(Kasey Michaels)
 ニューヨークタイムズのベストセラーリストに二十以上の執筆作品が載った実力派作家。夫とのあいだに四人の子供がいる彼女は、アメリカロマンス作家協会やロマンティックタイムズ誌の数々の賞の受賞者でもある。

解説

社交界デビューを控えた花の蕾に、放蕩伯爵は目を留めた――華やかなりしロンドンを舞台に、恋の駆け引きが始まる!

生まれてすぐ母に捨てられ、数シリングで通りすがりの男に売り渡されたモーガン。その後ベケット家の養女として育てられた彼女はレディのマナーをたたき込まれ、いまでは類い稀な美しさで男たちを虜にしていた。かくして辺鄙な田舎町を出て華々しく社交界デビューを飾る日がやってきたが、そのロンドンへの道中、モーガンは紳士的で親切なエイルズフォード伯爵と出会う。見目麗しく紳士的な彼の態度に心許すも、実は彼こそ、社交界きっての悪名高い放蕩者!モーガンを見た瞬間、伯爵はなんとしても彼女を落とそうと決め……。

抄録

 イーサン・タナーは女性の声を耳にし、右手を見た。そして即座に同感だと思った。確かに美しい。彼はおもしろがりつつも魅せられて、若い女性がこちらへ向かってくるのを見つめた。男性のような自信に満ちた大股で歩いてくるが、それでいて彼女は目をみはるほど女性的だった。
 そして、生き生きしている。長身だがぎすぎすしたところは少しもない。庭にそよ風が吹き渡り、彼女が一歩踏みだすたびに長い脚にスカートがぴったりと張りついて、腿の形があらわになる。
 イーサンはふいになじみのある胸のざわめきを覚えた。
 彼はこの異国風な美女の観察を続けた。彼女の装いは、小柄で青い瞳のブロンド向けの最新流行のものとは大きく異なっていた。
 黒髪をきれいに梳きあげ、うなじのところでシニョンにまとめてあるのだろう。
 そうであってほしい。
 男なら誰しも、彼女をベッドに横たえる前に、そのシルクのような髪が裸の胸と背中を包む姿を見てみたい。小粋にかぶった緑の|前立てつきの筒型軍帽《シヤコー・ハツト》から肩までひとすじの髪がこぼれていて、端整な顔のなめらかな白い肌を撫でていた。
 彼女が近づいてきても、イーサンは観察を続けた。自分が菓子屋の窓に鼻を押しつけている腹ぺこの間抜けのように見えるかもしれない、などとは考えもせずに。
 翼のような形の黒い眉の下の、類いまれなくすぶった灰色の瞳は、太古からの官能の神秘のすべてをほのめかしているようだ。高い頬骨が異国風な印象を醸しだしているのだろう。大きくふっくらとした唇はかすかな笑みを浮かべている。
 彼女の乗馬服は人目を引かずにはおかないみごとなものだったが、どんな仕立て人でも自分の作品がこんなにも引きたてられ、とびきり慎ましく、同時にとびきり奔放に見えるとは、夢にも思わないだろう。
 すべてを総合すれば、とイーサンは結論を下した。この娘は“原罪”そのものだ。彼は大いにアダムに共感した。
 イーサンは自分がこの娘に対してそんな詩的な印象を抱いたことに驚いたが、彼女の容姿に強く惹かれているのは意外ではなかった。この娘は男心を引きつけるように作られているのだ。そして、彼はやっと気づいたのだが、彼女は露骨に彼を無視していた。
「アレハンドロ、おまえはほめられているぞ。幸せ者め」イーサンは静かに言った。「レディにお辞儀をしろ」
 依然、立派な馬以外はほとんど目に入っていないモーガンは、馬がこちらへ向かってきて、ゆっくりと優雅に左脚を曲げ、右脚を伸ばして頭を下げると、立ち止まった。
「まあ、なんて賢くてハンサムな子かしら!」モーガンはまっすぐ馬に近づき、手袋をした両手でその鼻面をはさみ、耳のあいだにキスをした。「名前はなんていうの?」
「アレハンドロ」イーサンが答えた。「くそっ、少々馬に嫉妬してしまうな。ほら、立て、このおべっか使いめ」
 アレハンドロは再びすっと立ちあがって、ハンサムな顔をイーサンに向け、歯をむきだしてにやりと笑ったような顔をした。
 モーガンは遠回しのお世辞を真剣に受け止めることも、悪態に怒ることもなく、いかにも楽しそうに笑った。自分の容貌は心得ているし、妹の前でも言葉づかいなど気にしない兄たちに囲まれてベケット・ホールで育ってきたのだ。「彼はまるであなたの言うことがわかっているみたい」
「もしそうだとしたら、僕より優位に立っているな」イーサンはなおもこの目の覚めるような美女を見つめていた。装いも豪華なとびきりの美女は|付き添い人《シヤペロン》もつけず、見知らぬ男と話すのにも一切ためらいはないようすだ。
「これはアンダルシアン? 絵を何枚か見たことがあるけれど、実物を見るのは初めてよ」
 モーガンは持ち主と話すため、やっとアレハンドロから目を離した。そして彼を見た瞬間、なにを話すつもりだったか、そもそもなにか話すつもりだったかさえ忘れてしまった。
 ひたすら、彼を見つめた。まるでその瞬間まで、男性を見たことがなかったみたいに。
 まず彼の瞳が彼女を引きつけた。ほぼ直線の茶色の眉の下に、濃いまつげに縁取られた切れ長の緑の瞳。その目はおもしろがっているようでもあり、同時に心を明かさぬようでもある。目尻の笑いじわだって本心からか、それ以上人をよせつけないための賢明な取り繕いなのか。
 彼の鼻には気品があった。鼻をこんなふうに形容するなんてモーガンは今まで思ってもみなかったが、この鼻はまさにそういう感じだ。まっすぐでかすかにふくらんだ小鼻の下にはとびきり……興味をそそる唇がある。耳までが完璧で、ぴたりと頭にくっついていて、その耳が見えるのはダーク・ブロンドの髪が少しだけしわのある額からぴったりきれいに後ろに撫でつけられて、シャツの襟をかすめているからだ。
 彼は引きしまった筋肉質の体を一見さりげなく、襟元の開いた白いシャツに黒い革のベスト、灰黄色のスウェード革のズボンに膝までの乗馬用ブーツに包んでいる。
 モーガンの兄たちだって、ベケット・ホールで同じような服装をしていた。でも、この人は違う。この装いは……危険だ。この人が着ると危険な香りがするのだ。
 モーガンは今まで男性を前にして萎縮したことなどなかった。当然ではないか。男たちのほうが彼女の前では萎縮してしまうのだから。
 しかし、この男性は違う。彼は彼女が今まで出会った中でも、いちばん男っぽい男だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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