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スペインの奇跡 愛と復讐の物語

スペインの奇跡 愛と復讐の物語


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・リクエスト愛と復讐の物語
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 あのリンダ・ハワードをして“絶妙な会話のセンスといい、個性豊かな人物設定といい、読者をストーリーに引き込むすべを心得ている”と絶賛せしめた実力派。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともにアラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』は元CIAエージェントのヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

 派兵先のスペインで水浴びに出かけたセバスチャンは、ピラーというスペイン人の若い女に剣を突きつけられたうえに、服を盗まれそうになった。もめているところへ男があらわれ、セバスチャンを殺そうとする。ピラーの口添えで命は助かったものの、男の手で顔に醜い傷をつけられた。プライドを打ち砕かれ、セバスチャンは復讐を誓う。そして一年後、再びスペインの地を踏んだ彼は、宮廷での舞踏会でピラーとあの男に遭遇した。今が復讐のときとばかり、彼は一人で庭に出たピラーのあとを追った。
 ◆ “復讐から始まる物語”――愛情と憎しみのはざまで揺れ動く主人公たち。運命に翻弄される二人を描いたドラマチックなストーリーです。

抄録

「逃げて」女は言った。
「断る」
 セバスチャンはズボンを肩にかけ、ふたたび女の腕を取って、馬上の男から目を離さないようにしながら、彼女を引っぱって川から遠ざかった。見るかぎり、男は武器を持っていないようだ。だからこそ、女は下着姿のセバスチャンに、逃げろなどと言うのだ。男が武器を持っていて、じゅうぶんな援護を受けられるとしたら――。
「ほんとにばかね」女は低い声だが、強い口調で言った。
 セバスチャンは驚いて女のほうを向いた。きみの夫かとセバスチャンがたずねたとき、彼女はちがうわと答えた。あのときと同じ皮肉を込めた口調だ。女は男が捜しに来ることを最初から知っていたにちがいない。
 さっき川の向こう側の尾根からいなくなった男たちが、川のこちら側の土手に沿って馬で近づいてきた。彼らは近くの浅瀬で川をわたったようだ。近くに浅瀬があることも知っていたのだろう。女もきっと知っていたのだ。それがわかると、命を懸けてまで川の深みをわたってくる先頭の男の行動が、ますます理解できなくなった。
 だが、そんなことはどうでもいい。先頭の男は深い川をわたり、男の仲間は浅瀬をわたり、どちらもセバスチャンのすぐ近くまで迫っているのだ。はさみうちか。まったくうまい作戦だ。ウェリントン将軍もこの作戦で数多くの勝利をものにした。
 急に少なくなった選択肢が稲妻のように頭にひらめいた。二年のあいだ厳しい戦いのなかで研ぎ澄まされた兵士の勘で、それらの選択肢はすべて使えないとセバスチャンは思った。
 もちろん一発目の銃声で、イギリス軍の野営地は騒がしくなるだろう。だが、セバスチャンの仲間が事の重大さを認識して、すぐに助けに来るかどうかはわからない。
「彼女を放せ」
 男がスペイン語で命じた。セバスチャンはイベリア半島に来てまもなくスペイン語を覚えたので、男の命令は理解できた。セバスチャンはその命令には従わず、男の胸に銃口を向けて狙いをつけた。男は馬をとめた。馬の体からはまだ水が流れ落ちている。
 男はつばの広い黒い帽子を目深にかぶっていたが、すぐ近くにいるセバスチャンにはその顔がはっきり見えた。男の目は、色は女の目と同じ黒だが、その表情は女の目とはちがって冷たく、くすんでいる。人間らしい心を感じさせない目だ。
 兵士のなかでもっとも神経が太いと言われてきたセバスチャン・シンクレアでも、男の目をのぞき込んで思わず身震いした。セバスチャンはさっき水に浮かんでいたせいで体が冷えたからだ、と自分に言い聞かせ、押し寄せる漠然とした不安を打ち消した。
「彼女はぼくが守る」セバスチャンは男に伝わることを願いながら英語で言った。
 ほんの一瞬、男の黒い瞳に怒りが浮かんだのが見えた。それから、男は疲れきって震えている馬の背にまたがったまま、その怒りよりもはるかにぞっとするような笑い声を張りあげた。
「おまえが守るだと?」男はセバスチャンを頭のてっぺんから爪先まで眺めた。「ということは、彼女はおれが考えていたよりも愚かな女だ」
「彼を行かせて」女は言った。「彼はこのことにはなんのかかわりもないのよ」
「おまえの言うことなど信じられないね」馬上の男は言った。
 セバスチャンの背後から別の馬上の男たちが土手の斜面を下りてくるのが聞こえた。セバスチャンは拳銃を高く掲げて、銃口が彼らの先頭に立つ男の心臓に向けられていることがはっきりわかるようにした。だが、男たちはそんなことで下りる速度をゆるめることはなかった。セバスチャンの目の前の男は仲間のほうを見ようともしない。
「わたしが彼の服を盗もうとしたの」女は言った。「彼はなにも知らないわ。ほんとよ」
「そいつは自分の身が危険だということぐらいわかっている」
「この人はあなたになんの危害も加えないわ」女はそう言うと、セバスチャンの手から腕を引き抜いた。
 それから彼女は手にしていた剣を返そうと、セバスチャンに差しだした。剣と拳銃の両方を持っていれば、馬上の男のところに戻る女を引きとめる理由はなくなってしまう。彼女がセバスチャンを助けようとしているのは明らかだったが、セバスチャンはこれまで女性に守ってもらったことはなかったし、目の前の女に守ってもらうつもりもなかった。
「彼女はそう言うが」セバスチャンは口を開いた。「ぼくはきみに危害を加えるつもりがじゅうぶんある。この女性はぼくの保護下にある。彼女はきみといっしょに行きたくないそうだ」
「ばかな男だとは思ったが、これ以上ばかなことはしないほうがいい。彼女がなにを望んでいるかはおれにはどうでもいい。おまえのことも、どうでもいい。さあ、来るんだ、ピラー。おまえのおかげで、時間をむだにしてしまった」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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