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あの頃、憧れは遠くに レイクショア・クロニクル

あの頃、憧れは遠くに レイクショア・クロニクル


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: レイクショア・クロニクル
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

 ベーカリーを経営するジェニーは祖父母が遺した家に独りで暮らしていた。ある日、不運にもその家が火事で焼け落ちた。すべてを失い途方に暮れる彼女を見かね、警察署長のロークが、しばらく彼の家に住んでもいいと申し出た。ジェニーは昔、ロークに憧れていたが、彼はいつもそっけない態度をとり続けた――親友の訃報の悲しみに耐えられず、一線を越えてしまったあの夜を除いては。以来9年ものあいだ、ずっと互いを避けてきたというのに……。心にわだかまりを抱えながらも、気づけばジェニーは彼の申し出にうなずいていた。

抄録

「誰だって褒め言葉は必要だよ。僕は子どものころ、ずっとそれを求めていた」
 珍しいことだ。ロークが昔の自分を語ることはめったにない。「だからお父さんと仲よくするのはあきらめて離れたわけね」
「どうして離れたなんて思うんだ? 何かを目指して歩きはじめたとも言えるだろう」
「例えば何を目指して?」
「家族が僕に求める人生ではなく、僕自身が求める人生」
「手に入った? これがあなたの求めていた人生?」
「これが僕の手に入れた人生だ。みんなそういうものさ」ロークは背を向け、その話は終わった。ジェニーはほっとした。あまりにも立ち入った話になりかけて、そこまで踏みこんでいいのか自分でも確信が持てなかった。
 ジェニーはロークが見せてくれたとおりに防具を片づけ、銃を掃除した。手順どおりに掃除するのを、ロークがうなずきながら見守った。
 作業が終わったとき、ロークが尋ねた。「今日のこともコラムに書くのか?」
 不意打ちを食らって、ジェニーの頭に浮かんだ出来事はただひとつだった。銃を構える姿勢をロークが直してくれたとき、体にまわされた彼の腕の感触。でも、そんなことを活字にするつもりはない。「お料理のコラムに射撃練習の話は合わないでしょう」
「回顧録なら合うんじゃないかな」
 ジェニーは首にマフラーを巻いた。「本を書きたいなんて言わなければよかった」
「どうして? 僕は読みたい」
 彼の書棚にある、ビニールに入ったままの本と同じ運命にならないかしら?「家族経営のベーカリーの話よ。どうしてそんなものが読みたいの?」
「たぶん、ラストが知りたいから」
「ラストなんて、まだ考えてもいないわ」
「考えるとしたら、どうなりそう?」
「そんなのわからないわよ」
「どうして?」
「もっと時間が必要だわ。何週間とか何カ月とか」今は自由な時間がありすぎることが問題だ。いざ自由を手にしてみると、何をすればいいのかわからないのだ。
「冗談だろう。誰だって、どんなラストにしたいか考えてるものだよ」
「そうなの? あなたも?」ジェニーはジャケットのファスナーを閉めた。
「まあね」
「どんなラスト?」
「いつか話すよ」
 いつの間にかふたりは足を止め、寄り添うように立っていた。駐車場のナトリウム灯が橙《だいだい》色の光でふたりを包んでいる。ジェニーはロークの体温を感じた。見上げると、彼はジェニーの唇に見とれていた。キスするつもりだわ、と思ったとたん、体じゅうの骨が溶けてしまいそうになった。キスしてほしい。でも、怖い。でも、してほしい。
 ためらいと欲望が、顔ににじみ出したにちがいない。ロークはジェニーの腕をつかみ、しわがれた声でささやいた。「ジェニー……」
 ぼやけた光の中でジェニーはロークを見つめた。恐怖がこみあげてきた。溺《おぼ》れていく……私は今、ロークに溺れかけている。もがく私に襲いかかる波の音まで聞こえる。だめ。うまくいくわけがない、わかりきっている。結局は傷つけ合って、ロークは身を引き、私は再起不能になって永遠にこの町に閉じこもる。
 こんなに間近で、こんなまなざしで彼に見つめられると、何も考えられなくなる。「私たち……話し合わなくちゃいけないわ、ローク」
 ロークがかすかに苦笑した。「もうたっぷり話し合っただろう」
 彼は本当にそう思っているように見える。これ以上、話し合うべきことは何もない、と。
「私はあなたのガールフレンドたちとは違うわ。気軽にあなたのベッドにもぐりこむ気はないから」
「そんなことは頼んでないよ」ロークが言った。「だいいち、君はもう僕のベッドにもぐりこんだじゃないか」
「ひとりでね」
「君の望みでね」そう言うとロークはさっさと車に近づき、ジェニーのためにドアを開けた。
 ジェニーはロークをにらみながら車に乗りこみ、言われる前にシートベルトを締めた。シートが冷たくて体が震えた。凍えるような厳しい夜。今は真冬だ。日中もどんより曇り、雪は深く、いつか春が巡ってくるとは信じられない。太陽はどこに行ったのだろう。
 ロークが運転席に座ってエンジンをかけたとき、ジェニーは言った。「約束、私は忘れないから」
「なんの約束?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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