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秘密の情熱

秘密の情熱


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

17歳で両親をなくしたあと、ルーシーは自活の道を探ろうと秘書養成所に通い、語学力を磨いて、必死で生きてきた。しかし従姉の死後に相続した、崩れかけのコテージに居座る老人からコテージの修理を要求され、途方にくれていた。唯一の財産のフラットを売却する以外、お金は工面できそうもないのだ。そんなとき、先日パーティで出会った富裕な実業家ナイアルとでくわす。一目で彼に惹かれた私の心を見透かしたように、横暴にも唇を奪った男。だが噂でルーシーの窮状を知る彼に、なんとコテージを買い取ると言われた。しかも食事に誘われるとは……。いったいなぜ?彼には一緒に住んでいる美しい恋人がいるというのに。

■魅惑の大富豪との初対面で、品定めするように無遠慮な視線を向けられ、身じろぎしたヒロイン。後日、彼と再会しますが……。野性味あふれる情熱的なヒーローとの恋を描く、大スター作家ペニー・ジョーダンの90年代の話題作をお楽しみください。

抄録

 家に帰り着くと、真っ先にディスカバリーが目に入った。それはルーシーの小型車のそばにとまっていた。ルーシーはびくっとして立ち止まった。ナイアル・キャメロンが車から降りてくる。逃げ出そうにも手遅れだった。彼はもうルーシーを見てしまった。
 ルーシーは気を強く持ち、頭を高く上げて彼のほうへ歩み寄った。
 彼は無言のままルーシーのジーンズとセーターに目をやり、次に顔をじっと見た。涙の跡を見られてしまったにちがいない。
 そう思うとルーシーはいっそう傲然とあごを突き出し、彼をにらんだ。
「ダンと話してきたところだ」
「あらそう。なんの話だったのかしら。私を首にしろとでも頼んでいたの?」
 彼の顔に怒りが広がるのを見て取って、ルーシーは溜飲を下げた。
「彼が君の状況を説明してくれた」ナイアル・キャメロンは冷ややかに言った。「それによると……」
「それによるとなんなの?」ルーシーは皮肉を込めて彼を遮った。「私があなたが言ってくれたような欲で太った地主ではなかったってこと?」
 ルーシーは怒りを隠そうともしなかった。
「私はあなたの伯父さんを追い立てる気もないし、あのコテージを売る気もないわ。たとえあれが売れる代物でも。今の状態ではとても無理ですけど」
「確かに。実際のところ……」
「ええ、実際のところいったいなんのご用? 高潔で気の弱い伯父さんの欲張りな要求を突きつけにでも来たの?」
 ルーシーはまくし立てた。そんな自分に驚き、ぞっとしながらも止まらなかった。人にこんなふうに突っかかるなんて生まれて初めてだった。
「あなたとエリック・バーンズの関係を見抜けなかったとは我ながら驚きだわ。すぐ相似点に気づいたはずなのに。あなたと彼はそっくりですものね」
 ナイアル・キャメロンが息を吸い込むのを聞き、ルーシーは彼が本当に怒ったと思ったが気にもしなかった。よくもあんなことを言ってくれたわ! 心は悔し涙を流していた。心はずたずたに傷ついていた。けれど、決して彼にはそれを見せまい。
「ちょっと待ってくれ」
 彼が歩み寄ってきた。怒りをみなぎらせた彼の目を見てルーシーは急に怖くなり、体をこわばらせてあとずさった。彼がむんずと腕をつかんだ。
 怒りに駆られた男に手を触れられるのも、意思に反して捕まえられるのも初めてだった。ルーシーは恐怖に我を忘れ、めちゃくちゃにもがいた。
「おとなしくしたまえ」
 ナイアル・キャメロンはそう言うなりルーシーをぐいと引き寄せた。男の体臭と怒りと力がルーシーに迫った。
 ルーシーは思わず手を上げ、力いっぱい彼の頬を打った。打った瞬間、てのひらがじんとしびれた。
 ばしっという音でルーシーははっと我に返った。恐怖や怒りより狼狽におそわれた。取り乱していたとはいえなんということをしてしまったのだろう。
 謝らなくては……。ルーシーは惨めな気持でそう思った。彼はまだしっかりと腕をつかんでいる。恐る恐る顔を上げると、彼の目は怒りでぎらぎらしていた。
「このままではすまさないぞ」
 彼は一瞬のうちにルーシーの両腕を後ろにねじり上げ難なく片手で押さえ込むと、もう一方の手でうなじをつかんだ。
 ルーシーは彼が何をする気なのか予測する余裕もなかった。とにかく早く謝らなくては。彼の目を見上げたとたん、心臓が止まりそうになった。
「いや、やめて……」
 必死にもがきながらやっと出したかすれた声は、乱暴なキスに封じ込められた。
 ルーシーはショックと屈辱でぶるぶる震えた。私を懲らしめようというのだ。私を辱めようとしているのだ。唇がちぎれそうな荒々しいキス。だが情熱のかけらもないキス。彼の怒りに押しつぶされ、窒息しそうだった。ルーシーは気分が悪くなり、めまいがし、気を失いそうになった。するといきなり彼が唇を離した。
 ルーシーは傍目にもわかるほど震えていたが、それを隠すことも忘れていた。込み上げる涙が喉をひりひりさせていた。
 彼が手を離したのでルーシーはおびえた目を彼に向けたままあとずさった。
 彼がののしり声をあげた。ルーシーはびくんとし、すくんだ動物のように動けなくなった。たちまち彼の手が伸びた。
 ルーシーは凍りついたようになり、触らないでと叫ぶことすらできなかった。
 彼の顔が近づいてくる。冷たい怒りまかせのキスが迫ってくる。ルーシーは胃がむかついた。ところがそっと重ねられた彼の唇はとても温かく、うっとりするほどデリケートな感触だった。
 うっとりですって! これはどういうこと? ルーシーは何がなんだかわからなくなった。彼は合わせた唇をそっと動かした。頭がぼうっとしていく……体から力が抜けていく……。逃げるのよ。今なら逃げられる。心の隅をそんな考えがかすめた。でも、失敗したら彼はまた乱暴をするんじゃないかしら。このままじっとしていたほうがいい。けれど息をしないわけにはいかなかった。息をするためには口を開けなくてはならない。口を開いたとたんぞくっとした。唇がこすれて感じやすくなっているから、だから……だからこんなふうに感じるんだわ。こんなに体が震えるのも、目を閉じたくなるのも、もっと彼に体を寄せたくなるのも……。
 はっとしてルーシーは彼の腕から逃れ出た。彼は引き戻さなかった。彼のキスにうっとりするなんて信じられない……信じられない……ルーシーはあえぐように息を吸い込んだ。頭がどうかしてしまったんだわ。そうとしか思えない。
 彼が何か言った。だがルーシーは身を翻し、耳をふさぐようにしてフラットのほうへ駆け出した。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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