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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

悪魔のキスに魅入られて

悪魔のキスに魅入られて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

この婚約は偽りのもの。なのにキスと情熱は本物だった。

私があの傲慢な大富豪の新恋人ですって?ふと目に飛びこんできたゴシップ記事に、エリーは憤慨した。デリック・ジェイムソン──あらゆる女性を虜にしてしまう魅力的な大企業のCEOは、エリーにとっては憎むべき敵なのだ。彼女の弟を泥棒扱いし、解雇した張本人なのだから。すぐさまデリックを訪ね、真相を確かめようとしたエリーは、弟を救いたければ偽装婚約の契約書にサインするよう、逆に迫られる。なぜ婚約者のふりをしなければいけないの?馬鹿げているわ!異議を唱えようと開きかけた唇は、一瞬にしてデリックに奪われ、エリーはまるで魔法にかかったように陶然としてしまい……。

■異色の経歴を持つ人気作家、ヘレンケイ・ダイモンがいよいよディザイアに降臨!コンテンポラリーだけではない多岐にわたる著作を次々とベストセラー入りさせ、2018年には『The Fixer』でRITA賞を受賞した実力派が描くロマンスにご期待ください。

抄録

「それほど簡単な話じゃないわ」
「簡単な話さ」
「お互いのことを知らないもの」
 デリックが眉をひそめた。「この前もそんなことを言っていたな。繰り返すようだが、これはロマンスではなく、仕事の契約だ」
 エリーは彼と一緒にソファに腰かけた。「あなたはそう言うけれど、私の知り合いには本物の恋人同士だと信じてもらう必要があるはずよ」契約書を取りあげ、ページをめくってから指さす。「ここよ。見て」
 デリックはわざわざ見ようともしなかった。「契約書の内容は把握している」
「それなら承知しているはずよね。私たちが一緒に暮らすことになっていると」
「我が家は大きい」デリックの視線が、急な引っ越しに備えて彼女が用意した段ボール箱に向けられる。
「私たちが出会ってから一緒に過ごした時間は一時間にも満たないわ」
「寝室は別だ」
 まるで問題はそこだけだと言わんばかりだ。
「でもあなたは、私に婚約者のような振る舞いを期待しているんでしょう?」
「そうだ」
「ちなみに今の言い回しは、この契約書の二十章からの引用よ」エリーは契約書を振ってみせた。
「僕たちにはお互いにこれが必要だ、エリー。きみは弟を助けたいんだろう。それに仕事の問題だって、僕なら解決できる」
「私に仕事をくれるつもりなの?」
 エリーはとっさに、支払いの問題や住まいを失うかもしれない不安について考えた。自分にとって、このアパートメントは聖域だ。安全な場所を失うかもしれないと考えただけで動揺した。
「そうだ。僕の婚約者としての仕事をね」
 まるでフルタイムの仕事みたいな言い方だ。
「周囲の人が信じるわけがないわ」
 再びデリックが近寄ってきて、彼女の両腕をさすった。あたたかな手でやさしく。「なれそめは、きみの弟をめぐる言い争いだと言おう。そして火花が散ったと……情熱の」
「今、‘情熱’と言ったの?」
 あとずさりするどころか、彼は身を乗りだしてきた。「弁護料は不要になる。きみの弟は適切な治療を受けて将来の見通しが立つ。きみはもろもろの支払いが滞る心配もなくなり、我が社の株主も愚痴をこぼさなくなる」
「あなたの言い方だとなんだか合理的に思えるわ」エリーは現実的な人間だが、弟に嘘をつくという問題を含め、この計画は何もかも現実的とは言えない。
「実際に合理的だからさ」
「弟は激怒するでしょうね」“激怒”ですめば、まだましかもしれない。
「僕を信頼してくれ。周囲の人たちだって、すぐにこの関係を受け入れてくれるさ」
 その言葉は懇願のように響いた。他人に助けを求めることなどしないはずのデリックが、こうして頼んでいるとは。
 そう気づいたとたん、エリーの胃はとんぼ返りをした。これほど間近にいると、彼の体から放たれる熱まで感じられた。
「いくらなんでも、お芝居で情熱の火花を散らすなんて無理だわ」かすれた声で言う。
「僕たちに芝居をする必要があるか試してみよう」
 デリックが頭をさげて彼女の髪に手を滑らせた。彼の指がエリーのうなじをもみしだき、引きしまった唇が彼女の口の上をさまよう。デリックは彼女の顔を見つめたあと、一瞬ためらってから唇を重ねた。そのまま、唇と唇をこすり合わせた。まるで誘惑するかのように。
 男らしい香りがエリーを包みこみ、彼の指が彼女の指と絡まる。ふたりの体は三十センチも離れていなかったが、次の瞬間にはデリックがさらに身を寄せてきた。愛撫がキスに変わった。欲望に満ちた濃厚なキスへと。ふたりのあいだに情熱がみなぎる。愛撫と彼の唇の感触が誘惑の証だった。
 デリックにしっかりと抱き寄せられると、エリーは我を忘れそうになった。全身を焦がす欲望に駆られ、いつしか腕をあげて彼の太い首に巻きつけていた。そのままたくましい体にもたれると、デリックがあとずさりした。
「そうだ」荒い呼吸のせいで厚い胸板が上下している。「よし、いいぞ」
 彼女の頭にはもやがかかっていた。「いいぞ?」
「ああ。今のはすばらしかった」彼がエリーの体を放す。
「すばらしかった?」
「そうだ。僕たちは芝居で火花を散らすことができると確信できた」デリックが部屋のなかを行ったり来たりし始めた。「さっそくデートを始めよう。人前で。ふたりで一緒にいるところを見せるんだ」うなずいて、一方的にまくしたてる。「そして一週間後にきみが僕の家に越してきてから婚約を発表する」
「早すぎるわ」
 エリーは今、考えることもできなかった。キスのせいで理性が吹き飛び、彼のネクタイを引き抜きたいと思うありさまだ。
「でも、きみは荷づくりの用意ができているようだが」
「とにかく座らないと」彼女はソファの肘掛けに腰をおろした。唇に指先を走らせないよう必死でこらえる。
「パーティも開こう――」
「だめよ」まったく、デリックはすでに何もかも計画ずみなのだ。
「普通の婚約パーティだ。盛大なものではないし、クリスマスパーティみたいに派手でもない」
 少し時間がかかったものの、理性が戻ってきた。そして、疑念も。「今はクリスマスどころか三月よ。それにあなたの言う“普通”がどんなパーティか不安だわ……」
「希望者は全員招待しよう」
 全員が後日、事の顛末やふたりの破局の理由を疑問に思うに違いないが、その部分は無視するつもりらしい。かまわない。客がデリックの友人である以上、彼の問題だから当人が解決すればいい。とはいえ、エリーには無視できない問題がひとつあった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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