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指輪のゆくえ ベティ・ニールズ選集 24

指輪のゆくえ ベティ・ニールズ選集 24


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュベティ・ニールズ選集
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ベティ・ニールズ(Betty Neels)
 イギリス南西部のデボン州で子供時代と青春時代を過ごした後、看護師および助産師としての教育を受けた。戦争中に従軍看護師として働いていたとき、オランダ人の男性と知り合って結婚。以後十四年間、夫の故郷オランダに住み、ベティは看護師、夫は病院事務と、ともに病院で働いた。イギリスに戻って看護師の仕事を退いた後、よいロマンス小説がないことを嘆く女性の声を地元の図書館で耳にし、自ら執筆を決意した。1969年、「赤毛のアデレイド」を発表して作家活動に入る。穏やかで静かなロマンス、その優しい作風が多くのファンを魅了した。2001年6月、惜しまれつつ永遠の眠りについた。彼女が生みだした作品は百三十以上にも及んでいる。好きな映画は『逢いびき』(英1945年)、尊敬する人物はウィンストン・チャーチルだったという。

解説

冷たくされても、片思い。胸が苦しいのに、片思い。

看護師のチャリティはオランダを旅行中、急病患者を助けた。そこにたまたま居合わせた医師はどこか惹かれる男性で、チャリティはのちのちまで彼のことを忘れられなかった。とはいえ、名前も知らないその人とまた会えるはずもないけれど。心にめばえた淡い恋をあきらめていたチャリティだったが、仕事で訪れたオランダの病院で、思いがけずその男性――エフェラルド・ファン・テイレンと再会を果たす。けれど、彼の態度はひどく無愛想で、そっけない。また会いたいと夢にみるほど願っていたのは、私だけだったんだわ。チャリティの心は曇った。それが、つらい片思いの始まりだった……。

■本作は穏やかな作風で癒しをくれる大スター作家ベティ・ニールズの傑作の初再版です。ベティがお好きな方には、大きな愛で心を潤してくれる作家レベッカ・ウインターズや、優しさで包みこんでくれる涙の作家シャロン・サラもおすすめです。

*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品と同じ内容となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ミスター・ブカチェクは五日後に退院することになった。彼の回復はめざましく、すべての検査で満足のいく結果が出た。ただ、今でもときおり頭痛を訴えることがあるという話をチャリティから聞くと、教授は眉をひそめた。
「病気の再発でなければいいが。手術のときには、その形跡はなかった。どんな些細な症状でもいいから、気がついたら僕に連絡してくれ。君はあと二週間、ハーグに滞在するそうだね」
 つまり、教授はハーグにいるミスター・ブカチェクを訪ねるつもりはないのだ。チャリティは突然、もっと彼に会いたいという強い衝動に駆られた。しかし、そんな機会があるとは思えなかった。
 ところがその予想はくつがえされた。翌日の午後、チャリティは教授と顔を合わせた。天気のいい日で、彼女は白いノースリーブのワンピースを着て、ショルダーバッグを肩にかけて一人で街を散策していた。まだ午後の早い時間で、彼女は歩道の端に立ち、街を見て歩くか、それとも博物館へ行くか迷っていた。
 するとふいに、教授が隣に現れて尋ねた。「どこかへ行くのかい?」
「いいえ……まだ決めていないんです」
「だったら、僕に少しオランダを案内させてくれ」
 教授の車は縁石にとまっていて、チャリティは気がつくと彼の隣に座り、車は走りだしていた。
「私は本当に……」しばらくして、チャリティは口を開いた。「あなたと一緒に行くと言ったのかしら?」
 教授は笑った。「いや。だが、不意打ちはいい作戦だろう。そう思わないかい?」
「ええ……ご親切はうれしいのですが、私は五時半には仕事に戻らなくてはならないんです」
「まだ二時だ。時間はたっぷりある」
 車はすでに街を出て高速道路を走っていた。そして、ある村に着くと、狭い田舎道へ入った。
「ヴェヒト川だ」教授が説明した。「土手沿いに立ち並ぶ古い家で有名な川さ。十七世紀に裕福な商人たちが建てた家に、今もその子孫が住んでいるんだ。川も家々も、まるで絵のように美しいよ」
 本当にそのとおりだった。とくに、こんな天気のいい日には。車の往来はほとんどなく、川は太陽の光を受けて輝き、その両側に古くてすてきな家が立ち並ぶ光景は平和そのもので、チャリティは思わずため息をついた。
「なんて美しいのかしら。こんなところに住めたらすてきでしょうね」
「ユトレヒトへ通うには便利なところだ」教授は言った。「だが、週末や休日には込み合う。なにしろ観光地だからね」
 分かれ道に来ると、彼は右にハンドルを切った。
「ルーネンという村だ。ここでひと休みしよう」
 川岸のすてきなカフェで紅茶を飲みながら、教授はオランダについて説明した。
「君の滞在が短いのが残念だ」彼はさりげなく言った。「だが、もちろん君は早くイギリスに帰りたいんだろうね。じきに結婚すると聞いたよ」
 病院内で噂話が広がるのは、オランダでもイギリスでも同じだ。もっと慎重になるべきだった。そう思いつつ、チャリティはそっけなく言った。「あなたがゴシップに耳を貸すとは思いませんでした」
 教授はかすかに眉を寄せた。「ゴシップ? 僕は部下の看護師たちに対して父親的な関心を持っているだけさ」
 あなたはちっとも父親らしくなんかないわ。途方もなくハンサムで、自信に満ちた男性だもの。そんな言葉が思わず口をついて出そうになったが、チャリティはそれを抑えこんだ。「この前の晩は、まったく父親らしくは見えませんでしたが」
 笑ってはいても、教授のグリーンの瞳には火花が散っていた。「僕たちに気がつくほど、君が僕に興味を持ってくれたとは光栄だ。だが僕は、看護師たちに対して父親的な関心を持っていると言っただけさ」
「私はあなたに興味を持ってなんかいません」チャリティは横柄に言った。
「それは残念だ」教授はかすかにほほえんだ。「その小さなケーキを食べてごらん。おいしいよ」
 チャリティは気まずい思いでケーキを食べた。ともかく最低限の礼儀だけは守らなくては。「ここへはよくいらっしゃるんですか?」
「ああ。よくガールフレンドを連れてくる。お気に入りの場所さ」教授はぬけぬけと答えた。
 その言葉を無視し、チャリティは硬い声で尋ねた。「紅茶のおかわりはいかがですか?」そして、教授のカップに紅茶をつぎながら、話題を変えようとした。「ミスター・ブカチェクはとても順調に回復されていますね」彼女は教授の方へカップを押しやり、明るく言った。
 だが、彼はにべもなく答えた。「僕は仕事を離れているときは患者の話はしないんだ、ダーリン」
「私はあなたのダーリンなんかではありません」チャリティはぴしゃりと言った。
「今のところはね」教授は穏やかに応じ、友人同士のように気さくな口調で続けた。「君の名前はいいね。少し変わっているが。ご家族からはチャリティと呼ばれているのかい?」
 教授の声は親しげで、なだめるような響きがあり、チャリティのいらだちは徐々におさまっていった。そして彼に問われるまま、家族からはチェリーと呼ばれていること、実家や両親のこと、医者の息子と婚約している妹や、すでに結婚している兄のことを話した。そのあとようやく、チャリティは自分がしゃべりすぎたことに気づいた。「私ったら、長々とごめんなさい。退屈だったでしょう」
「そんなことはないよ。あのとき車の中にいた君のご両親は、感じがよさそうだった。お父さんは少しいらだっていたようだが」
 チャリティは驚いて目を見開いた。「どうして私たちの車を……?」
「僕は中年かもしれないが、まだそれほど視力は落ちていない」
「あなたが中年だなんて……とんでもないわ!」
「うれしい言葉だな」教授はもの憂げに言った。「ぜひとも、また君を誘いたいものだ。君は僕の自尊心をくすぐってくれる」
 教授のからかうような笑顔を見ると、チャリティはなにも言葉が出てこなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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