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マドリードの約束

マドリードの約束


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供がある。現在、子供たちは独立し、夫と二人暮らし。たくさんの猫と犬に囲まれている。

解説

 異国のスペインで自活をめざしていたイジーは、道で倒れた貧しい老人ミゲルを助けたことがきっかけで、家政婦として彼の家に住みこみで働きはじめる。ある日、ブランド物に身を固めたハンサムな男性が訪ねてきた。驚くイジーに、ミゲルは上機嫌で甥だと紹介する。彼女は義憤に駆られた。お金持ちなのに伯父を援助しないなんて。一方、カーヨはイジーをうさんくさそうに見ていた。まんまと伯父の家に入りこんだこの女は金目当てに決まっている。ちょっと調べれば、実は伯父が旧家の末裔で裕福だとわかるはずだ。この僕が彼女の化けの皮をはがしてさっさと追い出してやる!

抄録

 カーヨはなんとか顎から力を抜いた。イジーが言ったとおり、僕には関係ないことだ。だが、それならなぜ、イジーが自分の早まった行動を後悔して恋人のもとに戻るとわかって、こんなに不愉快な気分になるのだろう?
 話題を変えよう。
 冷静で抑揚のない口調を保って。
 ふだん、採用試験の面接はカーヨではなく、人事担当者が行う。しかし、最善を尽くそうと、カーヨは思った。別にむずかしいことではない。
「前の家政婦がいたころ、ひどい状態だった伯父のぼろ家を、あれだけぴかぴかに磨きあげたところをみると、君には家事の才能があるんじゃないかな」
「才能?」イジーは思わず喜びで頬を染めた。「今まで私にそんな言葉を使ってくれた人は一人もいなかったわ」こういう社会的な成功者が人をほめるのは珍しいことだし、自分にそういう経験があったら、大切に心にとどめておくだろう。残念ながらこれまでそんな機会はめったになく、むしろけなされるばかりだった。
 イジーのうれしそうなようすを見て、カーヨは胸が同情でいっぱいになるのを感じた。今になって伯父の言った言葉がよみがえってくる。あのときは、どうせ伯父の気を引くためのでまかせだと無視していたのだが。
“どうやら彼女は家族から不当な扱いを受けていたようだ。いつも兄さんと比較してばかにされ、そのせいで自分はできそこないだと感じるようになってしまったらしい”
「君はずっとお兄さんの陰で生きてきたんだろう。だからといって君に長所がないわけはない。質は違っても、君はお兄さんと同等だ」カーヨはやさしく言った。
 イジーはさっと顔を上げ、形のいい眉をかすかにひそめた。どうやらミゲルはなにもかもしゃべってしまったらしい。彼女はあきらめたように軽く肩をすくめた。
 それを見たカーヨは、自分でもわけがわからないまま言っていた。「君はきっと自分は愛されていないと思っていたに違いない。自分は独りぼっちだと。僕にはその気持ちがわかる。六歳のとき、父が伯父に話しているのを耳にしてしまったんだ。“そんなに大事に思うのなら、兄さんがあの鼻たれ小僧と一緒にいてやってくれよ。あいつが生まれたせいで、僕は大事な妻を亡くしたんだ。使用人たちに衣食の世話をさせ、教育を受けさせはするが、それ以上はあいつとかかわりたくない”そう言っているのを」そのときのことを思い出して彼は厳しい表情になったが、声は穏やかなまま続けた。「それまでの僕は父の関心を引こうとあれこれ努力していたが、それからはいっさいやめた。ずっと一人で生きてきた。もちろん伯父が僕を導いてくれたが」
 イジーは呆然《ぼうぜん》として目を大きく見開いた。その目にどっと涙があふれてくる。母のいない独りぼっちの幼い少年には残酷すぎる言葉だ。私の子供時代のみじめさは、カーヨがかかえていた深い心の傷に比べたら足元にも及ばない。
 カーヨは眉を寄せ、銀色に輝く涙の滴をぬぐってやりたい衝動をかろうじて抑えた。「僕は同情してもらいたいわけじゃない」幼いころのつらい経験をイジーに打ち明けたことに、彼はすっかり狼狽《ろうばい》していた。立ち聞きした父の言葉はだれにも言ったことがない。伯父にさえも。それどころか、あのとき伯父がなんと応じるか聞きもせずに馬屋へ走っていき、泣きながら眠りに落ちたのだ。あの出来事は決して口にしたくなかった。だから、なぜイジーに話したのか、自分でもわけがわからず、ひどく腹立たしかった。「僕はただ、他人がどう思おうと君には才能があり、それが君の人生になにかをもたらしてくれると言いたかっただけだ。僕がそれによって生きてきたように」
 才能が私の人生になにかをもたらしてくれる? カーヨがそれによって生きてきたように? ありがとう、でも遠慮するわ! 確かに彼は大成功をおさめた大金持ちの実業界の大物よ。でも、自分の伯父以外、だれのことも気にかけていない。華やかな自分の愛人たちのことさえも。彼女たちのことを、ミゲルはずばり“愛情抜きの契約”と表現していた。息子を愛せない父親が彼を感情とは無縁の人間にしてしまったのだ。私から見れば、それがカーヨ・アンヘル・ガルシアを本当にかわいそうな人間にしている。
 その思った瞬間、イジーはカーヨを愛していることを悟った。
 新たにあふれてきた涙をまばたきして押し戻した彼女は、胸に痛みを覚えながら、本能的に手を伸ばし、同情をこめてカーヨの頬に触れた。
 カーヨが息をのむのがわかった。それから彼はイジーの顔を両手で包み、長い指を彼女の髪に差し入れて、熱い唇を重ねた。イジーの爪先まで火のように熱いものが流れた。
 カーヨはイジーの頭を両手で支えて唇をむさぼった。ますますつのる欲望に、イジーはすすり泣いた。気がつくと、彼女の両手はカーヨの広い胸をさまよっていた。夢中で彼を求めて……。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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