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公爵と秘密の愛し子

公爵と秘密の愛し子


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

あなたは生涯初めての、たったひとりの恋人だった。

社交界の宝石と讃えられるエレンには、人に言えない秘密があった。4年前、異国で出会った魅惑的な少佐と情熱の赴くままに結婚し、ある誤解により蜜月の余熱も冷めやらぬうちに逃げだしていたのだ。心に深い傷を抱え、素性を偽って生きるエレンと今や公爵となったマックス――互いに裏切られたと思いこんだまま、ふたりは田舎町の舞踏会で思いがけない再会を果たす。怒れるマックスが彼女の家に押しかけ、正式な離婚を言い渡したとき、ふいに現れた愛くるしい男の子がまじまじと彼を見つめた。自分と同じ緑の瞳を見たとたん、マックスはさらなる怒りにうち震えた。「僕の跡継ぎは屋敷に引き取る。一緒に来るかどうかは君しだいだ」

■母子で豪壮な館に移り住み、懸命に公爵夫人の務めに励むエレンでしたが、夫の態度は頑なでした。しかしそんなある日、最愛の息子ジェイミーの行方がわからなくなり……。壊れた恋の最後のかけらが真実の愛に昇華する、珠玉のシンデレラ・リージェンシーです!

抄録

「わたしは――」エレンはそこで言葉を切り、短い沈黙のあと、冷淡に言った。「お忘れのようだけど、わたしたちは結婚していないのよ」
マックスはブランデーを口に含み、堪能するふりをしたが、実際は怒りを自制するのに必死で、味わう余裕などなかった。心の中には嵐が吹き荒れている。終わったことだと思っていたのに、軽やかな笑い声を聞いたとたん、裏切られた苦しみがなまなましくよみがえった。四年間、ぼくは悲嘆と罪悪感を抱えてむなしさの中で生きてきたというのに、エレンはこの世になんの憂いもないような軽やかな笑い声をあげていた。表面上の平静を保つには、鉄の意志が必要だった。
「ぼくとのことを簡単に忘れたのはきみのほうだ」マックスはグラスの中のブランデーを回転させた。「ちなみに、新しいご亭主には何があったんだ?今もご存命なら、ぼくの口からきみの重婚罪を教えてやらなければいけないところだったな」
エレンはしらけた笑い声をあげた。「いいかげんにお芝居はやめたら?わたしがイギリスに帰国してすぐに調べなかったと思う?弁護士に軍の記録を調査させたけれど、イギリス領事のミゼット少佐の話が裏づけられただけだった。少佐によれば、当時カイロの南にイギリス軍の兵士は一人もいなかったそうね、脱走兵は例外として」
「前にも説明したはずだが、ぼくの隊は機密行動を取っていた。領事も存在を知らなかったはずだ」
「だとしても記録が一切見つからないなんて不自然すぎるわ。あなたの仲間、たとえばあの従軍牧師だって――」
「ドクター・アンガスはエジプトを出国後、南アフリカに向かった。ほかの仲間は――」悲しみが肺腑をえぐる。「全員が戦死した。エジプトかスペインで」
ぼく以外は。
罪悪感の苦みがのど元にこみあげた。エレンが姿を消したあと、マックスは自暴自棄に陥り、死に場所を求めて激戦地に飛びこんだ。だがどんな血みどろの戦場でも、彼はいつも死の手をまぬがれた。部下が、戦友が、ばたばたと倒れていくのに、彼だけはいつも生き残った。
「作り話はいいかげんにして」エレンの声に侮蔑がこもる。「ミゼット少佐からカイロの南には脱走兵しかいないと聞いたときは、あなたが他人の名前を騙っていたんだと思ったわ。でも、名前だけは本当だったのね。脱走兵という不名誉な過去はうまく隠蔽したの?家名に傷がつかないように、あなたの実家が手をまわしたのかしら?卑しい商売人の娘との結婚は恥だと考えるような、立派なお家柄だものね」エレンの言葉には単なる皮肉とは思えない実感がこもっており、マックスは引っかかりを感じて眉をひそめたが、エレンはすぐにどうでもいいというように手を振って言葉を継いだ。「たとえあなたが身元を偽っていなかったとしても、あの結婚は正式なものではあり得なかった。結婚式を執り行った従軍牧師のドクター・アンガスは偽物だったんだもの。本物は当時はシシリーにいたのよ、ミゼット少佐がそう断言したわ」
「いいかげんなでたらめだ!」
「でたらめなのはあなたのほうよ」
「愛人ができたからそう思いたかったのか?」
エレンは椅子を蹴るように立った。「ふざけないで」
「ぼくはいたってまじめだ、マダム。きみはフランスが有利とみてそちらにつくことにした。堂々とそう認めたらどうだ?実際、当時のエジプトで優勢だったのはフランスだ。ぼくはマムルーク勢力をまとめようと水面下で動いていたが、彼らは内輪もめに忙しく、ムハンマド・アリーに対する抵抗組織を結成するには至らなかった。しかもナイルの海戦で敗北を喫したとはいえ、ナポレオンはヨーロッパでは破竹の勢いの快進撃を続けていた。きみが祖国を見限ったとしても誰も責めはしないさ」
「誰がそんなことを。わたしはエジプトを出るならフランス総領事の保護を受けるのが安全だと判断しただけよ」
「そしてぼくに何も言わずに逃げ出した。妻としてあるまじき行為だ」
「だから妻じゃないと言ってるでしょう」エレンはマックスの口を封じるように手を上げた。「一度は騙されたけれど、二度目があるとは思わないで」
「ぼくの言葉を信じないならそれでいい」マックスは切り返した。「最新の軍の記録を調べれば、当時はもれていた情報もそろっているはずだ」
「信じるわけがないでしょう。イギリスに帰国したとき、徹底的に調べさせたのよ。弁護士には、従軍牧師の報告書を含めてあらゆる書類にあたらせた。わたしたちの結婚の記録なんてどこにもなかったわ」
「当時はイギリスに届いていなかった書類が今はすべて補完されている。ぼくを疑うなら、もう一度弁護士に調べさせてみるといい」エレンの目に初めて動揺が浮かぶと、マックスは口元を皮肉にゆがめた。「気に入ろうが気に入るまいが、きみはぼくの妻なんだよ、マダム」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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