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無垢な秘書の恋わずらい

無垢な秘書の恋わずらい


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェニファー・ヘイワード(Jennifer Hayward)
 悩めるティーンエイジャーだったころ、姉のハーレクインをくすねて読んだのが、ロマンス小説との出会いだった。19歳のとき、初めて書いた小説を投稿するも、あっけなく不採用に。そのとき母に言われた「あなたにはもっと人生経験が必要ね」という言葉に従い、広報の職に就いた。名だたる企業のCEOと共に世界中を旅して回った経験が、確かに今の仕事に役立っているという。2012年、ハーレクインの新人作家コンテストで入賞し、ついにデビューを飾った。カナダ、トロント在住。

解説

秘書が恋したのは、仕事中毒の冷たいボス。

私があの気難しいCEOの秘書に採用されたの?フランチェスカは喜びと不安で胸がいっぱいになった。ハリソン・グラントは女性たちを虜にする甘い容姿とは裏腹に、些細なミスも許さない冷酷な仕事ぶりで知られている。密かにハリソンに焦がれるフランチェスカは、ボスに認められたくて懸命に働くが、労いの言葉一つなかった。やっぱり彼は私のことなんてなんとも思ってないのね。その矢先、重要な契約が整ったあとの高揚感のせいか、車内でハリソンに誘惑され、唇を許してしまった彼女は……。

■2016年のデビュー以来、着実に実力と人気をあげてきているJ・ヘイワードが描くのは、ボスと秘書のドラマティックなロマンス。丁々発止の会話と切ない心情が交錯する読み応えのある一作です。

抄録

「中断しよう、落ち着くまで……」
「続けましょう」彼女は関節が白くなるほど強く座席をつかんでいる。「パニックにならずにすみますから」
こんな状態でどこまで理解できるだろうと思ったが、引き続き情報の後半部を検討した。それが四十五分後に終わると、大きな抜かりがないかリストで確認した。
「最新の市場統計が入っていません」フランキーが書類をめくりながら言う。
「三枚目のスライドにある」
「まあ」彼女が唇を噛む。「グラフもありますか?直すように指示されたものですが」
「あるよ」ハリソンは彼女のふっくらした唇から顔に目を移した。さっきより顔色はいいが、少しうわの空ではないだろうか。
「フランチェスカ、大丈夫か?」
「はい」彼女は無理に笑った。「これで終わりですね。アリストフ側の質問は全部メモします。もっとも、これだけ情報がそろっていれば質問の余地はないと思いますけど。ああ、バックアップも取っておきましょうね」
最後のひと言が“取っておいたほうがいい”というふうに聞こえた。「バックアップは大事だ。忘れてはまずい」わざと強調する。
「了解です」彼女は額をこすった。「株主会議のほうに移りませんか?すべてを理解しておく必要があるので」
「明日の会議について何も疑問がなければ、そうしよう」
「何もありません」鞄に書類ホルダーをしまい、メモ帳を出す。「株主問題は……」
「会議だ」彼は訂正した。口がまわらなかったのか?それとも単なる冗談なのか?
「はい、会議は……月曜と火曜で、追加の議案は水曜の午後に話し合うんですね?」
「追加の議案を話し合うのは火曜の午後だ。会議は火曜の夜に終わる」
フランキーは目をしばたたいた。「火曜と言いましたけど」
「水曜と言った。追加の議案を話し合うのは火曜日だ。ほら」閉じたままの書類ホルダーからスケジュール帳を出す。「見てごらん」
言われたとおりに眺めたが、何も頭に入っていないように見える。「そうですね」ため息をつき、テーブルに肘をついて目をこする。「急に頭がぼんやりしてしまって」
彼は自分のせいだと思い、申し訳なくなった。「疲れてるんだ。今週は忙しかったから」
「ええ、でも少し横になったほうがいいみたい」彼女は両手をこめかみにあてた。
ハリソンはその手をそっとどけた。「気分が悪いのか?」
「大丈夫……ただ――」ぼんやりした目が彼からそれた。「姉がくれた酔い止めの薬をのんだんです。そのせいかも……」
「どこにある?」
「バッグの中です」
バッグを開けて上のほうにあった小瓶を出した。ラベルに鎮静剤とある。
「のんだことがある薬か?」
「いいえ。こんなに効くとは思わなくて」フランキーはテーブルで頬杖をつくと目を閉じた。「しばらくすれば効き目も薄れるでしょう。コーヒーを飲んだほうがいいかも」
「何錠のんだ?」
「一錠だけ。でも……くらくらして」
彼は小さくうなった。「効果は数時間続く。横にならないと」
「コーヒーを飲めば大丈夫です」
シートベルトをはずし、彼女のもはずす。フランキーはまぶたが半分閉じていた。「シートベルトサインが――」
「いいから」彼はフランキーを抱きあげた。丸みのある体なのに驚くほど軽い。後部にある寝室まで普段ならもっと楽に運べるだろうが、床が揺れているので転ばないようにするのがやっとだ。彼女はおびえ、ハリソンの二の腕をぎゅっとつかんで体を震わせている。
彼女を抱きかかえたまま寝室のドアを開け、それからベッドに下ろす。その拍子に機体が揺れ、フランキーの横に倒れ込んでしまった。優に十五メートルは急降下し、彼女が小さくうめいた。ハリソンは半ば覆いかぶさるような格好だった。やがて機体は水平飛行に戻った。「息を吸って」彼は命じた。
フランキーは喉を震わせて息を吸い込んだ。「とても怖い」
「ただの乱気流だ」ハリソンも息を整えた。
「ここにいて」見開いた彼女の目はまだおびえていた。「置いていかないで」
「今はどの道動けない」楕円形の小さな窓から空を見た。延々と続く黒雲にときおり稲妻が走る。
フランキーは枕か何かのように彼を引き寄せた。肩に手をかけて離そうとすると、彼女がすがりつくように言った。「お願い」
ハリソンは折れた。外で嵐が荒れ狂う間、彼女の柔らかい体を抱き寄せていた。なまめかしいのに、どこか無垢なオレンジの花の香りがする。水平飛行が数分間続いた。彼の腕に抱かれるうちにフランキーの震えも止まった。こんなふうにやさしく女性を抱いたのはいつ以来だろう。長く考える必要はなかった。スザンナと別れた七年前だ。
不思議な感じがした。窓の外を眺めるうちに稲光は遠ざかり、雷鳴の間隔が開いてきた。こうしてフランチェスカを抱いていると、あの夢を現実にしたくなってくる……。全身がたちまち緊張し、さっきまでの心地よさが長く秘めていた欲望に押し流された。
彼がいきなり立ちあがると、目をしばたたいた。「もう落ち着いたようだ」彼女は体を丸め、ハリソンではなく枕を抱いた。彼が踵を返した瞬間、白い腿があらわになった。
まずい。彼はメインキャビンに戻ってシートベルトを締め、窓の外の嵐を見つめた。この胸で吹き荒れる嵐を招いたのは自分だ。あんな夢を見たのが間違いだった。だが妄想はどんどん悪化する一方だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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