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かりそめの妻の値段

かりそめの妻の値段


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

君を愛している――富豪は残酷に、偽りの愛をささやく。

王家に嫁ぐ姉の結婚式に出るため、王室専用機の搭乗ラウンジで案内を待っていたタムシンは、ギリシアの大富豪ザンとでくわし、絶句した。ウエイトレスをしていた店にザンがやってきたとき、彼のズボンにカクテルをこぼしてしまったことがあったのだ。気まずい再会にもかかわらず、結婚式後のパーティで彼と踊ると、瞬く間に官能に火がつき、その夜タムシンは純潔を捧げた……。それきり音信のとだえたザンが、3カ月後、彼女の前に現れた。大金と引き換えの契約結婚という、屈辱的な提案をたずさえて。

■『鷹の王と無垢なメイド』関連作です。許嫁との結婚を回避したくて、ヒロインを偽りの結婚劇に巻き込んだ放蕩富豪。彼女が妻でいる間、ベッドでたっぷり楽しもうと目論み……。大スター作家L・グレアムも大絶賛のスター作家、S・ケンドリックが描く情熱愛!

抄録

宮殿の回廊にともる透かし彫り細工のランタンの下で、タムシンの心臓は激しく打っていた。ザンが近づいてくる。彼は、たくましい体を際立たせるフォーマルなダークスーツを着ていた。その顔色はスーツと同様に暗く、ぎらぎらと輝く瞳が彼の真剣さを伝えている。タムシンは、胸が締めつけられるような強い願望にとらわれた。恐怖と興奮を同時に感じる。走り続けたかったが、なぜか足が動かなかった。
「僕をダンスフロアに置き去りにしたのは、君が初めてだ」彼はかすれた声で言った。
「あら、ディア」タムシンはなんとかいつもの軽い口調で返した。「自尊心が痛むのね。かわいそうなザン」
「自尊心などどうでもいい。大事なのは今現在のことだ」ザンは歯ぎしりしながら言った。
タムシンは徐々に平静を失い始めた。ザンの体の力強さや、腕に抱かれたときのときめきを思い出したのだ。あれほどの興奮を味わったのは初めてだ。そうでしょう?
タムシンは高揚感を払いのけようと咳払いをした。「ねえ、私の気持ちははっきり言ったわ。疲れたから、もう寝室で休みたいの。鬼ごっこみたいに、あなたが私を追いかけてきた理由は知らないけれど」
「いや、わかっているはずだ」ザンは静かに指摘した。「僕も君も互いに求め合っている。お互い会った瞬間から求めていた。その気持ちにどうにか片をつけなければ、僕はおかしくなってしまう」
それはまるでスローモーションの動画を見ているようで、タムシンは心臓がひっくり返るのを感じた。人生が一変する知らせを聞いたときに似ていた。ただ今度ばかりは、ほかの誰かに起きたのではなく、タムシン自身に起きたのだ。彼女は今、ザン・コンスタンティニデスに誘いをかけられていた。傲慢なギリシア人の大富豪に!
ハンサムな顔やたくましい体に陶然としないよう用心しながら、タムシンは彼を見た。口のなかはからからだ。選択肢はたくさんある。召使いを呼んでもいい。ザンが追ってきても、彼の鼻先でドアをぴしゃりと閉めることもできる。いくら彼でも、まさか頑丈なドアを壊そうとはしないだろう。たとえ体格的には可能だとしても。
さまざまな考えが脳裏をよぎったものの、タムシンはどれも選択できないとわかっていた。二人のあいだに、さほどの好意はないかもしれないが、ザンにダンスフロアで触れられた瞬間、タムシンの身に何かが起きた。
何か官能的な魔法によって、タムシンは見えない糸でがんじがらめになっていた。ザンの粗削りだがハンサムな顔に見入りながら思った。これは今の私――傷つきやすいのに、生き残るために頑固になったタムシンから脱皮するチャンスだ、と。別人に生まれ変わる絶好の機会よ。人当たりがよく夢見がちな別人に。
「君は僕のキスを欲しがっている」ザンは小声で言い張った。「それも熱烈に。そうだろう、タムシン?」
なんてばかなことを。タムシンは否定したかった。あなたの自尊心はどこかほかで満足させて、と。だが、言えなかった。彼女は知らず知らず目を上げ、ザンを見つめていた。胸は期待と憧れで高鳴り、肩をすくめようとしたが、うまくいかなかった。「たぶん」
ザンはこの状況を面白がっているらしい。彼の唇にからかうような笑みが浮かんだ。
「たぶん?」彼は前に一歩進み、タムシンの顎を指で持ち上げた。「そんな気のない褒め言葉を浴びせられるとは心外だな」
今度はタムシンが気の利いた返答をする番だった。けれど、彼の唇がゆっくりと下りてくると、頭が真っ白になった。そしてザンの唇がタムシンの震える唇に触れたとたん、応えずにはいられなくなった。おぼつかない様子で両手を彼の肩に伸ばすと、ザンは突然、有無を言わさず彼女を抱き寄せてキスを深めた。
たちまちタムシンは我を忘れた。
キスの経験はあるが、こんなキスは生まれて初めてだ。キスが天国行きのチケットのように思えるなんて。しかし次の瞬間、ザンは身を引いて回廊を見まわしてから指を絡ませた。私があえぎ声をもらしたせいで、彼は臆したの?
「一緒においで」奇妙なことに、ザンの声には動揺がにじんでいた。
「一緒にって、どこへ?」
「どこだと思う?」彼の目は明白な約束にきらめいていた。「ベッドさ」
我が物顔でやや無神経な彼の言葉に、タムシンはショックを受けるべきだった。けれど、そうはならなかった。それどころか、彼の言葉に胸がはずみ、頬が熱くなった。
ザンに導かれて延々と続く回廊を抜けるあいだ、タムシンの耳には雷のようにとどろく自分の鼓動とハイヒールの靴音しか聞こえなかった。私はあとで、このふるまいを、砂漠の宮殿で頭が混乱していたせいだと自分に言い訳するだろう。それでなおさら、我が身に起きたことが夢のように思えるのだとも。それはあたかも、体から抜け出したタムシン・ウィルソンの魂がどこか高みで今の状況を見下ろしているようだった。精力的なギリシア人富豪にベッドに運ばれる瞬間を今か今かと待つ自分を。
彼の部屋は、柔らかな明かりに満たされ、タムシンの部屋と同じように豪華だった。深紅と暗い金色で統一され、天井が高い。象嵌細工のデスクの上に置かれた金製のペンにはダイヤモンドがはめこまれ、壁一面にさまざまな馬の絵が飾られていた。とりわけタムシンの目を引いたのは、黄色い花輪を首にかけた黒い牡馬の絵だった。その馬は日没間近の砂漠に立っていた。
重いドアを閉めるまでザンは無言だった。彼のたくましく熱い体に抱き寄せられるなり、タムシンの胸は早鐘を打ちだした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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