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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

捨てられたガラスの靴

捨てられたガラスの靴


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・モーガン(Sarah Morgan)
 イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。

解説

砕け散ったガラスの靴を今ふたたび、拾い集め……。

ターシャはやむにやまれぬ事情で勤め先の病院を辞め、医師の兄を頼って故郷に帰ってきた。目下、兄から与えられた仕事は、退院する骨折患者の看護だ。その患者とはなんと、途方もなくセクシーで傍若無人な兄の友人、さる公国の皇太子アレッサンドロだった。17歳のころ、ターシャが憧れ、悲惨な失恋をした相手。アレッサンドロに誘われたあの夜、純潔を捧げる覚悟だったのに、彼はドレスを脱がせている途中で侮辱の言葉を浴びせ、去ったのだ。だが、10年ぶりに再会したアレッサンドロはさらに魅力を増していた。古傷の疼くターシャの胸に、恋の悪魔がふたたび忍び寄り……。

■幾度もRITA賞を受賞しているスター作家、サラ・モーガン。ロマンス小説の書評専門誌上で“言葉の魔術師”の異名をとる彼女の、貴重な未邦訳作品をお贈りします。遊び心と気品の共存する最高にすてきなヒーローをご堪能ください。

抄録

おいしい?嘘でしょう。
彼の皿をじっと見つめる。「おいしい?」
「二週間も病院食だったんだぞ」アレッサンドロは器用な手つきでパスタをフォークに巻きつけた。「こんなのが食べられるなんて天国だ」
そんなはずはない。
冗談よね?わざとやったと知っていて嘘をついているんだわ。でなければ……。
ターシャは自分の皿に目を落とした。ひょっとして間違えた?
用心深く一口食べてみる。口の中が火事になることを覚悟したが、辛くはなかった。やっぱり間違えていない。きっと彼の口の中はアスベストでおおわれているんだわ。
「お代わりはあるかい?」アレッサンドロが最後の海老を突き刺した。「君はぜんぜん食べていないじゃないか」
「食べているわ。お代わりはないの」まさかこれを平らげるとは。どこまでタフにできているの?
怒りと悔しさのうちにターシャは食事を終えた。
「ところで、どうして落馬したの?馬が言うことを聞かなかったの?」
単刀直入な質問に、アレッサンドロが笑みを浮かべて応じた。「馬は悪くない。集中力が一瞬とぎれた隙に敵の選手とぶつかったんだ。馬ごと倒れて足首が下敷きになった。肋骨もそれでつぶれたんだ」彼はソファにもたれかかって目を閉じた。
集中力がとぎれた?
「馬の下敷きになった?それは大変。だったら、当分体を使うのは無理ね」
アレッサンドロが目を開けてまつげの陰からターシャを見上げる。「さあ。使い方しだいだな」
ターシャは口がからからになった。「ポロやサーフィンは無理でしょう」よけいなことを言うんじゃなかったわ。体は傷ついていても危険極まりない人よ。「疲れたんじゃない?警備員を呼んでベッドまで連れていってもらう?」
「松葉杖があるから自分で移動するよ」
「人に頼らないのね」
「まあね」
苦しむところは見たいが、怪我が悪化しては困る。「肋骨が痛むなら松葉杖は使えないわ。ほかの方法を考えないと」
「大丈夫だ」ソファの端に移動したアレッサンドロは、松葉杖を取り、よろよろと立ち上がった。
ターシャは驚いた。あんなに痛そうなのに。
「アレッサンドロ――」
「いいから、場所をあけてくれ」アレッサンドロは耳を貸さない。何が何でもやる覚悟だ。ターシャは心ならずも感銘を受け、その場に立ち尽くした。彼に手を貸してあげたい。
「アレッサンドロ、人を呼んで――」
「それより途中に障害物がないか見てくれないか。ものがあるとよけられない」決死の覚悟で少しずつ進んでいく。「バスルームに寄っていくよ。二度手間が省ける」
ターシャはアレッサンドロの肩の筋肉の動きを見守った。動くたびに激痛が走っているのは間違いない。「一人じゃ無理よ」
アレッサンドロのまなざしは頑固で、人の手を借りるくらいなら死んだほうがましだと告げている。彼は唇をゆがめて笑った。「いっそ君もバスルームに来るかい?悪くないな」
ターシャは赤くなった。「人の手を借りないと何もできないだろうと思って」
アレッサンドロはなめるようにターシャの顔を眺めたあと、からかうように笑った。「一緒に行くかい、テゾーロ?」
テゾーロとはイタリア語でダーリンの意味で、十七歳の頃の彼女はアレッサンドロにそう呼ばれていた。胸がどきどきする。「イタリア語はやめて」
「どうして?」
「だって……相手がわからない言葉で話すのは失礼よ」
「僕にとっては母国語だ」
「知っているわ。でも英語がうまいんだから、英語で話して。ともかく無理は禁物よ。この仕事がいつまでもつかわからないから、私がいる間に早く治してもらわないと」
アレッサンドロが松葉杖の位置をずらした。ドアのノブを握り締めているところを見ると、よほど痛いのだろう。「ドアに鍵はかけない。何かあったら大声で呼ぶから、そのときは手を貸してくれ」
彼のセクシーな目に釘付けになる。これではどちらがチリを食べたのかわからない。体が火事のように熱く、しかも完全に彼のペースだ。「わかったわ。鍵はかけないでね」
ターシャはアレッサンドロの寝室に先回りして、ベッドからスーツケースをどけた。ベッドは巨大で、海のほうを向いている。
いったい何人の女性をここで泣かせたのかしら。
アレッサンドロが女性とからみ合っている場面を頭の隅へ押しやり、ベッドに入りやすいように羽毛布団の端を折り返す。かえすがえすもこんな仕事を引き受けたことが悔やまれる。彼を懲らしめようなんて思った自分がばかだった。ハーブティーはいやがらせとして少しは効果があったけれど、チリにはびくともしなかったし、サーフィンの話もそれほどうらやましそうではなかった。
そして私は、アレッサンドロと同じ場所に閉じ込められて悶々としている。前からそうだった。彼を目にすると思考が停止してしまう。彼のことしか考えられなくなるのだ。
本当に苦しめたいなら、もっと思い切った作戦が必要だわ。
男のプライドをたたきつぶすためには……。
ターシャはにんまりし、町で買ってきた別のものを思い浮かべた。
プランBに変更よ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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