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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

まぼろしのローマ

まぼろしのローマ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

たとえ夢でも、まぼろしでも、あの日の愛を取り戻せるなら……。

これまで、グレーシーは独りで子育てと仕事に励んできた。19歳のときに一人旅したローマで運命的な出会いをはたし、息子を授かったことは今も決して後悔していない。子供の父親のマリクが滞在していた豪華ホテルのスイートで、住む世界の違いに驚きながらも、初めての経験に我を忘れたのだった。ところが直後に、彼の祖父だという老人が部屋に押し入ってきて、みずからを一国の君主と名乗り、マリクは後継者だと告げた。グレーシーは蔑まれ、傷つけられたすえ……はかない恋は、終わった。だが10年後、あの日のままのマリクが、ふたたび目の前に現れる――彼女の唯一の宝物である息子を、自分の跡継ぎに据えるために。

■大スター作家レベッカ・ウインターズの描く物語をはじめ、心癒される感動作の多いハーレクイン・イマージュから、ケイト・ヒューイットによる涙誘われるシンデレラ・ストーリーをお届けします。愛息とともに懸命に生きる未婚の母グレーシーの幸せのゆくえは?

抄録

マリクは震えそうな手でスイートルームのカードキーを差しこんだ。もう一度グレーシーをこの腕に抱くのが待ちきれない。運よく祖父はプライバシーを重んじて、別の部屋を指定した。ホテルのロビーでは、眠そうなボディガードに数名出くわしただけだった。いま最も恐れているのは、祖父の冷ややかな怒りや非難だった。
グレーシーはスイートルームに入って目を丸くした。「わたしが泊まっているユースホステルとは比べものにならないわ」
「だが、いまはここにいる。ぼくたちが楽しむための部屋だ。せっかくだから楽しもう」マリクは羽目板のキャビネットに隠された音響システムのスイッチを入れた。ソロのサックスの朗々とした響きが部屋に漂う。グレーシーはほほ笑んだが、その目にはためらいが浮かんでいた。
彼女は震える笑い声をあげ、わずかに音楽に合わせて体を揺らした。マリクは笑みを浮かべたが、ダンスには加わらなかった。それもなおざりにされた教養のひとつだ。グレーシーは肩をすくめ、動くのをやめた。
「どうしていいかわからなくて」彼女が打ち明けると、マリクは静かに笑った。
「ぼくもだ」
「本当に?」グレーシーはゆっくりとかぶりを振った。「想像できないわ。あなたはとても……」笑いながら両手を広げる。「魅力的なのに」
「ありがとう」マリクはそっけなく言った。自分の外見など気にかけたことはない。アラザールの次期スルタンとして、公の場でいかに威厳を保つかということ以外は。正直なところ、外に出ると、ベールの陰から称賛のまなざしを向ける女性がいることに気づかないわけではないが、グレーシーの素直な言葉ほどには心を動かされなかった。彼女がどう思っているか知りたかった。どう感じているか。
そして彼女の目に情熱を見て取り、マリクは手を差し出した。グレーシーはためらわず、息をはずませて飛びこんできた。やわらかで華奢な体が固い胸と腿にぶつかり、痛いほど欲求が募る。
だが、彼はキスはしなかった。いまはまだ。この感触を味わいたかった。自分に向けられたグレーシーの笑顔は、彼の知りたいことをすべて語っていた。
その瞬間、不安も経験不足も、身を守るために人生のあらゆる場面で築いてきた防御の壁も忘れ、マリクは自分のするべきことを悟り、自分のしたいことを知った。そして、そのとおりにした。彼女の顔や髪を撫で、鼻筋や眉を指先でそっとなぞった。グレーシーは一度だけ、震える息を吐き出した。
「体が震えて山盛りのゼリーになった気分」
「ぼくは体が炎に包まれたようだ」そう言うと、マリクはふっくらした頬から誘いかけるような喉のくぼみに指を這わせた。グレーシーが唇を噛むと、危うくうめき声をもらしそうになった。もう少しだけその感触を楽しんでから、魅力的なV字形の胸の谷間へと指先を滑りこませた。息をのむ気配がして、マリクは視線を上げて彼女の反応をうかがった。「いいのか……?」
グレーシーは目を見開き、唇を噛んでうなずいた。「ええ」
ほとんど触れていないのに、マリクの体は痛いほどの欲望に脈打っていた。グレーシーが身をこわばらせ、震えている様子から、彼女も強く反応しているのがわかる。
マリクはそのまま手を下に滑らせ、手のひらで腰のくびれや曲線を味わい、指を広げて探りながら彼女のヒップに手を回した。
グレーシーは震える笑いをもらした。「これってすごく……」
「わかってる」
彼女がマリクの肩に頭をもたせかけると、美しい髪が厚い胸板にかかった。「震えが止まらない」
「怖いのか?」
「いいえ。ただ……あまりにも感じすぎて」
「ぼくもだ」マリクは彼女を両腕で包みこみ、ふたりで音楽に身をゆだねた。やわらかな胸のふくらみが触れるたび、全身が痛いほど反応する。この瞬間を永遠に止められるなら、間違いなくそうしていただろう。息をのむほど完璧なひとときだった。
長く寂しい響きを残して音楽が終わると、グレーシーは顔を上げて彼を見た。
そのハート形の顔に、わずかに開いた唇を見るなり、マリクはもう一度キスせずにいられなかった。
グレーシーの口が彼を迎え入れ、片方の手がシャツをつかんだ。このままずっと唇を重ねていられそうだった。何もしたくない。ただ彼女の唇に、そのやわらかさに我を忘れていたかった。
ふいに彼女が強くシャツを握りしめ、かすかにうめき声をもらした。マリクはキスだけでは満たされないことに気づいた。それは彼女も同じだった。
グレーシーがわずかに身を離した。放心したような表情で、唇はふくれていた。「マリク……」
彼は自分を押し殺してつぶやいた。「もしやめてほしければ……」
「やめる?そんな」小さく震える笑みを唇に浮かべ、グレーシーは首を振った。「むしろその逆よ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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