マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

花嫁は愛されぬ宿命を嘆く

花嫁は愛されぬ宿命を嘆く


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 マギー・コックス(Maggie Cox)
 十歳のときに学校の先生から、あなたは必ず作家になると言われて以来、作家になることを夢見てきた。秘書職を得て結婚したのち、ついに夢を実現した今は、“決してあきらめなければ誰にでも夢を叶えることができる”と語る。母親として忙しい毎日を送っているが、あいた時間はドラマやロマンチックな映画を見て過ごすという。

解説

彼と身も心も愛し合えたら……。でもそれは、けっしてかなわぬ夢。

同性愛者だという夫の衝撃の告白。リリーは愛されなかった不幸な結婚生活に終止符を打ち、イタリアへ移り住んだ。花咲き香る美しい家で、大好きな絵を描く静かな日々はしかし、突如迫られた立ち退きを拒んだため乱されることに。説得に現れた家主のバスティアン――ハンサムな黒髪の大富豪の魔力に、リリーはたちまち心奪われてしまったのだ。一度でいい、女として認められたい。切なる願いに身を焦がし、愚かにも身を捧げた。やがて妊娠を知った彼に義務感からプロポーズされ、傷つくことになるとも知らず。

■夫と妻としてベッドは共にしても、そこに愛はない。魅惑の大富豪に持ちかけられた冷たい取り引きに苦悩するヒロイン。二度までも愛のない結婚生活に身を投じるのは屈辱的でしたが、生まれてくる子供のため、孤独に耐えると決めて……。

抄録

「本気?裁判所に解決してもらうのが本当に公正だと思うの?」
バスティアンは広くがっしりした肩をすくめ、事務的な口調を保とうと心がけた。これを不快な闘争にしたくないのなら、感情の高ぶりにのみこまれてはいけない。「契約解除の通知を送ったのはずいぶん前だ」立ち上がり、いらだたしげに髪をかき上げる。「充分な時間を与えたはずだ」
「充分じゃないわ」
簡単に言いくるめられてなるものかと腹をくくり、リリーは一歩も引かなかった。わたしは従順な子羊ではない。これまでもほかの人に邪険に扱われてきた。もう耐えられない。
学校での屈辱的な記憶が胸に押し寄せた。どの派閥に入ることも拒んだため、クラスのいじめっ子から標的にされたのだ。残酷な嘲笑を浴び、課外活動から締め出され、家庭ですでに感じていた以上の孤独や疎外感を味わわされた。家庭でも彼女を愛してくれる人はいなかった。しかしその苦しみに耐えた経験が今、家主に立ち向かう力となった。
「やれるものならやればいい。虫けらみたいにわたしを追い出しなさいよ!わたしみたいな人間など、あなたにとってはどうでもいいのよ。自分の希望どおりになればそれで満足なんでしょう?」
「何を言っているんだ?」
「その耳で聞いたはずよ。あなたは明らかに、わたしの要求が自分の要求ほど重要ではないと信じている。確かにわたしはただの平凡な女よ。それでも自分にできる最善の方法で自活しようと努力している。財産と土地を相続しただけで自分が偉いと思っている男性に指図されたくないわ。住居のような、生きていくうえで必要不可欠なもののために誰かを頼る必要のない男性には!」
「ぼくが自分の境遇に感謝していないとでも思っているのか?自分の幸運を当然のことだと考えているとでも?」バスティアンの目が鋼の冷たさを帯びた。「きみは間違っている。ぼくは家族を養わなければならない我が社の従業員と同じくらい、いやそれ以上に必死で働いてきた。それこそが父から学んだことだからだ。事業は経営者の心を映し出す鏡だと、父は身をもって教えてくれた。従業員を大切にし、彼らの貢献が事業の成功と全員の幸福に欠かせないことを彼らに伝えなければならない、と」
その情熱に満ちた声を聞き、リリーは自分の言葉がいかに彼を怒らせたかを知った。口調から、彼の幸運を非難し、嫉妬していると受け取られたようだが、そんな気持ちはまったくなかった。ただ公平に扱ってほしかっただけ、厄介な邪魔者のように追い払われたくなかっただけだ。
「あなたが境遇にあぐらをかいているとは思っていない。ただ……」
リリーは遅ればせながら彼と向き合っていることに気づいて困惑した。それでも彼の秀でた容姿に気を散らされずに心の中の思いを口にし、自分の立場を理解してもらえない怒りを伝えようとした。
「この土地をオリーブ畑にするのを、しばらく先延ばしにすることはできないかしら?せめて賃借期間が終わるまで。あなたはそれさえもまったく考慮できないの?」
リリーは肩で息をした。いやな汗がじっとりと肌を濡らす。今日は特に暑いが、彼女を消耗させるこの熱気の原因は外気温だけではない。
バスティアン・カレーラのせいでもある。
彼が返事をしないので、リリーは弱々しくつけ加えた。「はっきり言って……わたしはとても怒っているの」
バスティアンが苦笑した。彼自身の怒りはすでに消えたらしい。しかしリリーはなぜか、彼の感情の高ぶりがもっとはるかに不穏な何かに変わった気がした。
そして彼の強烈な茶色の目を見つめ返したとき、リリーはそこにあからさまな官能のきらめきを認めた。
「まるで痴話喧嘩だな」
「なんですって?」
リリーは狼狽した。場の雰囲気がなぜ、どうやって急激に変化したのか理解できなかったが、確かに一変していた。もっとも、彼女は心の深いところではわかっていた。
二人のあいだの空気は極限まで張りつめて今や爆発寸前になり、すぐに緩和の糸口を見つけなければならない、と。
彼女の考えに同意するかのように、バスティアンは固く温かな手をいきなり彼女のうなじに置き、顔を近づけた。考える時間はまったくなかった。そこにあるのは、最も親密な方法でリリーに自分のことを知ってほしい、自分に触れて探索してほしいという切望だけだった。
バスティアンの唇が貪欲に彼女の唇をとらえ、荒々しくむさぼった。その瞬間、リリーは自分の体が反応するのを自覚した。彼が示した荒々しい情熱によって、彼女の鼓動は速くなり、血は糖蜜のようにねっとりと濃くなる。リリーは震える手で彼の肩をぎゅっとつかんだ。バスティアンがかすれたイタリア語で何かつぶやいたかと思うと、彼の熱い舌が口の中に滑りこんできた。
リリーは喜びにうめいた。キスはますますエロティックになっていく。二人がたどる情熱の道はただひとつの目的地につながっているかのように。
飽くことを知らない触れ合いは急速に深まり、熱さを増していく。リリーの膝が崩れ落ち、キスのさなかに鋭く息を吸いこむと、それは苦悶のようにあたりに響いた。
バスティアンはとっさにウエストをつかみ、くずおれそうな彼女を支えた。そして軽々と抱き上げ、注意深くソファに横たえた。リリーの心臓はドラムのように肋骨に打ちつけている。それでも彼女は自分の行動の是非を自問しようとはしなかった。彼女の五感は欲望をかきたてる彼のキスのとりこになり、引き返すにはすでに遅すぎた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。