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スペインからの復讐者

スペインからの復讐者


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハ−レクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供がある。現在、子供たちは独立し、夫と二人暮らし。たくさんの猫と犬に囲まれている。

解説

 ★ 純粋な愛を捧げた報いが、愛人にされることだなんて。
 リーザは十八歳のとき、スペインで出会ったウエイターのディエゴを全身全霊で愛した。だが美女とたわむれる現場を目撃し、侮蔑の言葉を投げつけて彼のもとを去った。身を焦がすような恋は二度としないと誓ったリーザは、五年後のいま、父の経営する雑誌社で編集者を務めている。だが平穏な日々は、復讐に燃えるディエゴの出現で激変した。大企業の社長となった彼は、父の雑誌社をつぶしにかかった。取りやめる唯一の条件は、リーザが愛人になり、飽きるまで快楽を提供することだと言う。彼は残酷にこう続けた。「スペインの男のプライドを傷つけたら、必ず報復される」。

抄録

 海より深いブルーの瞳を彼に向け、リーザはおかしそうにくすくす笑った。
 予想どおり、バックス・フィズの効果はてきめんだ。今朝、彼女は皿の上で桃をつぶしただけで朝食にほとんど手をつけていなかった。ディエゴは一瞬自己嫌悪に襲われて眉をひそめたが、すぐにそんな思いを払いのけた。酔わせるのが目的ではなかった。ただ、少々のアルコールは緊張を解くのに役立つだろうと思っただけで……。
「母が元気なころから、父は私にほとんど関心を向けなかったわ」リーザは無造作に肩をすくめ、バックス・フィズをもう一口飲んでグラスを置いた。頭がふわっとし、あとは残したほうが賢明だと心に決める。ディエゴ・ラファカーニのそばにいるかぎり、持てるすべての理性をかき集めても足りないのだから。「母が亡くなってからもそれは変わらなかった。休みに寄宿舎から帰っても、いつも共同経営者のクレイトン家に預けられて……だから昔からベンとソフィと仲がいいの」
 正確を期すなら、かつて仲がよかった、と過去形で言うべきかもしれない。リーザは唇をかみ、瞳をかげらせた。
 小さな顔をよぎった悲しみの色を見てディエゴは眉間にしわを刻んだ。頼りなげにテーブルに置かれたほっそりした手をこの手のなかに包みたいという衝動に駆られたが、ぎりぎりのところで自分を抑えた。
「たぶん、きみのお父さんは愛する妻に先立たれて絶望していたのだろう。でも娘には悲しみを乗り越えて前に進んでほしかった。だから親しい家族にきみを預けたんじゃないかな」ジェラルド・ペニントンがなぜ愛と慰めを必要とする娘をほかの家族にゆだねたのか理解できず、ディエゴは考えながら言葉を選んだ。スペインでは昔から家族が何よりも優先され、自分たちの子どもの面倒は自分たちで見るのが当たり前だった。
 リーザは顔をしかめた。「あなたは父を知らないのよ」
「かもしれない」同情を買おうというのか? 甘やかされて育った子どもがよく使う手だ。「しかしお父さんがきみに高価なものを買い与えたのは事実だし、きみをライフスタイル社の編集者に抜擢したことも否定できない事実だ。ところで、大学は卒業したのかい?」
 優しげにくぐもった声に侮蔑が響いたのは確かだ、とリーザは思った。
「父からは毎年のクリスマスに図書券と、十八歳の誕生日に腕時計をもらっただけ。それも、父に頼まれてミセス・クレイトンが選んでくれたのだとあとでわかったわ。大学に関して言えば……スペインから帰ってすぐ、会社の経営がうまくいっていないので進学をあきらめて編集の仕事を手伝ってほしいと父に頼まれたの。いま思えば、頼まれたというより強制されたというほうが近いかもしれない。こんなときは自分のわがままは引っ込めて会社のために尽くすべきだと言われたのを覚えているわ」
「きみはそれでよかったのかい?」
「もちろん進学したかったけれど、父にはそむけなかった。初めて父が私の存在に気づき、何かを期待してくれたことがうれしくて、言われるままに従ったわ。認めてもらいたかったし、私でも何かの役に立つことを証明したかったのかもしれない。娘が父を喜ばせたいと思っても不思議ではないでしょう?」
 深く澄んだ瞳に涙が光るのを見てディエゴは息をつめた。リーザはまばたきをして涙を隠し、多くを語りすぎたことを後悔したようにこわばった笑みを作った。
「行きましょうか?」
「待ってくれ」ディエゴは立とうとしたリーザの手をつかんで引き止めた。
 男の手にすっぽり収まってしまう小さく可憐な手の感触は、五年前、初めて会ったときに感じた優しい父性本能のようなものをディエゴのなかに息づかせた。青白いほど透明な、はかなげな美貌。悲しみの記憶にかすかに震える唇。このすべてを守り、慈しみ、崇めたいという、あのときと同じ思いが胸にあふれかえった。
 もしリーザが父親との関係を正直に語ったなら、いままで大きな誤解をしていたことになる。
 同様に、ほかのことでも勘違いしている可能性はないだろうか? リーザの話のすべてを偽りと退けるのではなく、あの忌まわしい夜の出来事に関する彼女の言い分にも耳を傾けるべきかもしれない。
 もしいま、遅ればせながら良心の声に従い、婚約を取り消して一緒にスペインに来る以外の選択肢を残さなかったことを後悔していると謝れば、たぶん……もしかしたら、やり直せるかもしれない。彼らのあいだにいまでも強力な磁力が働いていることは疑いようのない事実で、だからこそ彼女と再会して以来、自分でも信じられないほど心身の混乱に陥ったのだ。それに、あれからふたりとも年をとり、そのぶん賢くなっている。
 小さな手はそれ自身の意思を回復し、しなやかに動いて彼の指にからみつく。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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