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未来なき情熱

未来なき情熱


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 看護師のエミリーは、旅先で負傷したギリシアの裕福な老人に雇われ、アテネにある彼の屋敷に住みこんで世話をすることになった。老人の息子ニコは罪深いほど魅力にあふれた男性だが、父親とはいつも角突き合わせていて、優しさが感じられない。エミリーに対しても、父の財産を狙う女だと疑っている様子だ。あまりの邪推にエミリーは怒りをおぼえた。ところが落雷による停電で屋敷が真っ暗になったとき、触れ合った二人はいつしか唇を重ねていた。その瞬間、エミリーはニコのとりこになってしまった。彼の父から、息子は女性をおもちゃにする男だと言われていたのに。

抄録

 その答えはどこか腑に落ちなかった。受取人に適切な金額が支払われてこその保険ではないか。受取人が未成年者ならなおさらだ。詳しい事情を探るべきだろうが、今は根掘り葉掘り尋ねる場合ではないと思い、ニコは質問を変えた。「伯母さんや伯父さんと連絡をとり合っているのか?」
「クリスマスにカードを送っているわ」
「きみが今どこにいるか知らないんだね」
「誰も知らないわ。パブロスと二人で取り決めたの。雇主に知られればくびにされるでしょうね」
 ニコの最初の印象どおり、エミリーがさらなる報酬を得ようと狙っているのなら、解雇など問題にならない。パブロスと結婚すれば、看護師としての年収は小遣いにも満たないはずだ。
「どうしてそんな危険を冒した?」
「お父さまは退院されたとき、外国で面倒を見る友人も家族もなく孤独だったのよ」
「息子がいる。連絡さえとれれば、ぼくは二十四時間以内に現地に行っていた」
 エミリーは穏やかに言った。「お父さまはあなたをわずらわせたくなかったのよ」
「それで見ず知らずの人間をわずらわせたというのか。その女性が職を失うかもしれないというのに。病院には休む件をどう説明した?」
「退院の時期に合わせて三カ月の休暇を取ったの」
「休暇代わりに父の面倒を見るとは気高い行為だ」
「いいでしょう? ほかに予定はないし」
 ニコは不信感を隠そうと努めた。「働いてばかりで遊ばないとはあんまりだ。なんとか変えなければいけないな」
 突然吹きこんだ風でフレンチドアが音をたてて揺れ、エミリーはびくっとした。「ここにいるだけで気分転換になるわ。天気がよくなれば、パブロスはたまに観光する暇くらい与えてくれるでしょう」
「望みどおりになるといいね」好機が向こうからやってきたとニコは思った。「ぼくが案内しよう」
「それはご親切に、ニコ」
 いや違う、とニコは思った。エミリーの目的はともかく、こちらの動機は純粋ではない。
 二人は当たりさわりのない話をしながら食事を続けた。窓に雨が打ちつけたとき会話がとぎれるくらいだったが、コーヒーが出されるころにはエミリーの口は重くなり、見るからに疲れた様子だった。親切とは言いがたいと自認するニコでさえ気の毒になった。大西洋まわりの長い飛行機の旅で疲れたうえに、父の世話をする緊張まで加わったのだ。エミリーがナプキンをわきに置いて、そろそろ失礼すると言い出しても、ニコは引きとめなかった。自分もテーブルを離れ、階段の下まで彼女を送った。
「おやすみなさい」エミリーがつぶやく。
「ぐっすりおやすみ《カリニヒタ》」
 エミリーが階段を半分ほど上ったところで、まぶしい稲妻が夜の闇を切り裂いた。直後に電気が消え、屋敷は闇に包まれた。
 驚いたエミリーの悲鳴と、ハイヒールが大理石の階段のふちをたたく音が聞こえた。
「そのまま動くな」
 階段が危険だとニコは知っていた。子供のころ、新入りのメイドが足をすべらせて腕を折ったことがある。それは日中の出来事だった。だがこの屋敷で育ったニコは、目隠しされていても見当がつく。エミリーが足を踏みはずす前に、彼は隣に行っていた。
 エミリーをつかむと同時に二度目の稲妻が夜空に走った。彼女の顔からは血の気がうせ、髪は銀色に、目は深海の黒い大きな洞穴のように見えた。
「何が起こったの?」エミリーがささやく。彼女は手すりを握りしめ、ふらつく体を支えた。
 無意識にニコは彼女の肩を抱き寄せた。少女と言ってもいいほどほっそりとした肩だが、温かく甘く押しつけられたそのほかの部分は、まぎれもなく女性のものだ。「停電だ」ニコは本能で反応する自分の体からエミリーの気をそらそうとした。
 エミリーは笑い声をもらした。「それくらいわたしにもわかるわ」
「電柱に雷が落ちたんだろう」
「まあ」
 エミリーは自分がニコにもたらす影響に気づいたのだろう。これほど近くにいては露骨な高ぶりを隠すのは無理だ。
「よくあることなの?」
 彼女が尋ねているのは体についてなのだろうかと考えながら、ニコは答えた。心が体と勝ち目のない闘いをしている。「いや、この季節では珍しい」
「お父さまがご無事か確かめなくては」
「その必要はない」ニコは足音と玄関ホールの奥の壁に映るろうそくの明かりに気づいた。「ゲオルギオスが役目を果たしている。気がすむなら、きみを部屋に送ってからぼくが確かめる。どの部屋だ?」
「青とクリーム色の内装で、立派なアンティークの家具と四柱式ベッドがある部屋よ」
 ニコはすぐに理解してうなずき、腕をエミリーの腰にまわして階段を上らせた。彼は右に曲がって左手で壁に触れながら廊下を進み、ドアまでたどりついた。ドアを押し開き、エミリーを部屋に入れる。
 暖炉の薪は燃えつきていたが、残り火で淡いオレンジ色の明かりが部屋にあふれていた。見上げたエミリーと視線が合い、出会った瞬間からくすぶっていた意識の高まりが二人をとりこにした。
 ゲームを始めたとき、ニコはキスするつもりはなかった。だがエミリーが彼の腕のなかで向きを変えて顔を上げたとたん、彼女を抱き寄せて唇を重ねることが、この世で最も自然なことに思えた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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