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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

愛を知らない億万長者

愛を知らない億万長者


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

 フェイスは十二歳のときにボートの事故で父親を失った。残された母親も難病を患い、常に病状の悪化に怯えている。それでも大学生の今日まで苦労することなく暮らしてこられたのは若き億万長者ストーンのおかげだった。ストーンは父の親友の娘であるフェイスの後見人となり、借金を清算し、母親の治療費も負担してきたのだ。その事実を知ったフェイスは愕然とした。施しを受け続けるわけにはいかない。フェイスはストーンに全額を返済するために大学をやめ、ひそかに仕事を探して働き始めた。だが、たちまちストーンに見つかってしまう。何か役に立ちたいと懇願するフェイスに向かって彼は言った。「それなら、僕の妻になってもらいたい」
 ■ 憧れ続けてきた人と形だけの結婚をするフェイスの物語。切ない想いは成就するのでしょうか?

抄録

 一瞬、部屋全体がしんと静まり返った気がした。胸の中で心臓が大きく飛び跳ね、すばやくもとに戻る。
 フェイスは言葉もないほど美しかった。母親の車椅子のスピードに合わせてゆっくりと歩む姿を眺めながら、ストーンは息をするのも忘れそうだった。
 彼女が選んだのは正式なロングドレスではなく、丈の短いドレスだった。つややかなサテン地とレース地の二枚重ねのデザインだ。下層のサテン地のドレスは細身で、すらりとした体の線にぴったりと添っている。肩紐がなく、襟ぐりも深いので、上から薄いレースで覆われているものの、襟元からうっすらとクリーム色の膨らみが見える。上から重なる上質の薄いレースはいちおう首まで生地があるものの、何かを隠すためではなく、ただ魅力を高めるためのものらしい。そのレースの層が腕もぴたりと覆い、裾も扇状に下層のドレスの裾下まで広がっていた。
 ストーンは彼女のほかの部分に目を移した。髪は滑らかなアップにまとめられ、光り輝く王冠のように花で飾られている。彼女に自分たちは王室のようなものだと言ったことを思い出し、思わず笑みがこみ上げた。彼女はからかいの意味もこめて、わざとこういう髪型にしたのだろう。手にしている長いブーケも、小さいがこのうえなくすばらしい。淡い黄色のばら、ペルーリリー、以前彼女に贈ったことのあるほんのり緑がかった白い胡蝶蘭。その繊細な色合いが、輝くような白いドレスによく似合っている。
 彼女が結婚の日のために、あえて純粋で汚れのない白を選んだことをストーンは意識せずにはいられなかった。
 ああ、彼女に愛し合う喜びを教えられたらどんなにいいか。一瞬ストーンは、この結婚が本物で、目の前の美しく魅力的な女性が本当に妻になるために自分に向かって歩いてきているのだという錯覚に襲われた。ああ、これが本物なら、これから彼女の柔らかな体が約束する信じられないほどの喜びを楽しめるのに。夜ごと彼女の温かな腕の中で眠り、そしてそのうち、子供たちにも恵まれて……。
 何を言っている! 子供? ストーンは心の中で自分の尻を蹴飛ばした。
 フェイスが隣に到着した。彼女は振り返って母親にキスをしてから、ストーンを見つめた。いつもより化粧が濃かった。美しい顔立ちが今日はまるで非の打ちどころのない陶器のようだ。肌は内面から光り輝いている。顔の周りに散らされた波打つ髪。ストーンは思わずその髪に指を絡め、感触を確かめたくなったが、できなかった。自分にまったく影響を与えないとわかっている方法以外で、彼女に触れる勇気がなかった。
 判事の咳払いが、式の始まりを告げた。イライザがストーンの側面に立ち、ナオミが車椅子をフェイスの隣に移動させる。クラリスが背後に並ぶ椅子の一つに腰を下ろした。ストーンはフェイスに手を差し出した。彼女がその手を取り、ためらいがちにほほ笑む。
 だが、ストーンは笑みを返さなかった。この結婚は策略なのだという思いが、心に巣食って離れなかった。これは母のせいで仕方なく始めた愚かなゲームだ。フェイスにも自分にも、迷惑でしかないことだ。ほほ笑む理由などどこにもない。
 フェイスの顔から笑みが消え、彼女は視線を落とした。感情を押し殺すように突然無表情になり、式を始めようとしている判事に顔を向ける。
 ストーンは自分の行動を恥じた。これではまるで本物のろくでなしだ。彼女はわずかな安堵を求めただけなのに。ストーンは隣に立つフェイスの横顔に目をやった。彼女のまばたきに気づき、うろたえる。銀色の瞳にうっすらと涙が浮かんでいる。くそ!
 本能的に、ストーンは空いているほうの手を自分の腕にかかる彼女の手に重ね、そっと握りしめた。
 再びフェイスが目を上げ、弱々しい笑みを浮かべた。良心の呵責が胸を貫く。彼女はまだ二十歳の娘だ。これが彼女の夢見ていた結婚だとは思えない。たとえ彼女自身が簡素な形を希望したのだとしても。
 ストーンはほほ笑み返すと、腕を背中に回し、肩をそっと抱いた。てのひらに感じるフェイスは小さく柔らかで、脇に触れるほっそりとした体の感触はなんとも言えず心地よかった。
 式は短く、治安判事が結婚の誓約書を機械的に読み上げるだけの無機質なものだった。フェイスが静かな落ち着いた声で返事を告げ、二人の両手を見下ろす。そして指輪を交換し、あっという間に二人は正式な夫婦となっていた。
 判事はひどく退屈そうだった。いったい週に何組のカップルの式を行っているのだろう?「花嫁にキスをどうぞ」彼は抑揚をつけた調子で言った。
 ストーンはフェイスのウエストを両手で抱き、彼女を引き寄せた。唇を近づけると、彼女が顔を上げて迎える。そして唇が重なったとたん、ストーンは凍りついた。甘く柔らかな唇の感触に、思わず我を忘れそうになる。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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