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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

愛は幻でなく

愛は幻でなく


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 チャーリーは忌まわしい過去を清算して新しい人生を歩もうと決め、四年前に別居した夫セバスチャンのいるスペインの町にやってきた。ずっと音信不通だったにもかかわらず、セバスチャンはそのあいだのチャーリーの生活や仕事についてまるで見ていたように知っていた。すみやかに離婚の手続きを進めようとする彼女に、セバスチャンはある条件を出した。かつて二人が暮らした屋敷にこれから一カ月滞在すれば、喜んで離婚に応じるというのだ。理不尽な条件を出す夫の真意をはかりかねながらも、チャーリーは従うしかなかった――過去の悪夢を消すために。
 ■ 2009年5月、多くのファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった人気作家ダイアナ・ハミルトンの名作をお届けします。

抄録

 そんなことは二度としない。この人に本当の気持を悟らせるようなことは、絶対にしない。
 車が“噴水の家”の前庭にとまると、チャーリーは無意識にためていた息を吐き出した。車に乗ったときに始まった緊張からくる頭痛はだんだんひどくなり、今では耐えがたいほどだ。それなのに、ひねくれた悪魔はしごくのんびりと、彼女の座席の背に腕をのせて向き直った。
 それまでの苦い表情は跡形もなく消えて、怒っていたのが嘘のようだ。庭園の明かりに照らし出された顔はいたずらっぽい笑みに輝いていた。
 この人はまったく信頼できない。それに、この人にこんなふうに見つめられたときの私自身も。
 顔をそむけたチャーリーは、こめかみを刺す痛みにひるみながらドアのロックを手探りした。車を降りたとたん、彼女はよろめいて唇をかんだ。次の瞬間にはセバスチャンが脇に来ていた。チャーリーは運転席のドアが閉まる音を聞いて身構えたのだが、一瞬めまいがして動けなかったのだ。
「どうした?」すぐそばで、セバスチャンがはっと息をのむ音が聞こえた。彼にそっと明かりのほうに向けられたとき、黒い目が心配そうに曇っているのを見て、チャーリーは弱みを見せた自分をのろった。そして、あまりにも魅力があることでセバスチャンをのろった。
 素早く家の中に入って自分の部屋に行き、早朝の出発に備えて荷造りするはずだった。それなのに意思も持たず自主性も失った体は、温かく強い手を力なく求めていた。セバスチャンに親指の先で頬をなでられると、チャーリーは彼に倒れかかりそうになった。
「顔が真っ青だ。気分が悪いのか、小鳩ちゃん?」
「いいえ」
 チャーリーは苦労して気力を取り戻した。痛む頭を彼の胸にあずけてたくましい体を抱き締め、涙を流しながら彼に屈服するという誘惑に負けたくない。だが、できることといえば、気力を取り戻すくらいなものだ。その誘惑は耐えがたいほど大きい。でも闘わなければ。さもないと、私はこの人をずっと慕っていたことを口走って、愛情のおこぼれを哀願しかねない。激しい自己嫌悪に駆られて、チャーリーは唇をゆがめた。
「ちょっと頭痛がするだけよ」最低限必要な距離を空けようと後ろにさがったとき、こめかみを鋭い痛みが貫いて足がよろめいた。セバスチャンは低い声で何か罰当たりな言葉をつぶやくと、チャーリーを抱き上げて家に向かい、彼女の部屋に直行した。テレサに大きな声で矢継ぎ早に命令を下している。チャーリーはその声のそっけなさを頭に刻み込んだ。
 セバスチャンにそっと抱き下ろされ、サンダルを脱がされたとき、チャーリーは豪華なベッドが自分を包み込もうとしているように感じた。それより、セバスチャンに一緒にいてほしい。彼が身を起こしてベッドを離れると、呼び戻したい衝動と必死に闘わなければならなかった。
 ばかなことを。チャーリーは今にも泣きだしそうになりながら思った。なぜあんな意地悪な人に未練があるの? どうして自分をこんなつらい立場に追い込んだの? セバスチャンがすぐ戻ってきたのを見て、彼女はほっとした自分にまた腹を立てた。
「寝ていなさい」セバスチャンが優しく言った。チャーリーが自分を励ましながら起き上がって枕に寄りかかり、もう大丈夫だから出ていって、と言いかけたときだった。ベッドの端に腰かけた彼は、長い指で彼女の髪をなでながら顔をしげしげと眺め、眉を曇らせて湿らせたタオルを取り出すと、額をそっとふき始めた。
 快い感触が眠気を誘う。だが気をゆるめることはできない。セバスチャンのそっけない声を聞いて、チャーリーは警戒を解くまいとした自分の判断が正しいことを知った。
「君はまだ、僕が計画していることに耐えられる体調じゃない」彼は広い肩をわずかにすくめて唇の片端をゆがめた。「でも明日という日もある。そうだろう?」
 セバスチャンの魅力的な唇を見まいとして、チャーリーは目をつぶった。彼が計画していることなど考えたくもない。震え声の返事だけが、セバスチャンの手の感触や、彼が身近にいることで、彼女が動揺していることを示していた。「そうよ。明日は出ていくつもりなの。だから、看護師のまねなんてやめて、荷造りの邪魔をしないで」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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