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海運王と憂いの花

海運王と憂いの花


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

氷の富豪が幼子を抱いたとき、恋のキューピッドが矢を放った――

イベントプランナーのジャスミンは仕事と妹の世話に追われてきたが、今は知人の忘れ形見の幼いロージーを引き取り、育児に奮闘中だ。そんなとき、海運王ロイスから慈善パーティの依頼が舞い込んだ。冷徹なまでに仕事を最優先するロイスに反感を覚え、名実ともに心のこもったパーティにするために、彼もすべての打ち合わせに出席するという条件で引き受けることにする。多忙を理由に渋るロイスだったが、預かり手がなくてやむなくロージーを打ち合わせに連れていくと、彼の不機嫌はさらに増した。ところがある日、ジャスミンの家族が緊急で病院に運ばれ、たまたま同行した彼が、むずかるロージーを不器用に抱く姿を目にした。その瞬間、胸に稲妻が走った――ああ、わたし、恋に落ちたみたい……。

■結婚嫌いで子供嫌いの大富豪ロイスの、意外すぎるやさしい一面を目撃したジャスミン。けれど、慣れない手つきで赤ん坊を上下左右に揺する彼に胸をときめかせてみても、仕事一筋で固く心を閉ざした彼を振り向かせることなんて不可能としか思えなくて……。

抄録

「確認するが、この打ち合わせには最大限の守秘義務が課されているんだろうな?」
「もちろんです」ジャスミン・ハーデンは答えた。契約前にそんなことをきかれたのは初めてだ。
「それなら正直に言おう」
ジャスミンはスーツ姿で目の前を歩きまわるロイス・ブレイジャーを見つめた。オフィスの壁一面の窓からは川が見渡せ、文句なしの背景となっている。ゴージャスだわ、彼も眺めも。ふとロイスが足を止めた拍子に、首に何かがちらりと見えた。襟の後ろのすぐ上の部分だ。タトゥーかしら?
ジャスミンはあわてて視線を落とした。考えがすぐに顔に出てしまうことは自覚している。だからひたすら目の前のことに集中した。
「それに」ロイスがジャスミンに向き直って続けた。「噂が広まれば出どころはわかる。そうだろう?」
彼のおかげで集中力がいやでも高まりそうだ。
「ぼくは海運業で大きな成功をおさめたが、さらに上のレベルを目指したい。そのためにも大規模な契約につながる、ある一族に目をつけている」なめらかな額にしわが寄った。そのことで頭がいっぱいなのが手に取るようにわかる。「その一族はきわめて利他的だ。そこで彼らに好印象を与えるような資金調達のチャリティイベントを企画したい」
「つまり、目的は契約を取り交わすことですか?」彼の考えは理解できるが、その結論は残念だった。魅力的な最高経営責任者《CEO》は仕事一筋のようだ……。
「もちろんだ。他のプロジェクトと同様、ぼくは小切手を切り、きみは仕事をする」
何てすてきな態度かしら。日ごろからこの街のおもだった実業家と仕事をしているけれど、これほど冷淡な提案をする人物はいない。「どうしてわたしなんですか?」ジャスミンは冷静に尋ねた。
「調べたところ……」ロイスにまっすぐ見つめられ、ジャスミンの集中力がそがれた。「きみはぼくがターゲットにしている階層で名を知られている。顧客満足度もきわめて高い。それに、ぼくたちは一部で共通の業者を利用している。サヴァンナでも指折りの業者を」
ほめられて喜んでもいいの?
「アシスタントによると、きみの評価は文句なしだ。この地域では最高ランクのイベントプランナーに分類されている」
「わたしは納得のいく相手としか仕事をしません。成功の秘訣は信頼関係を築くことです」
なぜよりによってこんなにハンサムなの?でも、この人はハンサムなだけのロボット人間よ。首筋に見え隠れするタトゥーのせいで期待をふくらませてしまったけれど。本物のロボットの姿をした彼を想像し、ジャスミンは思わず笑いをもらした。
「何か問題でも?」ばかにされていると思ったのか、ロイスがいらだたしげに目を細めた。
「いいえ」少なくとも声に出して笑ったわけではない。そんなことをしたらプロとして失格だ。「具体的にはどんなチャリティを?」ジャスミンは話を戻そうとして尋ねた。
「とくに考えていない。きみの判断にまかせる」
ジャスミンは目をぱちくりさせた。通常のクライアントとの打ち合わせとは、ことごとく勝手が異なる。
「ぼくとしては、適切で注目を集めるものであれば構わない」ロイスが続けた。「名目はいろいろあるだろう。ああ、それから、二カ月以内に開きたい」
何てこと。「わたしが奇跡を起こすとでも?」
今度ばかりは、さすがのロイスも口元をゆるめた。「そう願いたい。でないと効果が薄れる。やってもらえるか?」
ジャスミンは話し合いの内容を振り返った。無理よ、ぜったいに無理。「わたしはこの仕事に適任ではないようです」正確には、この雇い主に。彼の仕事を引き受けるのは地雷原に足を踏み入れるようなものだ。すでに人生が混乱をきわめている身としては、厄介な雇い主などごめんだった。
ロイスが足を止めてジャスミンを見つめた。「なぜだ?」
あなたがハンサムすぎて、仕事のことしか頭になくて、この企画にまったく無頓着だからよ。
だが、とても口に出しては言えなかった。必死に考えながらロイスを見つめるうちに、次々と疑問がわいた。サヴァンナのあまたの名士を相手にしてきたおかげで、ロイス・ブレイジャーの噂はあちこちで耳にしていたけれど、実際に会うのは今日が初めてだ。急速に発展する海運業で財を成し、街で最も若い億万長者の一人にのぼりつめた彼は、社交の場にはめったに顔を出さない。現実的な仕事人間だという評判と、この打ち合わせでの態度を考えると、もっぱらビジネス上の人脈を築くことが目的のようだ。
威厳があり、優雅で、いかにも仕事ができる顔つきをしている。あまりにも優雅で、そつがなくて、完璧に整えられた金髪を意味もなくくしゃくしゃにしたくなるほどだ。
「いいですか」ジャスミンはどうにかロイスが納得するような言葉を探して切り出した。「メディアの好意的な評価や口コミを得るのに、確かにチャリティイベントは有効な手段ですが、わたしの企画するイベントの売りは心がこもっていることです」
「けっこう。それならぼくのイベントにも心をこめてくれ」
自分が適役ではないと、どうしたら理解してもらえるのだろうか。そのとき、机の上の電話が鳴り、ジャスミンは胸を撫で下ろした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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