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純愛の城【ハーレクイン・セレクト版】

純愛の城【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

ルイーズは祖父母の遺灰を埋葬するため、シチリアを訪れた。10年前、18歳だった彼女はこの地で忘れ得ぬ過ちを冒した――1400年続く公爵家の若き当主、シーザー・ファルコネリと。二人は愛し合っていると信じ、ルイーズは彼に純潔を捧げたが、翌朝、司祭から当主を誘惑したと断罪され、村を追われたのだった。彼からの連絡はなく、だからルイーズもその後のことは伝えていない。もう二度と会うことはないと思っていたのに、まさか、遺灰の埋葬に彼の許可をもらわないといけないなんて……。10年ぶりに会うシーザーは、鋭い眼差しと言葉で彼女を凍りつかせた。「ぼくたちの息子も、連れてきているのかい?」

■大スター作家ペニー・ジョーダンは、ミステリアスな大人の男性に翻弄されるヒロイン像が多くの読者の共感を呼びました。『純愛の城』は、2011年に亡くなった作家の遺作。深く繊細な心理描写で描く、シークレットベビー・ロマンスです。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

ルイーズは自分を見つめる男に巧みに操られているような気がして、神経がぴんと張りつめるのを感じた。ファルコナリ一族は自分たちより弱いとみなした者に対し、残酷にふるまう面がある。それは記録され、語りつがれてきた歴史的事実だ。しかしシーザーがルイーズの祖父母やルイーズ自身に対して残酷にふるまう理由はどこにもないはずだ。
それでも、祖父母の遺志を伝える彼女からの手紙を受けとった司祭が、埋葬にはファルコナリ公の許可が必要なので――正規の手続き、と司祭は書いていた――彼に面会できるよう手配したと返事をよこしたときには愕然とした。
ルイーズとしては、死者たちの静謐な記憶があふれる古い墓地よりも、ホテルの人ごみにまぎれて会うほうがありがたかった。だが、シーザーの言葉は絶対なのだ。それがわかっているだけにますます距離を広げたくて、今度は後ろに障害物がないことを確認してからあとずさりをする。そうすることで少しでも彼の磁力から逃れられるかのように。その性的な魅力からも……。
ルイーズは思わず体を震わせた。自分がこんなにも彼を意識してしまうなんて、覚悟が足りなかったと思う。以前よりもはるかに……。
と、そこまで考えて危険な思考にブレーキをかけ、シーザーの声で気をそらされたことにむしろほっとした。
「お祖父さん夫婦は結婚して間もなくシチリアからロンドンに移住してしまったのに、それでもこの地に埋葬してほしがっていたのか?」
まるでいまだに祖父母が農奴の身分で、彼がその主人であるかのように、彼らの遺志に疑いを差しはさむとは、いかにも傲慢な権力者らしい態度だった。ルイーズは嫌悪感に血がたぎるようで、彼に反感を抱く理由ができたのがうれしかった。いや……理由など必要ない。わたしが反感を抱くのは当然の権利だ。先祖の眠るこの地に遺灰を埋めてほしいという祖父母の願いがかなえられるのが当然の権利であるように。
「祖父母がシチリアを去ったのは仕事がなかったからだわ。親やそのまた親はあなたの先祖に微々たるお金でこき使われていたけれど、祖父母はもうそういう仕事にさえありつけなかったのよ。それでもシチリアに埋葬してほしいと願ったのは、ここが彼らの生まれ故郷だからよ」
シーザーは彼女の声ににじむ非難と敵意を聞き逃さなかった。
「だが……娘であるきみの母親ではなく、孫にその仕事を託すなんて、少々不自然な気がするな」
シーザーは内ポケットの手紙の重みを再び意識した。そして自分の罪悪感の重さも。すでに謝罪は終えている。もうこのままそっとしておくべきだろう。いまさら罪悪感をさらけだすのは身勝手な自己満足にすぎない。ましてそれだけですむ問題でないのなら。
「母はもう何年も前から再婚相手とパームスプリングズに住んでいるけど、わたしはずっとロンドンにいたのよ」
「お祖父さん夫婦といっしょに?」
単に事実を確認するような言いかただった。
わたしの要求を拒否するために、わたしが敵意をあらわにするよう挑発しているのだろうか?彼ならそのくらいやりかねない。でも、その手にはのらない。感情を隠すのは得意だ。過去に充分経験を積んでいる。一族の面汚しと烙印を押されて両親に背を向けられたら、感情を隠すのもうまくなろうというものだ。あの屈辱は生涯忘れられないし、プライドもプライバシーもあのときにすっかり奪われてしまった。
「ええ」ルイーズは答えた。「両親の離婚後、わたしは祖父母と暮らすようになったの」
「だが、離婚直後からではなかったんだろう?」
その問いは電流のように体の中を駆けぬけ、すでに癒えたはずの過敏な神経の末端にまで衝撃を与えた。だが、そんなそぶりを見せるつもりはない。
「ええ」そう認めたけれど、シーザーの目を見られずに墓地へと視線を向ける。両親の結婚の破綻をきっかけに、自分のあこがれや希望は葬り去ってしまった。この墓地に葬り去られたもののように。
「最初は父親と暮らしていた。十八歳の娘にしてはちょっと変わった選択なんじゃないか?母親でなく父親との暮らしを選ぶなんて」
いったい、なぜそんなことまで知っているのか、とはききかえさなかった。司祭からの手紙で、家族の過去を知らせるよう要求されていた。シチリアの緊密な共同体の習慣として、ロンドンで調査もさせたのではないかと、ルイーズは疑っている。
それを思うと胸に不安がこみあげてきた。もしわたしのせいで、この男が祖父母の最期の願いをかなえてくれなかったら……。
彼女は思わずうつむいた。金色の髪が緑濃い糸杉の木もれ日を受けて、きらきらと輝く。
司祭ではなくシーザーに会うはめになるとは予想もしなかった不快な展開だった。彼がこちらを見るたび、次の質問に移る前に黙りこむたび、攻撃に備えて身構えてしまう。いますぐきびすを返して逃げだしてしまいたい。でも逃げてもわずかな時間稼ぎにしかならず、そのあいだも自分のいまわしい運命を想像していたずらに苦しむだけだろう。それならこの場に踏みとどまって立ちむかうほうがまだましだ。少なくとも自尊心は傷つかずにすむ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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