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和書>小説・ノンフィクションハーレクインMIRA文庫

さよならのその後に

さよならのその後に


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

別々の道を選んだ二人を、運命の嵐が再び引き寄せ……。愛の痛みを知るすべての人に捧げる、著者渾身の感涙作。

「離婚しましょう」妻のヘイリーは涙を流し、そう告げた。一人息子を白血病で喪い、悲しみに打ちのめされた彼女は、息子と瓜二つの夫サムを見ることすら耐えられなくなった。愛ゆえに別れを受け入れたサムだったが、3年後、突然ヘイリーから電話がかかってくる。ハリケーンで建物に閉じ込められ、数日が経っているという。負傷して救助も期待できず、サムを頼ってきたのだ。あのとき放してしまった愛する者の手を、再びつかむチャンスが与えられた――しかし、同じ建物には逃走中の凶悪犯が潜み、彼女の身に危険が迫っていて……。

抄録

「トイレは使えるし、水も問題なさそうだ。舐めて確認した。バックパックにいろいろ詰めてきたから、ちょっと待っていろ」サムはそう言うと、持ってきたものをすべて取りだした。立ちあがるヘイリーに手を貸してから、トイレットペーパーと石鹸を手渡す。
ヘイリーはそれを受け取ったが、その場に立ったまま、じっとサムを見つめていた。
「どうした?」サムは尋ねた。
「あなたが本当にここにいると信じたくて」ヘイリーはそっと言い、向きを変えて洗面所に歩いていった。
その動きを観察したサムは、彼女が口にしなかったいくつもの怪我と、足を引きずっていることに気づかざるを得なかった。引き剥がすように視線をそらし、ウェットティッシュの大型容器と救急セット、ヘイリー用の着替えを取りだした。彼女が靴を履いていなかったのを思い出し、あとで先ほどの部屋に戻って探してみることにした。
ヘイリーはトイレットペーパーをホルダーに収めてから、洗面台に向かって石鹸を泡だてはじめた。両手の汚れが洗い流されて排水溝に消えていくさまを見ていると、ほっとした。足を引きずりながら洗面所を出たときには、サムが寝袋を広げてくれていた。その上に座っていたサムが、自分のとなりをぽんぽんとたたいた。
ヘイリーは小さくうめきながら腰をおろした。サムが手を伸ばし、ヘイリーの後頭部をやさしく撫でた。「こんな目に遭って、かわいそうに」
ヘイリーは声を震わせた。「だけどあなたが助けてくれたわ。どうもありがとう、サム。来てくれて本当にありがとう」
言い終わらないうちにヘイリーは目を見開き、すぐに視線をそらした。おそらくショック状態にあり、くり返し涙がこみあげるのもその兆候のせいなのだろう。
「おれに電話をかけようと思ってくれて、ありがとう」サムが言うと、ヘイリーの顔から表情が消えた。
「ああ、サム。あなたのことは毎日思っていたわ。難しいのは、実際に電話をかけることだった。過去にあんなことをしておいて、これほど切羽詰まっていなかったら、きっと勇気が出なかったと思う」
それを聞いて、今度はサムのほうが喉にこみあげるものを感じた。いますぐ話題を変えないと、言うべきではないことまで言ってしまう。「それでも感謝している。ところで、足を引きずってるな。痛むのはどこだ?」
「足首よ……そもそも、ここをひねったせいで階段から落ちたの」
「なるほど」サムは言い、ヘイリーの脚をやさしくたたいた。「見てみてもいいか?それから傷口を消毒して、薬をつけよう」
「なにもかも、ありがとう」
サムは腫れた足首をチェックし、ヘイリーのパンツの裾を膝までたくしあげて、見た目だけではわからない傷を確認した。いたるところにあざがあるものの、階段から落ちただけでは、ここまでのことにはならない。つまり殴られたのだ。そう思うと吐き気がした。最悪なのは右の足首のようで、足全体が黒ずんでいた。頬の裂傷はまだ出血している。
「ああ、ヘイリー。これはそうとう痛むだろう」
「頭ほどじゃないわ」ヘイリーは言い、髪の毛にこびりついた血に触れて、傷口を探ろうとした。「自分でできるかぎり、きれいにしたんだけど」
サムは立ちあがってヘイリーの背後に回り、傷口を見つけて消毒に取りかかった。「痛かったら言ってくれ」そして救急セットのなかから、傷口を閉じるのに適した形状の絆創膏を見つけた。ヘイリーはじっと座ったまま、サムの処置に身を委ねていたが、やがて髪の生え際から汗が流れてうなじを伝いはじめた。
屋根裏は息苦しいほど暑いものの、ハリケーンのさなかで窓を開けるなど自殺行為だ。そもそも嵐が上陸する前に窓に板を打ちつけておくべきだったのに、この家の持ち主はいったいなにを考えていたのだろうとサムは思った。これほど優美な建築物を、なんの策もとらないまま、ハリケーンにさらすとは。
絆創膏で可能なかぎり、傷口を閉じようとしたものの、この傷ができたのは階段から落ちた日で、その後の日々ではないのだろう。傷跡が残りそうだ。
処置が終わると正面側に戻り、顔の手当てを始めた。頬の裂傷をきれいにして、こちらも絆創膏で留める。それも終わると、破れて血だらけになったヘイリーの服を見おろし、かかとに体重をあずけて言った。「その……以前はおれたち、ほとんど同じスポーツウェアを着ていただろう?きみはかなり長時間、同じ服で過ごしてきただろうと思って、おれのショートパンツとTシャツを持ってきた。もし着替えたかったら――」
ヘイリーの目に涙が浮かんだ。「ぜひ着替えたいわ」
サムは着替えを取りだして、ヘイリーを助け起こした。「下着の替えがなくてすまないが、これで少しは気分がよくなるはずだ」
ヘイリーは、もらったのがバラの花束であるかのごとく、服を胸に押し当てた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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