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初恋はせつなき調べ 上 ド・ウォーレン一族の系譜

初恋はせつなき調べ 上 ド・ウォーレン一族の系譜


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: 初恋はせつなき調べド・ウォーレン一族の系譜
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 子爵令嬢のブランシュは過去に婚約をしていたが、訳あって自ら身を引いた。以来、結婚とは無縁だったが、父が他界したあと彼女のもとに多くの求婚者が来るようになった。どうせ皆、財産狙いだと思うと気が沈む。すると、そんな様子を見かねた親友が一計を案じ、ブランシュの元婚約者の弟レックスの領地を旅行しようと誘った。社交界で“世捨て人”と呼ばれる彼に、ブランシュが恋心を抱いているのを見抜いていたのだ。そうとも知らないブランシュは、土壇場で行けなくなったという親友の言葉を信じ、一人でかの地へ向かった――。

抄録

 厳しい視線を向けたまま、レックスは片手でシャツのボタンをとめた。だが、胸ははだけたままだ。「好きなものを飲めばいい」レックスは優しく言った。炉火の明かりが彼の顔をくすぐる。「だが、それはポートワインだ」
「ごめんなさい、区別がつかなくて」
「僕が注ぎましょう」レックスは言い、彼女に近づいた。
 ブランシュの緊張が高まった。これ以上、彼に近づいてほしくない。彼の存在があまりに強力で、心がかき乱されるから。レックスは彼女の手からグラスを取って、ワゴンの上に置いた。彼のコロンの香りがする。森とシトラスのにおいが少しだけ入りまじった海の香り。そして男らしい香り。グラスを受け取る瞬間、彼の腕がブランシュの体をかすめた。
「ありがとうございます」
 ブランシュの唇をじっと見ていたレックスの視線が、彼女の瞳に引き戻された。「心配事でも?」
 なんと答えればいいのだろう。考えるのも難しいというのに。ブランシュは必死になって頭を働かせ、不安定な気持ちを理解しようとした。あまりにも親密すぎる。こんなに心臓が激しく鼓動して、手足が震えるのは、欲望を感じている証拠だということに、ブランシュはようやく気づいた。しかし、興奮しているのと同じくらい不安を感じてもいた。
 レックスの目を見ようとして、ブランシュはたじろいだ。心臓の鼓動が激しさを増していく。彼の焦茶色の瞳が、それまで見たことがないほど欲望に陰っている。
「新鮮な空気を吸えば、たいてい眠れますよ」そう言うと、濃くて黒いまつげを下ろした。
 何か軽く話をするか、さもなければ部屋に戻るべきだということはわかっている。ブランシュはすっかり混乱していた。レックスが自分の婚約者候補だということはなんの助けにもならなかった。社交的で、礼儀正しい会話をする才能があるはずのブランシュが、何ひとつ話題を思いつくことができない。かといって広間を立ち去ることもできなかった。
「蝋燭の明かりで見ると、あなたは十五歳の少女のように無垢《むく》だ」レックスが優しく言った。
 心臓の鼓動がますます激しさを増していく。私は十五歳の娘のように未熟で無知だわ。そう、十五歳の娘のように不安で、怖くてしかたがないのよ! でも、そんなこと、彼にわかるはずがない。「もうすぐ二十八歳になります」
 彼は妙な表情でブランシュをちらりと見やった。まるで、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに。
 ブランシュは勇気を奮い起こした。今の彼は、いつになく多弁だわ。やっぱり、今がチャンスかもしれない。「どうしてまだ寝ていらっしゃらないのですか、サー・レックス? そろそろ真夜中ですのに」
 レックスの瞳が彼女の視線をとらえた。とても答えてくれるような雰囲気ではない。
 そのとき、ブランシュははっと気がついた。恋人を待っているんだわ。彼女は頬を真っ赤にした。「まあ、ごめんなさい。邪魔をするつもりではなかったの」くるりと後ろを向いて逃げ出そうとする。
 レックスが彼女の手首をつかんだ。「邪魔なんかじゃない」
 ブランシュはどうにか後ろを振り返った。
「眠れないのなら、僕もつき合いますよ」レックスは彼女の手を放してそっと言った。
 手首が燃えるように熱い。妙な緊張感がブランシュを満たした。部屋に戻りたくないと思っている自分がいる。彼はあまりにも魅力的だ。これを私は望んでいたのではないの?
 もちろん、理性では、手遅れになる前に逃げなければいけないことはわかっている。でも、足が動かない。
 長い時間が過ぎた。
「よく不眠症になられるのですか?」ブランシュは胸の前でグラスをつかんだまま、吐き出すように言った。
 美しい笑みが彼の顔をかすめた。「状況によります」
 彼の言葉の意味を解釈するのに、しばらくかかった。彼がアンと一緒にいるところを思い描く。私がゲストとしてこの家に滞在していなかったら、彼は今ごろアンとベッドをともにしていたのではないだろうか。心臓が激しく音をたてて鼓動し、耳までが熱くなった。ブランシュは口早に言った。「そろそろベッドへ戻らなければ」
「行かないでほしい」
 ブランシュは体をこわばらせた。
「お願いします」レックスが続けた。「ここにいてください」優しく言われ、ブランシュはまた目をみはった。「そうしてほしい」
 ブランシュは体を震わせた。彼は酔っているの? ただ大胆で率直すぎるだけ?「私もあなたと過ごすのはとても楽しいと思っています、サー・レックス」軽い口調で言う。
 レックスはおもしろそうにしながら、目を伏せた。
 ブランシュは息をのみ、この場にふさわしい話題を探した。だが、時間と状況を考えると、とても無理だった。「すてきなところにお住まいで、うらやましいわ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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