マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

夜が明けるまで

夜が明けるまで


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★2
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 あのリンダ・ハワードをして“絶妙な会話のセンスといい、個性豊かな人物設定といい、読者をストーリーに引き込むすべを心得ている”と絶賛せしめた実力派。作家になる前は高校で英語と世界史を教えていた。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともにアラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』は元CIAエージェントのヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

 ★ その過去に何があろうと、彼女こそ運命の女――運命の伯爵夫人。★
 デア伯爵がエリザベス・カーステアズに初めて会ったのは、フランス人アンリ・ボネが経営するロンドンでも有名な賭博場の貴賓専用サロンだった。一目見た瞬間から、デア伯爵の視線は彼女に釘付けになった。それほどエリザベスは美しく、賭博場のディーラーとは思えぬ気品が感じられた。彼女は間違いなくボネの情婦で、明らかに虐待を受けている。育ちもよさそうな彼女がいったいどうして身を落としたのか? そんなことを考えるうちに、ボネと一対一の勝負になっていた。そして相手の持ち金が底をついたと知ったとき、彼は貴族にあるまじき言葉を口にした――その女を賭けろ、と。

抄録

「わたしの身の上話など、面白くもなんともありませんわ。とくに変わった人生でもありませんでしたし。聞いても退屈なさるだけよ」
「それは聞いてみなければわからない」
「でも、取るに足らない人生ですわ。わたしがボネのところに来る前のことと、ボネのところでしていたことにはつながりはありません。今こうしてここにいることとも無関係です」
 あなたにも関係ないわ。彼女の口調はそうほのめかしていた。
「ひと言言っておこう、ミセス・カーステアズ。謎は知りたくなる。禁断の木の実は食べてみたくなるものだ」
「謎などありませんわ。そんなにお聞きになりたいなら話しますが、ごくありふれた人生です。主人が多額の借金を残して亡くなりました。その多くはムッシュー・ボネへの借金です。それで、彼が雇ってくれるというので、働くことにしました」
「頼れる親族はいなかったのだな?」デアは口を引き結んだ。「ご主人の親族もあてにできなかった。うまくごまかしたな。たいしたものだ。だが……腹をすかせた子供はいないのか? これから迎えに行こうか」
「わたしをからかってらっしゃるの?」
「わたしに嘘《うそ》をついているのではないか?」デアは切り返した。
 エリザベス・カーステアズはしばらく黙っていたが、やがて答えた。「そうだとしても、あなたにはなんのかかわりもありませんわ」
「さっきも言ったが、興味があるんだ」
 ミセス・カーステアズは一瞬、デアの目を見つめてから、顔をそむけてまた窓の外を眺めた。馬車はメイフェアに入っていた。通りすぎる建物の正面が、陽光を浴びて優雅な建築様式を見せている。召使いたちが玄関ドアの真鍮《しんちゅう》の板や呼び鈴を忙しそうに磨いたり、玄関前の広い階段から、前日の人の往来でついた汚れを洗い落としたりしている。玄関先では二頭立ての四輪馬車が、朝の訪問や仕事のために町に出る主人たちを辛抱強く待っていた。
「亡くなったミスター・カーステアズはどんな仕事をしていたのかな?」デアは先ほどとげとげしい口調でやりとりしたことなど忘れたように、やさしくきいた。
 エリザベス・カーステアズは、またデアのほうを向いた。「ゲームを続けたいのですか? もしそういうおつもりなら、わたしの想像力は貧弱だと申しあげておきますわ。話を作る能力などありませんの」
「計算をする能力しかない」デアはそう言って、ほほえみにはならないほどかすかに唇を動かした。「どこで教わったのだ? ボネのところでやっていたことはどこで?」
 ミセス・カーステアズは答えなかったが、顔をそむけることもなかった。
「それも話せないというのか? それでは、どんな話題がいいのだ、ミセス・カーステアズ?」
「わたしになにをお望みなの?」彼女は冷たい目をして、ぶっきらぼうにきいた。
「きみに話し相手をしてもらいたい、というのではだめか?」デアはちょっとからかうような口調で言った。「きみの機知。わたしは機知に富んだ会話を楽しみたい」
「わたしと……話をなさりたいの?」彼女の口調はやや鋭くなった。
「そう言ったではないか。わたしがきみになにを望んでいると思ったのだね、ミセス・カーステアズ?」
 馬車がとまったので、エリザベスは答える暇がなかった。召使いが駆け寄り、馬車のドアを開けて踏み台を下ろした。馬車を降りたデアは、生まれたときからしつけられている紳士役を完璧《かんぺき》に演じ、てのひらを上に向けて手を伸ばした。エリザベス・カーステアズはスカートの裾《すそ》を片手でからげて、もう片方の手の指をデアの手に置いた。
 その指がまた震えている。彼女がボネの客たちの欲望を満たすために、ワインや葉巻をふるまわれるように、だれにでもあてがわれることに慣れているのなら、デアの屋敷に入るだけで、どうして震えるのだろう。
 デアがエリザベス・カーステアズに言ったことは本当だ。彼は鬼のように恐ろしい人間ではない。女性にそんなふうに思われたこともない。だから、怖がられたり、手を重ねただけで震えられたりすることはなかった。それどころか、女性には好意を持たれるほうだ。
 もちろん女たちがうっとりした目で見たり、親しくなりたいと近寄ってくるのは、デアの性格を好むからではない。財産や伯爵の身分を好むからだ。そんなことはずっと前から気づいていた。だが、財産や身分がどうであれ、デアに注目されたりやさしくされたりして、不満をあらわした女は今までにいなかった。彼はそれを思いだし、目の前にいる女が暗い表情を浮かべてちっともうれしくなさそうにしていても、いくらか救われる思いがした。
「きみを食べようというのではない」デアは玄関の入り口までエリザベス・カーステアズをエスコートしながら、小声で言った。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。