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歌姫に薔薇の花を

歌姫に薔薇の花を


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル歌姫に薔薇の花を
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアン・ガストン(Diane Gaston)
 軍人の三女として生まれ、子供時代、日本に住んだ経験を持つ。新しい土地でなじめず寂しい思いをしたとき、読書に心慰められたという。大学では語学に加え心理学も学び、卒業後はメンタルヘルス・セラピストとしてキャリアを積む。一男一女に恵まれたのち、子供のころ大好きだったロマンス小説の作家をめざし、見事ゴールデン・ハート賞を受賞し華々しくデビュー。『嵐が丘』よりも『ジェーン・エア』のようなハッピーエンドの物語が好き。リージェンシー時代の英国を題材にした作品を得意とする。ベネチアが世界一ロマンチックな場所だと語る。特技は歌をうたうこと、ダンス、ピアノ。ワシントン州在住。

解説

 オペラ歌手を夢見るローズは、ロンドンで初舞台を踏んで喝采を浴びた。早速さる高名な侯爵の秘書が家を訪れ、主が後援者になりたがっているとの知らせをもたらした。その瞬間、キューピッドの矢は間違った相手の心臓を射抜いた。ローズは侯爵の秘書フリンとひと目で恋におちてしまったのだ。けれど、舞台に立つ女性が後援者を得るとは、愛人契約を結ぶこと。強欲な後妻にたきつけられ、父は今にも契約書にサインしそうだ。歌は大好き。でも……真実の愛だって見つけたい。そこへ、サド侯爵の信望者と囁かれる放埒な伯爵が現れ、ローズの運命は思いもよらない方向へむかう。
 ■お待たせいたしました。胸を打つクリスマス短編作で日本デビューを果たしたダイアン・ガストン、初の長編をお贈りします。スリリングかつシェイクスピア作品を彷彿させる独特の作風をご堪能ください。

抄録

「あなたは、ミスター・フリン? あなたもわたしの歌を聞いてくださったんですか?」彼女はフリンの話の腰を折るのが好きなようだ。
「ええ。たいへんすばらしい歌でした」
 心からの笑みがちらりと浮かんだ。「わたしの歌はお気に召しました?」彼女が顔をうつむけたので、長くて濃いまつげをしているのがわかった。
「とても気に入りました」なんとかそう返事をした。
 ローズはひざの上で両手を握り合わせた。「フリンって……アイルランドの名前ですよね。どちらのご出身ですか、ミスター・フリン?」
 フリンが会話の主導権を失うことは珍しく、おかげで当惑を感じていた。
「わたしの出身ですか?」
「ええ。アイルランドのどちら?」
 そんな質問をされたのは久しぶりだった。「ダウン州のバリーナヒンチの近くです」
 彼女の美しい瞳が輝いた。「わたしはキリレイの学校に通っていたんですよ」
「妹もです」フリンは考えもなく言っていた。
「ほんとう?」ローズはしばし考えこんだ。「ひょっとしてシボーン・フリンですか? シボーンはわたしの二年上だったんですけど」
 シボーンの名前を耳にして、フリンの思いはバリーナヒンチに戻った。故郷をあとにしたとき、シボーンは十一歳だった。いまは何歳だ? 二十一?
 ということは、ミス・オキーフはまだ十九歳ということになる。父親が彼女のまわりをうろちょろするのもあたりまえだ。
「たぶんそうでしょう」フリンは言った。
 ローズの目が興奮に躍った。「シボーンは元気ですか? 卒業生の近況はほとんど知らないんです」
 フリンは母の手紙に書かれていたシボーンの近況をあまり気に留めていなかったことに気づいた。「いまは結婚して、息子がふたりいます」
 ローズがため息をついた。「すてき!」
 フリンは話をもとに戻しにかかった。「侯爵のことですが――」
「ああ、そうでした。侯爵さまのことね」また気乗りしない口調になっていた。「あなたはわたしと故郷の話をするためにいらしたんじゃなかったわ」
 故郷。故郷。そのことばがフリンの頭のなかで何度もくり返された。
「侯爵はあなたの友人になりたがっています」
「友人?」彼女は目をそらした。「ほんの何曲か聞いただけで?」
 フリンはお世辞をならべたてようと口を開いた。
 だが、ミス・オキーフに先を越された。「あなたの友情もそんなに簡単に得られるのかしら、ミスター・フリン?」
「わたしの友情ですか?」またばかみたいにくり返していた。ミス・オキーフに話の筋を乱されっぱなしだ。侯爵の話をしなければならないのに、城跡を探検したり川で釣りをした昔の友人たちを思い出してしまった。フリンは無理やり彼女と視線を合わせた。「侯爵は慎重に友人を選ぶ方です。侯爵と友人になって文句を言う人はいません」
 ローズは少しも心を動かされなかった。「あなたはいつも、侯爵の友人に選ばれて幸運なのだと相手に伝える役をしているんですか?」
 フリンは眉をひそめた。タナーから関心を持たれたというのに、なぜ彼女は喜ばないのだろう? 父親とあのドーズという女性は侯爵とつながりができることを光栄に思っているようだったが。
「相手の女性がそのほうが喜ぶと思ったときだけです」フリンは上着の内ポケットに手を入れた。「侯爵はあなたに気持ちを伝えるため、ささやかな贈り物をしたいと考えています」
 フリンはビロードの箱を取り出した。ミス・オキーフはぎょっとした顔になり、父親たちが盗み聞きしているはずのドアに目をやった。それからフリンの手を押さえた。「贈り物はけっこうです」小声で言い、ふたたび視線をドアに向けた。「お願い」
 フリンは無言でうなずき、箱をポケットに戻した。
「贈り物だなんてすてきだわ」ローズはわざと声を大きくした。
「では、近々お渡ししましょう」フリンも調子を合わせた。
 彼はお父さんやレティに贈り物のことを知られたくないというわたしの気持ちを尊重してくれた。無理やり渡されていたら、レティはそれを自分のものにするまでしつこくつきまとっただろう。紳士たちからもらった贈り物は、すべてレティのものになるか、べつの装身具を買うために売られていた。
 侯爵の秘書がやってきたとレティが呼びに来たとき、侯爵に面と向かって断らなくてすむとほっとしたのだった。ヴォクソールで気になった男性が侯爵かもしれないと思っていたからだ。けれど、彼は侯爵の秘書で、アイルランド人で、そのうえ、いまだけにしろ味方になってくれた。
 近くで見ると、彼はとてもハンサムだった。髪と眉はローズの髪と同じくらい黒っぽい。がっしりした顎と罪深いほど官能的な唇がすてきだ。
 ローズは心のなかで自分を叱った。彼との出会いを勝手に恋愛小説に仕立ててはだめ。この人はわたしに交際を申しこみに来たのではなく、雇い主の侯爵の代理として来ただけなのよ。
「侯爵はいい人ですよ」彼が言った。
「どうしてきれいなことばで飾ろうとするんですか? 侯爵はわたしを愛人にしたいと思っていらっしゃるんでしょう? 侯爵の“友人”になるというのは、そういうことなのでしょう?」
 フリンは顎をこわばらせたが、視線は揺らがなかった。「侯爵のそういう友人になると、さまざまな利点があるんですよ。あなたは侯爵に後援してもらえます。保護してもらえるのです」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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