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クリスマスは特別に

クリスマスは特別に


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 ★ひそかに思い続けた男性からのプロポーズはロマンチックな夢とはかけ離れて……。★
 マティーは学術書の翻訳の仕事に打ち込み、家に閉じこもりがちだが、控えめで穏やかな人柄は人の心を和ませる。それを知っているのは幼なじみのジェームズだ。父親の跡を継いでマティーの父と建設会社を共同経営する彼は社交界の花フィオナとの婚約でゴシップ欄をにぎわし、わずか二カ月後の破局で、またもやさんざん書き立てられた。ジェームズに同情を覚えていたマティーは、クリスマス休暇に押しかけるという彼を快く受け入れる。ジェームズは静かな数日を過ごしたのち、出発の朝、切り出した。「ぼくと結婚してくれないか」これは悪い冗談? それとも、フィオナへのあてつけ? 少女のころからずっとジェームズを愛してきたとはいえ、こんなプロポーズをすなおに受け入れられるものですか!

抄録

「ああ、だいたいね」ジェームズは彼女の出口をふさぐようにドアを閉めてそれにもたれ、腕組みをしている。マティーはちらりとその姿を見て、すぐに目をそらした。なんてすてきなの。すり切れたジーンズも着古したレザージャケットも、長身でしなやかな体の優雅さを少しも損なっていない。
 こんなふうに考えるのはやめなくては。何年も感情を抑え込んでこられたんだから、今だってそうできるはずでしょう。そうよ、できるわよ!
 物入れのドアを閉めてまた彼に向き直り、借り物の色気のないスモックのしわをなでつけて伸ばした。
「帰る前にコーヒーでも?」よかった――胸の痛いつかえを取り除けた。でなければ、しゃべることもできなかったところだ。
「いや、いらない」彼はがっしりした体をドアから起こして近づいてきた。銀色の目が真剣だった。「きみに話があるんだ。話を聞いたら、かっとなって僕にかみつく前に、きみのいつもの冷静な頭を働かせてよく考えてくれないか」
 二人の間に少しスペースを残してジェームズは足をとめた。この考えは不意に浮かんだものだが、すばらしい考えだ。ゆうべ、エドワードとの話し合いのあと、この考えが浮かび、じっくり検討してみた結果だった。
 これは現実的だし、道理にかなっている。それにマティーのことはよく知っている。住み慣れたこの屋敷を離れなければならないという考えにいったん慣れれば、彼女にもそれがわかるだろう。
「マティー、僕と結婚してくれないか?」ジェームズは穏やかに切り出した。
 何か恐ろしいことが私に起こっている。マティーはうろたえた。たぶん頭に突然血が上り、そのせいでぼうっとなって、幻聴を聞いているんだわ。
 ジェームズがプロポーズを? この私に?
「マティー?」
 命にかかわる病気になったのではないかと気は動転していても、その声に皮肉な笑いが聞き取れないほど頭はぼんやりしていなかった。そうよ、これは冗談なのよ。面白くもない冗談。
 よくもこんな冗談が言えるわね。その罰に、プロポーズを真に受けたふりをして、彼に抱きつき、目に涙を浮かべて、真っ白なウエディングドレスや彼の子供を産むことをぺらぺらとしゃべってやろうかしら? どれほど片思いを続けてきた相手でも、そんな冗談を懲らしめるのにためらいはないわ!
 けれど分別が結局はそれを思いとどまらせた。プロポーズを真に受けたふりをすれば、傷つくのはむしろ私。彼に腕をまわし、顔にキスの雨を降らせれば、私が苦しむことになるだけ。
 マティーは流し台に行って、やかんに水を入れた。彼は飲みたくなくても私にはコーヒーが必要だ。体を動かすと、頭もはっきり回転しだした。「気をつけて、ジェームズ。そういう冗談は自分に跳ね返ってきかねないわよ。本気に取られるかもしれないでしょう」
「僕は本気だよ、マティー」すぐ後ろで声がした。
 マティーはその場に凍りついた。石になってしまったように体が動かない。本気のはずがないわ。どうしてそんなことが本気で言えるの?
 ジェームズの両手が肩にかかり、振り向かされた。その手の感触で我に返り、血が狂ったように血管を流れだす。マティーは肩を揺すって彼の手を外した。偶然にさえ彼に触れられたことは今まで一度もなかった。こんなちょっとした触れ合いをどんなに切望していても、いざそうされてみると、どうしたらいいかわからない。とりわけ、彼の意図が読み取れない今は。
「これはあなたがフィオナに振られたことと何か関係があるの?」頭がはっきりしてきてマティーは尋ねた。「ほかのだれかとすぐに婚約して、きみの代わりは掃いて捨てるほどいると彼女に見せつけてやろうというわけ?」
 胸が痛いほど締めつけられる。そうなのかしら? この人はそんなに残酷になれる人なの? 愛した女性に仕返しをしようと、ただそのためにだけ私を利用したりできるほど? 私に派手な婚約指輪を買ってそれを世間に見せびらかし、フィオナの婚約破棄公表の余波が静まったら、私とのことはすべてひそかにご破算にするなんてことが?
「どうなの?」マティーはたたみかけた。「さすがのあなたも今度ばかりは答えに窮した? それとも突然私にべたぼれしてしまったわけ? そんなの、とても信じがたいことだけど!」
 ジェームズはロレックスの文字盤に目を落とした。午後は自分のアパートで山のような書類を片づけて過ごすつもりだった。だが、この話し合いは思ったより長くかかりそうだ。
「きみは自分を卑下しすぎるよ。そういう癖は直さなくてはね。もちろん、僕はきみに“べたぼれ”ではないよ。その点ではきみも同じだろう? 実際、二人の間にそういう状況があるとは思えない」
 午後に予定していた仕事はふいだなと、ジェームズはあきらめた。プロポーズの理由を話すのにきっかり二分、マティーのすばらしい頭が、その理由と結婚の条件を現実的で魅力的だと認めるのに三、四分と踏んでいたのに、高をくくりすぎていたようだ。彼女はすんなり受け入れるどころか、抑えた怒りとしか言いようのないもので顔をゆがめている。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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