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カサブランカの夜に

カサブランカの夜に


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 オリヴィア・ゲイツ(Olivia Gates)
 カイロ在住のエジプト人。作家だけにとどまらず、眼科医、歌手、画家、アクセサリーデザイナーという実にさまざまなキャリアをもち、妻と母親業もこなしている。キャラクター設定やプロットのアドバイスをしてくれる娘と、ストーリーが気に入らなければキーボードの上を歩きまわる辛口批評家のアンゴラ猫の助けを借りながら、情熱的なロマンスを書き続けている。

解説

 世界各地に飛んで医療活動をおこなう“★空飛ぶ病院/ジエツト・ホスピタル/”。外科医のカサンドラは、あらゆる国で人々を救うその組織に参加した。この医療チームが医師として新たな人生を踏み出す第一歩になる。カサンドラは希望に燃えて、マドリッド空港で仲間を待っていた。でも、まさかチームのリーダーが、よく知るあの男とは思わなかった。ヴィダル……十三年間、私の家族を利用しつづけ、逃げ出した男。恵まれない家庭で育った彼を、父が引き取り、医師にまでしたのに、ある日、カサンドラの前から姿を消した、彼女のヒーロー……。いいえ、今は高額な美容整形で大儲けをしている卑劣な冷血漢! その彼がなぜここに? 不意にカサンドラの胸に、十六歳のときの、忘れられないパーティの夜の出来事がよみがえった。
 ■ディザイアでも人気のオリヴィア・ゲイツ。イマージュでは彼女の医療現場を描いたロマンスをお届けしています。

抄録

「話をするかい? それとも、びっくりするようなことがいいかな?」ヴィダルの声がうわずり、体がどうしようもないほど熱くなった。いったい僕はどうしたんだ? なにをしているんだ?
 コーヒーを飲み、一時間前に搭乗するはずだった飛行機に向かおうとして、急にロマンティックな気分に襲われ、今や女性に襲いかからんばかりになっている。相手は行きずりの女性なのに。
 ヴィダルは彼女の手を見た――しなやかで器用そうな指だ。結婚指輪はなし。よし。すばらしい。
 なぜすばらしいんだ? なぜ未婚か既婚かが重要なんだ? 一時間後には空港から飛びたち、二度と会うこともないのに。とにかく、彼女は外科医だと言った。だから指輪をしていないのだ。宝石類はいっさい身につけていない。つければいいのに――彼女の瞳のようなサファイアを。愛し合うにはほかにはなにもいらない。彼女をおおうのは僕の……。
 どうかしている。僕は女性に言い寄ったことさえないのに。一度も、心の中でさえ。実のところ、僕は女性を避ける天才だった。なのに、ホルモン過多の若者のように胸をどきどきさせて、ここでなにをしている? この……幻の美女に。
 幻の美女? 美女なものか。ただ、僕が夢に見る女性によく似ている。
「じゃあ、話をして。それとも、そこにつったって息を荒くしているだけ?」幻の美女は情熱的なヴィダルの誘いを笑い飛ばさんばかりだった。彼は気にさわってもいいはずなのに、そうはならなかった。
 彼女の警戒心のないまなざしを見ていると、温かくやさしいものが胸に広がった。そんなに無邪気でいたずらな目をしてくれるなら、彼女にはからかわせておこう。頭を優雅に傾け、つやのある赤い髪を振り乱し、その豊満な……。
 もういい。そこまでだ。正気に戻らなければ。
 僕は極度の鬱状態だった。だがどうしようもないほどの欲望を抱いたり、ばかなまねがしたくなるほどの鬱状態ではない。
 ああ、なんだろうと、彼女にはその価値がある。
「ちょっと普通じゃないな」不思議なことに、ヴィダルは率直に話をしたい気分になっていた。「僕はもうへとへとなんだ。心肺蘇生術が疲労困憊することを忘れていたよ。君が人工呼吸を引き継いでくれなかったら、僕は卒倒していただろう。だから荒い息をついていると言えなくもないが、そうじゃない。原因は君だ。君のせいで息を切らしているんだ」彼女の上品な鼻筋に親指をすべらせ、淡いそばかすをなぞる。されるがままになっていた彼女の瞳が、やがて青緑色に変わった。僕と同じく……熱くなっているのだろうか?
「だから私をじらしたままにするの? 拷問だわ」
 からかわれて、忘れかけていたヴィダルのユーモアのセンスが目を覚ました。
「なにを拷問というのか知りたいかい?」彼女の両脇に腕を差し入れ、迫るように顔を近づけると、さわやかな香りがした。彼女が苦しげなふりをしてあえぐ。唇をむさぼりたいところだが、ヴィダルは欲望に燃える目で彼女の唇を見つめ、それから目を見た。「あと一分間、キスを我慢しよう」
 かすかに開いた女性の唇からため息がもれ、熱い息が彼の頬をかすめた。
 彼女は身を引くどころか、魅惑的な瞳に意志をこめ、情熱がくすぶる知的なまなざしで射るように見つめ返した。だが、このきらめきも挑戦的ではないか? 僕がなにもしないと確信しているのか?
 これは彼女の人生ではなく、僕の人生への挑戦だ。これほど自制心を失うとは。問題は惹かれる気持ちを伝え、この出会いをどう次につなげるかだ。どうなるにしても、このまま別れたくない。なんとか再会する手段を作りたい。
 ヴィダルはソファに腰を下ろし、彼女に触れたくて両手を伸ばした。彼女は一瞬見開いた目をすぐに閉じて、驚きを隠した。頭を彼の大きなてのひらにあずけ、もたれるように傾ける。しだいに熱くなっていく女性のようすが、彼をいっそうあおった。
 久しぶりだ。忘れていた。いや、知らずにいた。このはっと目覚める感じ、この苦しいほどの期待感。僕はまだ生きている。
 彼は一方の手を彼女のウエストにまわした。きゅっと引きしまっている。胸と胸が触れ合うまで抱き寄せると、彼女の震えが手に伝わった。
 女性の目に不安や拒絶の色はなかった。神経質にはなっているが、積極的に求めていた。彼女を、彼女の唇を求める彼と同じように。
 最後の最後で、ヴィダルは自分の状態を思い出し、彼女の唇ではなく、なめらかな頬にキスした。
「今日は僕の耐性菌をじゅうぶんに浴びたからね、いとしい人《ケリーダ》……」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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