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侯爵のお気に入り

侯爵のお気に入り


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・ヘリス(Anne Herries)
 イギリスはケンブリッジに住んでいるが、冬のあいだは夫とともにスペインのジブラルタル海峡に面したマラガのリゾート地で過ごすことが多い。青い海の白い波頭を眺めながら、涙あり笑いありの、ロマンチックな恋物語の構想を練るという。イギリスではすでに三十作以上の著作があり、うち十数冊はハーレクインのミルズ&ブーン社から刊行されている。

解説

 霧の朝、ベアトリスは馬に乗った男性に道をたずねられた。それは、妹の婚約者ハリー・レイヴンスデン卿だった。妹のオリヴィアは伯父夫婦の養女になっていたが、伯父の決めた結婚を拒んだためにロンドンから帰されていた。ハリーはオリヴィアを説得しようと会いに来たのだ。彼のよからぬ噂を耳にしたベアトリスは、遠回りする道を教え、さらには、湿気の多い客用寝室に泊まらせた。そのせいでハリーは悪い風邪をひき、生死の境をさまよう。責任を感じたベアトリスは手厚く看病するが、面倒をみるうちに思いもよらぬ感情が湧きあがってきた。
 ■19世紀初頭、イギリスののどかなスティープウッドを舞台に繰り広げられる紳士淑女の恋の鞘あて、奇っ怪な領主に怯える村人と次々巻き起こる謎の事件。ドラマチックな世界をご堪能ください。

抄録

 台所のドアが開いた。ベアトリスは振り向き、はっとした。シルクのローブを着たレイヴンスデン卿が裸足で立っていた。高級そうなローブの下にはおそらく何もつけていないだろう。高熱に苦しんでいた最中に体をふいてあげたときと同じように。
 ベアトリスは頬がほてるのを感じた。そんなことを考えるなんて、恥を知りなさい!
「きみも眠れなかったのか」ハリーは言った。「入ってもいいかな?」
「ええ、どうぞ」テーブルにはブランデーとグラスをのせたお盆のほかに、夕食の残りのナッツや砂糖菓子が置いてある。「眠れないときにはブランデーが効くんです。それに、これは極上品だわ」
「きみに認めてもらえてうれしいよ」ハリーは言った。なんてきれいなのだ! 彼女はローブ姿の自分がどれほど魅力的か、わかっているのだろうか? ローブの色はとてもよく似合っている。いつもこういう宝石のようにきれいな色の服を着るべきだ。「飲んでもいいかな?」彼はグラスに少しだけブランデーを注いで、両手で温めながらベアトリスを見た。「オリヴィアは本気でレディ・サイウェルの墓を探すつもりだろうか?」
「ええ、そうだと思います」ベアトリスは眉根を寄せて言った。レイヴンスデン卿とのあいだにある感情が流れている。少し前から気づいていたが、必死で無視しようとした。こんな薄物しか着ていない姿では、ふたりでいるよりも人前に身をさらすほうがまだましだ!「あの子の推測が当たっているかどうかはわからないけれど……探してみるのも悪くないと思うわ」
「それで、万一、本当に見つかったら?」
「そのときは憲兵を呼ばなければならないでしょうね。重大な犯罪だから、犯人は罰を受けるべきです。違いますか?」
「この明かりの下ではきみの目はエメラルドのように見える。そういう色の瞳をした女性に会ったのははじめてだよ、ベアトリス」
 ほら、また言った! わたしのファーストネームを。
「ご冗談でしょう」ベアトリスは頬がかっと熱くなった。「わたしにそんなことを言うなんて、あなたらしくないわ……」
「こうしてふたりで台所に座っているのも、ぼくたちらしくない」ハリーが微笑んだ。ベアトリスは息が止まりそうになった。「だが、ぼくに出ていけなんて言わないだろうね?」ベアトリスは首を振った。彼女のほうこそすぐにも出ていくべきだったが、そうしたくなかった。「きみとは月並みな会話をする以上に親しくなったと思うのだが。こんなに美しいのに、なぜ野暮ったいふりをするんだ?」
「わたしはもう二十三歳です、侯爵。持参金もないし、わたしを母親のいない子どもたちの新しいお母さんにして便利に使おうとする男やもめをみんな振り払ってきました。きれいなドレスを着たところで、なんの役に立つかしら?」
「緑色がいちばんすてきに見えるのに、灰色や茶色の服を着ているのは罪だ。ミッドナイトブルーもいいな……」ハリーはちょっと考えた。「深みのある色ならどれも似合いそうだ」
「お願いですから少しまじめになってください、侯爵」
「ぼくはひどくまじめだよ」ハリーは顔をしかめた。「その侯爵という呼び方はなんとかならないか? レイヴンスデン……あるいはハリーでいい。ぼくが愛し、信頼している人間はみんなそう呼んでいる」
「メリーとドーリッシュ卿ですか?」ベアトリスは見上げてきいた。燃えるような視線にぶつかってはっとした。
「ほかにも何人かいる。いずれきみもそのひとりになるだろう、ベアトリス」
「あなたがオリヴィアと結婚したときに?」ベアトリスは挑戦的な目で彼を見た。「もう一度プロポーズなさるんでしょう?」
「しないといけないだろうな」ハリーは答え、小声で悪態をついた。「ぼくたちは実に厄介な迷路にはまりこんでいるんじゃないか? たぶん間違いではないと思うが、きみだって感じているはずだ……」
 こんな会話を続けていてはだめよ! やめなければいけない。ベアトリスにはハリーの気持ちがわからなかった。何もかもわたしの意思に任せるつもりなのか、それとも……でも、それはありえない。ハリーはオリヴィアと婚約している。いずれはオリヴィアも彼の花嫁になることを承諾するはずだ。
「もう行かなくては……」
 ベアトリスが立ち上がると、ハリーも立った。手を伸ばして彼女の手首をつかんだ。ベアトリスは足を止めて振り返った。
「すぐにここを出ないと……」
 それ以上は言えなかった。ハリーの体温が伝わってくるぐらいしっかりと抱きしめられたからだ。彼は一瞬ベアトリスを見下ろしたあと、顔を近づけて唇を彼女の唇に重ねた。はじめはためらいがちな軽いキスだったが、すぐに彼女が反応するのがわかって大胆になり、情熱的で激しいキスに変わった。
 やがて、ベアトリスが喜びで卒倒するかもしれないと思ったとき、ハリーは唇を離し、腕の力を抜いて彼女を自由にした。その顔が苦悩と満たされない思いでゆがんでいるのを見て、ベアトリスは衝撃を受けた。それほど強くわたしを求めているの? 今までこんな表情でわたしを見つめた男性はいない。
「許してくれ」ハリーは欲望にあえぎながら言った。「こんなまねをする権利はぼくにはなかった。まったくなかった」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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